パナソニックの人 木田 聡

仕事場と木田 聡さん

パナソニック発の技術で、
世界中の人々が快適に過ごせる
持続可能な社会をつくりたい。

設計開発 木田 聡

人生が開けたきっかけは、1冊の本との出会いだった。木田聡は、子どもの頃から友達と外で遊ぶよりも、家でテレビゲームをする方が好きだった。高校生になっても、ゲーム以外に興味が持てなかった。将来についても、具体的に考えたことはなかった。ある日、担任の先生に呼び出された。「もっと、将来を考えなさい!理系でコンピュータが好きなら、もっと本を読みなさい」と一喝された。先生のアドバイスを素直に受け止めた木田は、図書室で1冊の本を見つけた。その本には、半導体の動作原理や、それを応用したIC、LSIの進化について書かれてあった。読むほどに惹き込まれていった。今まで感じたことのない興奮を覚えた。木田は、ようやく進むべき道を見つけた。

打ち合わせで同僚と笑顔で話す木田さん

半導体や電子回路をより深く学ぶために、大学、大学院に進んだ。そして、その学びを活かすべく、就職活動は電機業界を中心にアプローチした。さまざまな会社の研究をするなかで、パナソニックの創業者の言葉に共鳴した。「創業者はいろいろな言葉を残していますが、そのどれもが自分のなかにすっと入ってきて、この人のなかに自分がいるような、不思議な一体感を感じたのを覚えています」。

パナソニック入社後、エアコンの事業部に配属された。以来、エアコンの設計開発の仕事を一貫して担当している。エアコンの設計開発で、思い出深い仕事がある。入社6年目。国内向けのエアコンをメインに担当してきた木田に、海外向けのエアコンの仕事が回ってきた。マレーシアなど東南アジア地域に省エネ力の高いインバータエアコンを普及させるプロジェクトだ。エアコンの小型・低コスト化を実現する画期的な新技術「単相-三相インダイレクト・マトリックス・コンバータ」を搭載し、量産化を実現することがミッションだった。プロジェクトメンバーは、日本から6名。マレーシアから同数の6名が参加。木田は電気回路の設計開発の実務リーダーを担当した。開発がスタートして、3カ月程過ぎた頃、思わぬ問題が発生した。最初の試作モデルができ、現地マレーシアで行ったテストの時のこと。「最初は動いたんですが、その後、きちんと評価を行おうと思ったら、動かなくなってしまったんです」。原因は、まったく分からなかった。メンバー全員で原因究明に奔走した。それから4日目に、ようやく原因が判明。マレーシアの電源環境が関係していた。テストした部屋の電源の波形を調べると、理想の波形と違っていたのだ。さらに、各家庭の電源ごとに波形が違うことも分かった。家庭によってエアコンが動いたり、動かなかったりでは商品にはならない。急いで対策を検討した。そして、電力の波形の違いをカバーする電気回路及びソフトウェアを開発することにした。現地では、さまざまな家庭でデータを取り波形をパターン化。日本では電力波形の文献を調べて検証した。「現地での調査結果をソフトウェアに落とし込むのに、また一苦労ありましたが、東南アジアのみなさんに安心して使っていただけるエアコンを絶対につくるんだという一心で取り組みました。そして量産化を実現した時は、その達成感で胸がいっぱいになりました」と振り返った。木田は、この仕事を通して、グローバルに事業を展開するパナソニックを実感するとともに、世界に目を向けた設計開発、海外との連携の必要性を痛感した。

同僚と機械を確認する木田さん

現在、木田は、パナソニック株式会社 空質空調社の空調冷熱ソリューションズ事業部に所属。エアコンや給湯機の頭脳とも言える制御回路システムの先行開発の責任者として従事している。先行開発とは、数年はかかる部品の開発を発売から逆算して前倒しして行うことだ。木田に、この仕事の魅力を聞いた。「昔は、設計した回路に通電する時がいちばんワクワクしましたね。現在はマネージャーの立場なので、何か難しい問題にぶち当たった時に、みんなで分担して課題の解決を図るのですが、それぞれが協力してうまく解決することができたり、何か目標が達成できた時がいちばん充実感を味わえます。また、空調機器の省エネ性能の向上は、『カーボンニュートラル社会』実現への大きな1歩となります。自分たちの開発する商品が、社会課題解決に貢献していることを強く実感できることも大きな魅力です」。

笑顔で話す木田さん

入社から約20年。設計開発として、エアコンの進化の歴史に携わってきた木田は今、どんな未来を見つめているのだろうか。「地球温暖化の影響で、気候変動がさまざまな形で私たちの生活を脅かしています。100年先、1,000年先も地球環境と共存し続けるために。パナソニック発の技術で、大幅な省エネ化を実現できる商品を開発していきたい。そして、世界中の人々が快適に過ごせる豊かな未来を創造したいと思います」。彼の目標は、3人の子どもを持つひとりの父親としての想いでもある。

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