商品を生産するために欠かせない、部材や原材料。国内外問わずさまざまな取引先と交渉、契約し、これらの手配を行うのが「調達」という仕事です。購買力は経営に大きなインパクトを与えるため、グローバルかつダイナミックな仕事が叶うと話すのは、家電、PCの半導体、二次電池など異なる事業で調達の仕事に携わる同期入社の3名。入社4年目を迎えるみなさんに、調達の仕事のやりがいについて聞きました。
2022年11月
プロフィール
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黒田 大介
パナソニック株式会社
慶應義塾大学大学院 理工学研究科 開放環境科学専攻修了2019年入社。学生時代は世の中の問題をある制約条件下での最大化・最小化問題に落とし込み、プログラミングを用いて最適解を導き出す管理工学(経営工学)の学問を専攻、生産スケジューリング、生産能力設計などを行う。入社後は調達職として冷蔵庫の購買に携わる部署に所属。
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三輪 晃生
パナソニック コネクト株式会社
大阪府立大学大学院(現・大阪公立大学大学院) 工学部機械工学科修了2019年入社。大学・大学院では機械工学科で耐熱・耐圧を兼ね備えた新規材料の研究開発に取り組み、次世代のロケットの外装部分に使用されることを目指し研究を行った。入社後は、モバイルソリューションズ調達部に所属し、PC・決済端末に使用する半導体の購買業務を担当。
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岸 紗理奈
パナソニック エナジー株式会社
早稲田大学 国際教養学部 国際教養学科卒業2019年入社。大学入学前より、アメリカにおいて政治が人種・民族に与える影響や歴史、文化に興味があったため、多様な学生が集まるワシントン大学へ1年間の留学を行う。入社後は旧グローバル調達社(現、パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社 グローバル調達本部) に配属。2022年よりパナソニック エナジー株式会社へ異動し、二次電池原材料の中長期戦略立案を担当。
目次
学生時代に知った調達の仕事。魅力は「多様な職種の人と関われること」
同期に会うと、就職活動していた大学の頃を思い出すよ。学生時代、理系出身で研究室にこもっていることが多くて窮屈さを感じていたときに、「調達」は理系の知識を活かしながらも多様な職種の人たちと関わる業務だと聞いて興味を持ったんだよね。ふたりが興味を持ったきっかけはなんだった?
僕も理系出身だから、その気持ちすごくわかるよ。パナソニックの技術系インターンシップにも参加したんだけど、パソコンに向かっているよりも営業や調達みたいに社内外の人たちとコミュニケーションをとりながら仕事するほうが自分に合っているなと思って。あと、調達部門で働く先輩と話したとき、原材料のチームで扱っている金額が数億円っていうのを聞いて、規模が大きくてかっこいいなと思って。
私は小さい頃から、グローバルに働きたいってずっと思っていたんだよね。だから、「調達の仕事は海外との取引も多い」と聞いて興味を持ったかな。もちろん、担当業務によっては国内をメインに取引する場合もあるけど。
僕がまさにそうだね。冷蔵庫の部品の購買業務を担当してるんだけど、日本国内が中心で、海外だとベトナムや中国と取引することが一部あるくらい。ふたりは今どんな国と仕事をしてるの?
モバイルPCや堅牢PC、決裁端末に使用する部材の購買業務をしていて、主に担当しているのは半導体部品。黒田くんとは逆で国内での取引は少なく、ほとんどアジアや欧米、東南アジアをメインに取引しているよ。岸さんは?
今はアメリカの電気自動車メーカー向けの二次電池原材料を担当してるよ。取り扱うのはコバルトやマンガンなんだけど、取引先はオーストラリアや欧州、アフリカと、海外がほとんど。
かっこいいな。海外と取引をすると時差があると思うけど、例えば夜遅くに打ち合わせが入るとか、就業時間外の業務が多かったりするの?
