未来をつくる技術の現場から 決して止まらない1台、スムーズで確実なワークフローこそがプロの潜在ニーズ。〜LUMIX DC-S1H〜

社会課題を解決し、世の中に新しい価値を生み出していくために。パナソニックは技術革新だけでなく、これまでにないソリューションやサービスの開発に挑み続けています。今回は、“撮りたいときにすぐ”を実現したミラーレスカメラ「LUMIX DC-S1H」の開発チームにインタビューしました。

LUMIX DC-S1H

手持ち撮影やドローンを使った空撮など、映像制作を変革したカメラの小型化。しかし、あまたあるコンパクトな機種はその機動力と引き換えに、搭載イメージセンサーのスペック、連続撮影の限界を余儀なくされ、何がしかの弱みを抱えます。映像美に妥協はできない、撮りたいときに撮れなければ、役に立たない――。2019年9月、それまで業務用カムコーダーを使い続けてきたシネマ制作、ハイエンドの撮影現場に1台のミラーレスカメラが持ち込まれました。カメラマンの手に握られるのは「止まらないカメラ」、LUMIX DC-S1H(以下S1H)です。

目次

  1. 撮りたいときにすぐ撮れる
  2. 究極のサブからメインカメラへ
  3. 新たな価値が現場を動かす
    LUMIXの強みをシネマ業界へ
  4. 言い訳しない、真の動画記録時間無制限
    仕様ひとつがユーザーの制作を支える
  5. VARICAMとともにハリウッドへ
    映画の都で歓迎されたミラーレス

撮りたいときにすぐ撮れる

シネマ制作の現場が変わる、ニュースタンダード。

撮影の様子

スタッフ総出でロケ撮影の準備をし、キャストと根気よく天候を待ってようやく訪れる撮りたい瞬間。シネマカメラに欠かせない最大の要件とは、止まらないこと、狙ったその瞬間に逃さず撮れるかどうかです。これがシンプルにして大きな課題。シネマクオリティを満たす高画質イメージセンサーは発熱を伴うため、一般的なハイエンドカメラは、相応の大きなボディに放熱構造を収めます。あるいは、小型であれば撮影時間に制限が加わるなど、信頼性の担保に悩まされます。トレードオフの関係、それゆえに存在しなかった、真のシネマ対応フルサイズミラーレス機。S1Hはフルサイズのイメージセンサーと動画無制限記録、防塵・防滴性能を高次元で融合させた"革新的なミラーレス"として、多くのクリエイターに衝撃を与えました。

映像制作は準備に始まり、編集・納品に至る一連のワークフローで、その中心に位置するのがカメラです。小型で手ブレ補正機能も備えるS1Hは、準備のフローを劇的に変化させます。例えば、立ち尽くす人物の周囲360度をカメラ側が動いて撮影するシーンは、従来ならレール敷設やリグの準備、アシスタントのサポートも必要ですが、S1Hなら手持ちでカメラマンひとりでの撮影が可能です。映像スペックは業務用カムコーダーと肩を並べる「14+ストップV-Log/V-Gamut」。6Kからダウンコンバートで4K映像が切り出せるので、クリエイティブな編集に効果を発揮します。総合的な実力から、世界最大手の映像配信サービスNetflix社から、ミラーレス機として初の公式カメラ認定を取得。同社が公表する認定一覧で唯一の一眼タイプです。

究極のサブからメインカメラへ

手ブレ補正と防塵・防滴性能、LUMIXらしさはそのまま!

横から見たカメラ

なぜ、S1Hに新たな価値が加わったのか?最も特徴的な技術が初めてLUMIXに搭載された空冷ファンです。熱ならばファンで冷ませばいいと、そこまでは直感的に発想できます。ところが、ファンを内蔵すれば、微振動や動作音に弱い手ブレ補正のデバイスに影響が出ます。また、吸気・排気の穴を開ければ、防塵・防滴性の担保が極めて難しくなります。ファンが付いた堅牢ボディと言えば......、技術陣が目を付けたのが、ノートパソコン「レッツノート」でした。熱は全て放熱材の板に集め、同時にその板を精密基板やイメージセンサーとの仕切りにする。この構造をヒントに、パーテーションと防水ファンを置いた常識破りとも言えるカメラが生まれました。ボディ側面の吸気・排気口、この奥側に防水ファンが収まっています。

