インフラ分野の
システム構築を通して、
より良い社会づくりに貢献したい。
SE(システムエンジニア) 呉 雅珊
子どもの頃から鳥が好きだった。理由はたくさんの鳥が生息する地に住んでいたからとか、単純にかわいいからとか、いろいろあったけれど、ひとつに自分もあんな風に外の世界に行ってみたいという想いを、どこかで重ねていたからのように思う。
中国の福建省で生まれ育った呉雅珊は、自分はずっとここで生きていくのだと思っていた。地元の大学を卒業したら、そのままここで就職するのだと。しかし、ある時思った。それでいいんだろうか。このままでは自分は成長できないんじゃないか。そこで大学3年生の時に思い切って学習交流の活動に参加し、半年ほど台湾に行ってみた。そこでは見るものすべてが新しかった。おもしろいことばかりだった。もっと外の世界を見てみたい。そう思った時、心の奥で何かが羽ばたき始めたのを感じた。
日本の大学院へ留学してみよう。そう思ったのは、子どもの頃にアニメで見て、ずっと行ってみたかった国だったから。でも、そんなことを両親に伝えたら、絶対に反対される気がした。だから誰にも言わずに、ひとりで留学の準備を進めた。合格通知をもらい、留学のためのすべての準備が整ったあとで「合格したので、日本に留学します。もし行かなかったら教授に怒られて、大変なことになるから!」と両親に告げた。その剣幕に、いつもは厳しい父も母も頷くしかなかった。
知っている人が誰もいない国。日本語もあまり話せないなかでのくらしは不安もあったが、それ以上にたのしくてしょうがなかった。そして2年後、もっともっと新しいことに挑戦してみたいと思い、就職活動も日本で行うことにした。「自分は、本当はどんな仕事がやりたいんだろう」。考え抜いた末に、たどり着いた答えはITだった。新しい社会の基盤づくりに貢献できること、世の中の進化を肌で感じられることがおもしろそうに思えた。そして、そんな時に見つけたのがパナソニックのパンフレットだった。パナソニックと言えば、中国でもよく知られる企業のひとつ。興味を持ってページをめくっているうちにハッとした。「この会社、ITもやってる!」。
調べれば調べるほど、自分が探していた会社に思えた。そして「防犯カメラ」を取り扱っていることを発見し、心が決まった。「日本にはじめて来た時に、駅や交差点にカメラがあるのを見て驚いたんです。こうやって安全を守ってくれてるんだって。それにすごく安心できたから、私もこんな風に常に身のまわりにあって、くらしの役に立てるような仕事をしてみたいって思ってたんです。配属の希望を聞かれた時も、防犯カメラの仕事をやりたいですって言いました」。
入社して研修期間が終わると、防犯カメラなど、インフラ分野のセンシングソリューションを行っている部署に配属された。そして「警備システム」の担当となった。これは映像監視システムに、画像分析技術やAI技術を組み合わせて、さまざまな警備支援を実現するシステムで、呉はそのシステムテストを任された。各機能が正しく実現できるかどうかを確認する日々。そこである不具合があることを発見した。解決策を見つけるためには、社内のさまざまな部門の人たちと話し合わなければならない。正直、日本語の聞き取りはできても、話す方はまだ自信がなかった時期。それでも、課題解決に向け、積極的に話し続けた。専門用語が分からず、先輩を質問責めにしたこともあった。勉強が足りないと思ったから、画像処理に関する研修を受けたこともあった。その試行錯誤の時間は、呉を少しずつ、でも確実に成長させていった。
現在は「交通管制ITVシステム」に携わっている。これは各交差点に付いているカメラを制御することで、きめ細かい見守りと交通量や事故などの分析が可能になる。「私の仕事は、お客さまのご要望を伺うことからはじまります。それをもとにまとめ役として営業やマーケティングなどの部門の方と連携をとりながら、機器の選定やシステムの設計などを行い、お客さまに提案します。発注いただいたあとは、スケジュールを立て、機器の手配、設計書など書類の作成、システムテストと審査などを行い、機器の出荷後はシステムの現地作業を行っています」。
中国にいた頃には、想像もしなかった毎日を過ごしていると実感している。どんな日も挑み続けてきた呉は、この先の未来についてこんなことを考えている。「私は仕事を通じて、より安全で便利な社会づくりのお手伝いをし、みんなが幸せになるためのチカラになりたいんです。それには世の中の変化に対応し、常に新しい技術を吸収することが大事だと思っています。だからまだまだ勉強、勉強ですね」。さらに上のステージへ。呉は力強く、飛び立とうとしている。