それはあまりないかな。すごく大きなトラブルが発生したときくらい。
そうだね、私も同じで、早くても朝8時くらいで、遅くとも夕方の6時スタートくらいかな。私たちの時差を配慮したうえで打ち合わせ時間を調整していただけることが多くて、ありがたいよね。
それぞれの事業ならではの課題と「モノづくり」の面白さ
私が扱っているコバルトは、市場によって価格が変動する相場商品。今後はさらにEVやEV電池業界が凄まじい勢いで伸びるだろうから、需要の伸びに合わせた資源の確保が重要課題になっていて。きっとふたりも、それぞれ違った課題や大変さがあるよね。
僕は半導体の担当だから、あらゆるメーカーと半導体の取り合いになることもあって、自社が必要としている分を確保できるかが課題。特にパソコンを担当していると、世界中の企業と半導体を奪い合うことになるから、半導体ならではの大変さがあるかな。
僕は国内中心だから輸送トラブルは少ないけど、樹脂部品やプレス部品は生産中に「金型が壊れた」とか突発の業務が発生することが多いんだよね。こまめにトラブル対応する大変さがあるかな。
ただ、国内中心だと担当先の工場に行けるから、ある意味「モノづくり」を身近に感じられる面はあって。ものができあがっていく工程を目の前で見たり、触ったりできるというのは、国内担当ならではのやりがいかもしれない。
私が扱っているのは原材料だから、採掘現場を訪れないと見られないんだよね。モノづくりの現場をそんなふうに体感できるのは、黒田くんの所属する事業の魅力だね。
距離感は違うけど、モノづくりの近くで仕事ができるのは調達の醍醐味って思っていて。私は文系出身だけど、調達は文系職種の中では一番モノづくりに近いと感じてるんだよね。あと、自分が調達した原材料が製品に使われて、品質に影響するっていうのは、他の職種では経験できないこと。例えば、商社では調達に近いような仕事があっても、自社の生産、品質に影響するという点ではやっぱり意識する点が違うんじゃないかと思う。
そうかもしれないね。ちなみに、新型コロナウイルスの流行でコミュニケーションもとりにくい状況だったと思うけど、海外の取引先との交渉で心がけていることってある?
普段会えないからこそ、情報交換レベルでも、定期的に電話なりメールなりするようにしているかな。自分のことを覚えてもらう意味でも、定期連絡っていうのは意識しているよ。
誠実な対応も重要だよね。調達って購入先からの納期の遅れや、品質問題、生産計画の変動など、頻繁にいろんなトラブルが起きるから、いろんな人に助けられながら仕事をしているっていうのはすごく実感する。取引先のサプライヤーや、その運送会社の方からの助けも多くて、助けてもらうぶん、相手が助けを必要としている時には自分の出来る限りのことをするようにしてるよ。
信頼関係や過去の取引があるから対応をしてくださるケースも多くて、「パナソニックだから」とか、「岸さんだからこの対応をします」って取引先の方から言っていただけることがあって、それがすごく嬉しいんだよね。
「経営の数字」に大きなインパクトを与える「調達」の仕事
それぞれ違うものを扱ってはいるけれど、調達の業務って「会社の財布を握っている」感じがしない? 部材を買うということは、経営数字に直接的にインパクトを与えるものだよね。購入する部品の単価決定はもちろん、発注数量や発注時期の管理とか、あらゆる業務が経営数字に影響を及ぼすなって。
それに、ただ安いものがいいわけではなくて、求める品質や供給能力の制約もあるから、QCD(Quality:品質、Cost:コスト、Delivery:納期)のバランスを考えながら会社に貢献する役割を担ってると思うんだよね。
会社経営に特に直結する職能の1つだよね。僕は調達を一言で表すなら、「パナソニックグループの顔」だなと思う。お客さまに販売する営業ももちろん「パナソニックグループの顔」だけど、買い付けてくる調達もそうだよね。
たしかに。取引先にとっては私が会社の窓口だから、日頃の対応の重要さを日々感じるよね。その一方で、事業の生産を裏から支える、「縁の下の力持ち」のような役割でもあると思ってて。調達の一番の任務って、生産計画に従って必要なモノを必要なとき必要な量を購入して届け、事業の安定生産を支えること。入社してすぐのころ上司に教わったのが、「どんなことが起きようと、調達のせいで生産が止まるようなことは絶対にあってはならない」ということだったんだよね。
今は世界情勢が大きく動いていて、特に資源分野に関しては各国の国策や経済状況に左右されるシーンも多いけれど、安定調達という当たり前のことを当たり前に行うのが、調達の務めだとあらためて実感してるよ。
新型コロナウイルスが世界中で流行し始めてからは特にそうだよね。僕の担当する事業では、ロックダウンで担当部品の工場が稼働停止になってしまって、物量確保が困難になったことがあるんだ。
そのときはどうしたの?
