パナソニックの人 野間 憲彦

仕事場と野間 憲彦さん

どうつくったのか分からない、
他社にマネのできない
モノづくりを実現したい。

生産技術 野間 憲彦

子どもの頃のヒーローは、祖父だった。宮大工をしていて、釘を1本も使わず魔法のように何でもつくってしまう姿がかっこよかった。祖父みたいになりたくて、現場について行っては手伝いと称して見様見真似でものをつくった。すると、みんなが笑顔になるのが嬉しかった。何より、今までなかったものが、自分の手で生み出せることがおもしろくてしょうがなかった。「大きくなったら、ものをつくる仕事をしよう」。それは野間憲彦にとって、夢というよりは将来の決定事項であった。

作業をする野間 憲彦さん

高校は、迷うことなく工業系の高校を選んだ。「親には、選択肢をもっと広げておいた方がいいって反対されたんです。でもそこは譲れなくて。だから入学後は、自分の選んだ道が間違っていないことを証明したくて、将来役立ちそうな資格を取りまくっていました」。大学は工学部 物理工学科に入り、ナノテクノロジーを学んだ。そして就職活動が始まると、モノづくりの会社を回った。そのなかのひとつがパナソニックだった。はじめは第1志望ではなかったが、会社を調べていくうちにイメージが変わった。「松下幸之助さんの著作を読んでみたんです。そうしたらそのなかに『ものをつくる前に、人をつくる』という言葉を見つけて。この会社なら自分を活かすことができるかもって直感的に決めました」。

配属されたのは、デバイス部門の生産技術。「これまで培ってきた技術や技能が活かせるのであればどこでもいいです」と伝えていたので戸惑いはなかったが、生産技術が何をする仕事なのか正直よく分からなかった。でも心のどこかでワクワクしていた。「今までやったことないことにチャレンジできるってことは、むしろ望むところでしたから」。

笑顔で話す野間 憲彦さん

生産技術は、簡単に言えば製品を量産するためのより良いつくり方を考え、そのための設備や体制をつくる仕事だ。「でも、設備だけをつくっているわけではないんです。製品構想段階から参画し、それをつくる上で必要な手順、守るべきことを満たすためには、どのようにつくればいいのか。どのように管理すればよいのか。どのように保証していけばよいのか。それらを考え、製品設計への反映、モノづくりのプロセスフロー、設備の仕様に落とし込んでいくんです。1台の設備にプロセスのどこからどこまでを担わせるかも、設備の仕様を決める上で大事な要件。安全性やメンテナンス性への配慮もしながら、仕様にもとづいて設備の設計を行って、市販品や加工品の手配、組立、配線、作成したソフトウェアのインストール、調整を経て、設備を製作していきます」。

ひとつの製品をつくるには、20以上のプロセスがあり、5台から10台以上の設備が必要になる。その一つひとつで、品質やコスト、納期、安全、環境への配慮等の点から検証し、それぞれの最適解を見つけていくのは、気が遠くなるほどの試行錯誤が必要になる。「常に考え続け、手をかけた分、導入設備への愛着はひとしおです。自分の想いを通すだけでなく、他のメンバーのアイディアに刺激を受けることもこの仕事の魅力のひとつ。いろいろな経験、考えを持つメンバーと一緒に、一つひとつの設備を形にすることは大変ですが、たのしいですね」。

生産技術の仕事を一通り経験したあと、「画像認識技術」を使った設備開発の立ち上げを任された。「画像認識技術を取り入れた設備は今や当たり前ですが、当時はまだ使われ始めていたばかりの技術。それが、いきなり若手の自分に『ちょっとやってみないか』と声がかかって。新しい装置で職場の誰も分からないことですから、自分でマニュアルを読んで毎日トライ&エラーです。画像認識で、製品を正しい位置に配置できるか。不良なものを判別して、落とすことができるか。来る日も来る日も試していました」。これでいい、そう思えるものができても、前例がないことなので自信が持てなかった。そんななか社内の技術大会に参加した。「若手からベテランまで、パナソニックグループのいろいろな技術者が、それぞれの技術やスキルを競い合う大会なのですが、そこで2年連続で1位をいただいたんです。それでやっと自分が培ってきた画像認識技術は、生産設備におけるコア技術なんだって思えるようになりました」。

作業をする野間 憲彦さん

これまで、つくることにこだわり続けてきた。そんな彼がこれからつくりたいものは何だろうか。「他社の人が見た時に、どうつくったのかわからない、そんなモノづくりを実現したいですね。どんなに斬新な製品でも世の中に出ていけば、分解されて、そこにどんな技術が、どんな材料が使われているのかを他社に比較的容易に解析されてしまいます。しかしそれを『どうやってつくっているのか』については把握が難しく、他社と差別化できる絶好のポイントになります。より高品質で、生産性が高く、低コストな誰にもマネのできないモノづくり。それを私たち生産技術の進化によって貢献する。それが私の夢なんですよ」。

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