未来の製品が生まれる
モノづくりの舞台をつくりたい。
ファシリティマネジメント 土屋 浩平
「ものをつくる前に、人をつくる」。パナソニックグループに受け継がれている精神だ。だが、パナソニックグループにはもうひとつ、ものをつくる前につくらなければいけないものがある。それは、オフィスや工場などの建物。土屋浩平は今、パナソニックの製品が生み出される工場をつくっている。幸せのチカラになる製品を世に放つために、さらにその先を見据えたモノづくりの舞台を整えていく。所属するファシリティマネジメントセンターは、パナソニック株式会社に関連する不動産の全てのかじ取りをしている。建物の建設から解体、土地や建物の売買に至るまで。汐留にある東京本社ビルも、国内外の工場も全てだ。時代は必ず移り変わる。その変化にも対応できるような使いやすいオフィスや工場が、この部署の活動から生まれている。
2022年の夏、土屋は、ベトナムの新工場建設(2023年完成)と向き合っていた。だが、その華やかに見える活躍の場に、容易にたどり着けた訳ではない。まさに紆余曲折と呼べる道を辿ってきた。高校を卒業した後、すぐに大学へ進学した訳ではない。めざす学問や将来像が明確に見えず、流れるままに進学するよりはと、それからの2年間、夜勤のアルバイトを続けながらフリーターとして過ごした。意志に沿わない道へは進まない。その反面、目標が定まった時には、迷うことなく突き進んでいく。そこに性格が垣間見える。そんな日々のなか、未来へと向かわせるいくつかの巡り合わせがあり、大学への進学を決め、工学部に入学した。
それまでの反動のように、学生時代はとにかくいろいろなものに打ち込んだ。サークル活動では、衛星探査ロボットをつくり、種子島宇宙センターに行きJAXA主催の大会に出場した。タイの大学とのつながりから、現地へ赴き、工場へのソリューション提案を行うプログラムにも参加した。行ったことのない土地を訪れる。人に出会う。旅するように海外で学ぶ。いつしかそれが、土屋を動かす要因となり、それが1本に結びつく現在の職場へとつながっていった。振り返れば、パナソニックへの入社を後押ししたのもインターンシップの時に出会った人だったという。「自由そう。それが最初の印象でした。おもしろい経験をされている方が多かったんです。旅行でもなかなか行けないような国や場所で働く話を聞き、素直におもしろそうだと感じました」。
建物は、無数の設備で動いている。パナソニックが取り扱う製品から、そうでないものまで、照明などの電設資材や空調機器だけでも無数の選択肢があり、建物をつくるには、あらゆるものに目を配らなければいけない。それだけではない。建設難易度や特徴・物流・市場状況等まで理解しなければ最善のプランを選択することは難しい。総合的な知識を身に付ける必要があるが、それさえ、幅広く知識を吸収して自分自身を成長させられる機会だと捉えている。現在のベトナム新工場建設のプロジェクトに参加したのは入社2年目の冬。企画段階から携わり、設計や設備を決め、生産を開始するところまでの全てに関わっている。
「建物をつくることは、モノづくりの源流を生み出すこと。業務の成果が建物であるということに責任とやりがいを感じています。ただ、想定外の事態も多く、建設予定の土地に事前調査とは異なる事情が判明したり、さまざまな課題が次々と舞い込んできます。より良い設備を整えるだけでなく、計画を遅らせないことも大切な仕事。たとえ1日でも建設が遅れれば、製造の遅れに直結しますから。本当にたくさんの職種の方々が関わる仕事なので、誰かの疑問や不安を置き去りにすると、それが後々大きな問題となることもあります。全員がこれで良いと腹落ちするプランができあがり、前に動き出す時の嬉しさは格別なものがあります」。
現場の司令塔となり、専門家たちの意見を集約して、コスト、スケジュールを踏まえ最善のプランを選択する。それも1度や2度ではない。日々、その決断の連続なのだ。めざすは、立地、建物の特性、建設のタイミングを俯瞰して見ながら、自ら工場建設の提案ができるような人材への成長。ファシリティマネジメントセンターが取り扱う建物は、国内にとどまらない。ベトナム、インド、トルコ、チェコ、現場は世界に広がっている。いつだって、未踏の地こそ、土屋の舞台だ。