いろんな部署を巻き込んで課題解消に取り組んだんだけど、最終的には事業会社の代表も巻き込んで納期交渉して、無事に物量確保できたんだ。会社にとって大切な業務に携わっていると再認識したし、業務へのモチベーションも上がったかな。ふたりが印象に残っている仕事は?
今年、初めて海外出張を経験したんだけど、電池の原材料メーカーから自動車メーカーまで参加する北米のカンファレンスに出させてもらって。新型コロナウイルスの影響で直接お会いできていなかった取引先との情報交換とか、今後立ち上げられるかもしれない資源の新規プロジェクトとの接点づくりとか、今後の資源戦略に関係する打ち合わせにたくさん参加してきたよ。
限りある電池原材料をどう確保するか戦略を立てている最中だから、情報をいち早く掴んで、スピード感を持って実行に移すことの重要性を感じたかな。カンファレンスに参加したことで、EVやEV電池をより普及させることの社会的意義を再確認したよ。
めちゃくちゃかっこいいな〜。僕が印象に残っている仕事は、冷蔵庫以外の製品に携わったことかな。「重量検知BOX」「うま冷えプレート」っていう製品で、冷蔵庫の事業部としては、冷蔵庫以外の製品を初めてリリースすることになったんだよね。初めての試みだから、購入先の生産能力の見極めであったり、工程品質の作りであったり、一からの経験で。先輩社員にもフォローしてもらいながら、何度も購入先の製造工程に足を運び、工程の確認や部材の手配など打ち合わせを重ねたよ。
社内の関係部署との会議では、僕の情報がキーとなることがあったから、緊張感が高まったと同時に、さらに責任感が増したというか。無事製品がリリースされた際の達成感と安心感は、ものすごく良い経験になったよ。
好奇心旺盛な人にこそ向いている調達の仕事
調達職は、他の職種に比べて、社内外問わずさまざまな方と関われる楽しさがあるよね。市況状況も刻一刻と変わるから、常にアンテナを張っている、好奇心旺盛な人が向いているんじゃないかな。
それに付け加えると、リスク察知能力も重要かなと思っていて。「災害が起きて通常通りの輸送ができない」とか、「世界情勢が変わって生産が止まった」といったことが起こりうる現場だから、「こういうことが起きたら調達にはこういう影響が出るだろうな」っていうのを繋げて発想できるような人が向いていると思う。
僕は大胆さが大事なんじゃないかなと思う。細かい仕事ももちろんあるけど、要望を伝えないといけない場面もあるから、物怖じせずにしっかり自分の言いたいことを言える能力が重宝されるかな。
過去にそういう場面があったとき、品質部門の責任者から「三輪さんがそう言うなら大丈夫でしょう」って言われたことがあって、うれしかったな。日々の一つ一つの業務が社会へ役立つことに繋がっていることが実感できた瞬間だった。
原材料の相場が数%変動するだけでも生産コストに影響してしまうくらい、グローバルかつダイナミックな仕事だけれど、現場でやっていることって結構泥臭い。誠実に一つ一つ積み重ねていくことが大事なんだろうね。
*所属・内容等は取材当時のものです。
調達の先輩社員との懇談を、BIZREACH CAMPASにて受け付けています。
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久しぶり!みんな調達という同じ職種だけど、事業が違うから、普段はなかなか会う機会がないよね。