パナソニックの人 邊 美廷

仕事場と邊 美廷さん

世界中の何万人という人に、
空調を通して貢献していきたい。

設計開発 邊 美廷

「小さい頃の夢は外交官でした。それがどんな仕事なのかよく分かっていなかったけれど、いつか生まれ育ったソウルを飛び出して、世界のたくさんの人のためになることをやってみたかったんです」。その夢は、成長するにつれ少しカタチを変えていった。そして大学で機械工学と経営について学ぶようになる頃、自分が本当にやりたいことは何かをもう一度考えてみた。

会話する邊 美廷さん

やっぱり世界を舞台に、多くの人に新しい価値を届けるような仕事がしたい。それは絶対だ。でもそれには、どこの国に行けばいいだろう。アメリカ、ヨーロッパの国々、さまざまな国を思い浮かべた時、行ってみたいと思ったのが日本だった。中学生の頃に日本のドラマにハマり、それがきっかけで日本語の勉強をした。

字幕なしでドラマが観られるようになり、いろんなことを知るほどに好きになっていった国。交換留学で実際に行ったりもした。働くなら、まずあの国がいい。就職活動がはじまると、自分の機械工学の知識を活かせる日本のモノづくり企業を探した。夢に近づくには絶対に世界的に展開しているグローバル企業がいい。こうして見つけたのがパナソニックだった。

名前は知っていた。でも韓国では、それほど有名な会社ではなかった。「だからパナソニックのこと、すごく調べたんです。つくっているものとか、経営理念とか。そうしたら『ものをつくる前に、人をつくる』っていう言葉を見つけて。なんだかすごく自分に響いたんです。この会社なら、ひとりの人間としての価値を大事にしてくれるんじゃないかって」。

きっとその言葉通りの会社であろうことは、パナソニックの人に会った時にも感じた。面接をしてくれた一人ひとりが、自分のことを少しでも知ろうとしてくれたことが嬉しかった。ここで働いてみたい。そう思うとともに、新しい夢が心に灯った。「パナソニックは、日本では誰でも知る企業ですが、グローバルで見たらまだそこまでじゃない。もっともっと世界中が知っている企業に成長することに、自分が貢献できたらって考えたら、とてもワクワクしたんです」。

会話する邊 美廷さん

パナソニックへの入社が決まった。空調を扱う部門に配属された。担当は、吸収式冷凍機の新製品の設計。この吸収式冷凍機というのは、一言で言えばビルやスタジアムなど大型施設向けの冷房機だ。特徴は極めて環境性能が高いこと。水を自然冷媒として使い、消費する電力は設備を回す電力だけ。さらに廃熱を活用することで、より省エネに運用もできる。カーボンニュートラルや電力ピークの削減が求められる近年、非常に注目が集まっている技術だ。

「はじめて見た時は私も驚いたのですが、吸収式冷凍機ってすごく大きいんです。これをいかに小型軽量化するかが設計の仕事のミッションでした。でも何から始めればいいか分からない。だからまず工場に行って、気になったことは全部、1から10まで聞いて回ったんです。先輩たちからは、こんなに質問する人ははじめてだと言われるくらい」。

ある程度理解できるようになり、実際に設計を始めると次の壁にぶつかった。吸収式冷凍機は、機械自体が真空になっているため簡単には解体できない。新しい設計のアイディアが浮かんでも、それを検証するには非常にコストと時間がかかってしまう。そのため要素試験を行い、問題点を洗い出すことから始めた。シミュレーションを何度も行い、周りの意見を聞き、自分で作成した基準で検証を行った。目標達成に向けて、気が遠くなるほど試行錯誤する日々が続いた。

2年後、ついに製品が完成した。業界最小・最軽量。その言葉が、自分のつくったものにつけられた時は感動した。そして誇らしかった。「まるで自分の子どもみたいに思えて。嬉しくて何度も工場に見に行きました」。

笑顔で話す邊 美廷さん

現在、彼女が担当しているのは、受注生産品の設計だ。お客さまが求める仕様に合わせて特殊設計をしている。量産品とは違い、設計には常に新しいやり方を考えなければならないところが難しく、だからこそおもしろい。「新製品に携わっていた時は、比較的小規模なところへの納品が多かったですが、今は大規模な施設のものをよくやっています。それこそ世界的なスポーツイベントを行う大きな競技場とか。近い将来そこに何千、何万人の人がやってきて、私のつくったものを体感してもらえるようになったら。想像するだけでもワクワクするんですよ」。
世界中で空気の質への関心が高まるなか、空調を扱う彼女の仕事が世の中に貢献できることは大きい。いつか見た夢、その入口に今、彼女は立っている。

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