現場の課題を解決し、
世の中が効率よく動き出す
アルゴリズムを生み出したい。
研究開発 齋藤 凌大
齋藤凌大が両親からはじめて九九を教わったのは、まだ幼稚園に通っていた頃だった。その甲斐あってか、物心ついた時にはすでに数字に強く、学校では「数学のことなら齋藤に聞けば分かる」と言われるようになっていた。次第に数学教師に憧れるようになり、数学の専門性を高めたいと、大学では数学の研究に没頭できる学部に進学。しかし、大学での学びを通して、未来の選択肢が広がっていく。部品の組み立て最適化を自動車メーカーと共同開発した経験から、数学の能力を活かし、世の中にどのような貢献ができるだろうという想いが膨らんだ。そうして、齋藤はパナソニックグループに就職することを決めた。
数ある企業のなかからパナソニックグループを選んだのは、会社説明会で目にした最新技術に感銘を受けたためだ。街の光から情報を読み込める技術や顔認証技術、透明なスクリーンなど、近未来を感じさせる当時の最新技術は、齋藤の心を躍らせた。それだけでなく、就職活動で出会った社員の親しみやすい人柄にも惹かれた。「得られるスキル、職種、給与など就職活動で重視される要素はたくさんありますが、社会人になると多くの時間を仕事に費やすので、一緒に働く人がどういう人であるかが何よりも大事だと感じていました。就職活動を通じて出会ったパナソニックグループの方々とは波長が合うように思えて、それが最終的な入社の決め手となりました」。
現在はAIを駆使したシステムの研究開発者として活躍する齋藤だが、入社当時はシステムエンジニアとしてキャリアをスタートした。最初に任されたのは、電動バイクのバッテリーシェアリングというプロジェクトだった。バイクのバッテリーを取り外せるようにし、各地に充電済みのバッテリーと交換できる充電スポットを増やしていく取り組みで、齋藤はこのクラウド管理システムの開発を担当。インドネシアやフィリピンでの実証実験では、現地の環境に合わせた運用と保守に奔走した。「大学時代にプログラミングを学んでいましたが、実際のシステム開発は簡単ではありませんでした。どのように通信がつながるのかなど、最初は分からないことだらけで......ずっと勉強の日々でした」。システムエンジニアとして経験を重ねるうちに、齋藤には、持ち前の数学の知識を生かして、「データの力で現場を最適化する」という新たな目標ができた。そうして、研究開発職へとキャリアを広げ、データ分析、需要予測、AI関連のシステム開発など、任される領域はどんどん広がっていた。
現在、齋藤が取り組んでいるのは、AIによるアルゴリズムを活用した倉庫管理の効率化だ。在庫の入荷、出荷の予定に合わせて、最適な在庫配置を導き出し、積荷作業を最も効率よく行うためのアルゴリズムを開発している。また、別のプロジェクトでは、土日に集中する展望施設の来館者数を分散させるシステムの開発にも挑戦した。「混雑状況を改善するために、時間帯や曜日によって入場料を変動させるシステムの開発提案を行いました。わずか100円の違いでも、人の動きは変わります。どうすれば来場者数と収益の最大化を叶えられるかを考え、プログラムを開発しました。現在の仕事は、実際のサービスに近いところで研究開発ができるため、お客さまとの距離が近く、自身が手掛けたAIや数字を活用したプログラムが、現場のさまざまな課題を解決していることを実感できるところが魅力です」。
入社から7年目を迎えた齋藤は、データを活用してお客さまの課題を見出し、その解決で価値を最大化できるスペシャリストをめざしていると話す。「システムエンジニアのスキルとデータサイエンスの知識を両方持っている研究開発者だからこそ活躍できるフィールドがもっとあるはずです。たとえば、パナソニックグループには、自ら手を挙げれば参加できる、さまざまなプロジェクトが豊富にあります。100年先の未来を自由に考えてプロジェクトを発想する『100BANCH』という取り組みもあれば、およそ700人が参加する航空宇宙プロジェクトの有志団体もあります。これまでの経験や技術を生かし、自由に挑戦できる環境で、さらに成長していきたいです」。
かつて教師をめざしていた齋藤には、教育現場を効率化するソリューションを生み出したいという夢がある。「教育現場の課題を解決し、業務を効率化することで、教師が子どもたちと向き合う時間を増やすことができるはずです」。齋藤にとって、データやシステムを活用して効率を上げる取り組みは、ビジネスの世界にとどまらない。教育やもっと想像もつかないような社会課題にも、その力を発揮できると信じている。