積み重ねた自分のユニークさで、
誰かの役に立ちたい。
経理 福岡 祐輝
何か自分の武器と言えるものがほしい。それが、会計を学んだきっかけだった。大学は総合政策学科で、理系・文系の垣根を超えて自由に学べる環境。興味がある授業を幅広く受けてきたが、就職が近づくにつれ、どこか焦りのようなものを感じた。「人と話すことが好きだったので、最初は営業の仕事をしたいと思っていました。でも友人の多くが営業を志望するなかで、自分なりの強みがないと社会で活躍できないと思ったんです」。そこで、さまざまな資格があり、強みとしてイメージしやすかった会計を勉強。学んだ知識を活かせる経理に絞って就職活動をした。パナソニックを選んだ理由は、経理が事務的な仕事ではなく主体的に活躍している印象があったこと。また、グローバルなフィールドで勝負している姿勢にも魅力を感じた。
希望が叶い経理として内定が出た後、入社の前にバックパッカーの旅に出た。きっかけは、OB訪問をするなかで、魅力的に見えた先輩たちがみんなバックパッカーをしていたこと。「自分も学生のうちに、海外で視野を広げたいと思ったんです。でも本音では、行きたくない気持ちでいっぱいでした。慣れた日本で、友達と遊んでいたかったので」。それでも旅に出たのは、自分なりの決意があったから。「社会に出るにあたって、プライベートであっても仕事であっても、さまざまな経験をしたり、価値観に触れることで、自分自身の総合力を高めていきたいと考えていました。たとえばバックパッカーの経験は、将来的に経理の責任者になって海外に工場を出そうとした時、あの国の人たちは人柄がいいとか、あの場所に土地が余っているとか、データだけでは分からない判断材料として、活かせるかもしれません」。個人としてのユニークさを高め、その力で社会の役に立ちたい。だから、今しかできない経験はしておきたい。バックパッカーでは東南アジア6カ国を周り、カンボジアではトゥクトゥクの運転手の自宅に連れて行ってもらうなど、各地のリアルな生活に触れた。その経験は、後に活きてくることになる。
入社から2年が経ち、経理の基礎を身に付けた頃、工場に赴任。工場の経理は、材料を仕入れてから製品が完成するまでの会計処理に携わる。「経理として幅広い視点を持つためには、現場で起きている会計処理の理解が大切。そのために、工場の現場社員の方々とのコミュニケーションが必須でした」。しかし、当時は経理と現場の距離感が遠く、また新任の福岡は信頼も得られていなかったため、なかなか情報を聞けずに苦労した。その時、バックパッカーの経験が頭をよぎる。「カンボジアの子どもたちと接した時、最初は打ち解けられなかったのですが、どうにか笑わせようと日本のアニメキャラクターの真似をして、お尻をふりふりしてみたんです。そうしたらすごく笑ってくれて。その時に、言葉や文化が違っても、必ず共通する何かがあると実感しました」。工場の現場社員との距離感も、必ず縮められるはず。そこでまずは、休憩所に頻繁に顔を出したり、何かと用事をつくって現場に行くなど、会話の頻度と時間を増やしていった。さらにExcelで事務作業を効率化するなど、経理に直接関係ないサポートも積極的に行った。こうして自ら現場に入り込んでいくうちに、徐々に信頼を築いていき、気付くと工場の現場社員の方から情報をくれるようになっていた。「本来経理では聞けないような現場の実情もたくさん教えてもらい、現場のリアルを知れたことは、工場の経理として大きな武器になりました」。4年間を過ごして工場を離れることになった時、餞別をくれた工場の現場社員の数は、なんと100人にものぼった。自分なりの強みで信頼を得た、何よりの証だ。
現在は経理のデータアナリティクスを担当する組織に所属し、ITツールを活用した業務効率化や資料の改良など、会社全体における経理業務の改革を手がけている。ここでも、自分の強みを存分に発揮。学生の時にプログラミングを学んでいたため、他の経理に比べてITに詳しく、何より現場を知っていることが大きい。「工場をはじめ、これまで現場に近いところで経理をやってきたからこそ、最適な改善策を出せる自負があります。現場を知らないと頭でっかちな施策になってしまい、現場は疲弊してしまうので」。これまでの経験を活かし、会社への影響力が大きい仕事に携われていることに、大きなやりがいを感じている。
将来のキャリアについては、幅広い可能性を視野に入れている。大切にしているのは、自分の強みを増やし、誰かの役に立つこと。「そのためにキャパシティは広げておきたくて、敢えて自分から仕事を限定しすぎないようにしています。いつか海外赴任をしたいのですが、それもやりたい仕事があるというより、幅広い経験をしたい気持ちが強いです」。時を重ねるほどに、個人としての総合力を増していく福岡。それは強みを意識し、一つひとつ積み上げてきた結果だ。今後どんな経験をしても、それをまた自分の力に変えていくのだろう。