発売後、ユーザーから高く評価されたのが、角度変更が簡単なチルト式と、270度のフリーアングルを両立した液晶モニターの新構造です。2段式のフレームにモニターが据えられ、真横に引き出して角度調節をしてもケーブルに干渉しない絶妙な配置。HDMIのデータ転送、USBで充電を続けられます。悪天候下の撮影や低予算、短期間の編集・納品など、制作条件が厳しければ厳しいほど、存在感を増すS1H。その高評価は動画をライブ配信するクリエイターへと拡散。シネマ業界でも、今や機動力のある究極のBカメラ(サブ機)にとどまらず、Aカメラ(メイン機)へと用途を広げています。S1Hだけで映画やドラマを撮りたいと大型案件のオファーも相次ぎ、数々の作品のエンドロールでLUMIXの文字が流れています。

カメラの内部構造

新たな価値が現場を動かす
LUMIXの強みをシネマ業界へ

香山 正憲 [商品企画]

カメラを手に取る香山 正憲さん

S1Hの構想段階に実施したヒアリングで、印象に残った言葉がありました。「ロケ撮影は、クライアントも演者も決められた時間にセットアップする。そこで、カメラが回せないなんてありえない」。あるハリウッドの監督が語った、ひと時も無駄にできない現場。約1カ月に及ぶ北米・欧州のヒアリングで、私たちは「止まらないカメラ」の価値を確信しました。無制限とは言え彼らはずっと回し続けるのではない、ユーザーが求めるのは「いつでも撮れるカメラ」だと。私が技術陣に訴え、要求し続けたのは諦めないこと。難題に立ち向かい、技術陣がニーズを高次元で融合してくれました。S1Hの実力は堅調な販売台数の伸びに表れています。新規性が高かったゆえに様子見があり、アーリーアダプターの好評を受けて継続的に買いが入る、その推移に商品価値が認められた喜びを感じています。さらに、コロナ禍で撮影の在り方も変わりました。スタッフ1人の高熱で、撮影はキャンセルになる。だから少人数でクオリティの高い撮影ができるS1Hが役に立つんだと、改めて評価をいただいています。

言い訳しない、真の動画記録時間無制限
仕様ひとつがユーザーの制作を支える

堀江 悟史 [技術開発]

カメラを操作する堀江 悟史さん

S1Hの無制限記録は、その条件に「環境温度」だけを表記しています。仕様書に米印(※)をひとつ打てば厳しい条件を対象外にできますが、それはユーザーの使い勝手を損なうことになります。LUMIXの強みである防塵・防滴性能などの高い信頼性と、妥協のない動画記録時間無制限を両立できたのは、技術陣が制作現場に伺いユースケースを間近で見てきたから。要望を聞き、自ら考えたからこそ、めざすべき姿をイメージすることができました。ファンの搭載は反対意見も多かったですし、技術的な問題だけでなく、開発リーダーの私には関係者の心理的な壁を動かす役割もありました。RECボタンの配置やバリアングルの操作感など、皆で突き詰め、追い込んだ機能がユーザーレビューで評価され、S1Hが真夏の酷暑もトラブルなく乗り越えてくれて、少しほっとしています。

VARICAMとともにハリウッドへ
映画の都で歓迎されたミラーレス

山田 泰英 [マーケティング]

笑顔で説明する山田 泰英さん

映像制作の最大市場、発信源はアメリカです。そこで、S1Hが高評価を獲得し多くの出荷数をマークしている理由は、まず、GHシリーズの経験から米国の販社が映像制作市場で、マーケティングの実行力を備えたから。もうひとつは、S1Hの開発発表を行ったハリウッドの一大イベント「Cine Gear2019」です。パナソニックの社内カンパニーの1つであるコネクティッドソリューションズ社のメディアエンターテインメント事業部との連携で、業務用のVARICAMを含む「パナソニックのシネマカメラ」をラインアップで訴求。新機種S1Hの発表会は、会場の500席がほぼ埋まり、多くの監督、カメラマンから注目されました。発売後もS1Hはソフトウェアのアップデートで商品価値を高め、今やグローバルに映像制作ミラーレスでフラッグシップと言える位置づけに。私たちも立ち止まらず、これからも輪を描くように「いいループ」をつなげて顧客ロイヤリティを高めていきます。

製品名 シネマフルサイズミラーレスカメラLUMIX DC-S1H
担当 パナソニック株式会社 アプライアンス社

*所属・内容等は取材当時のものです。

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