安全と品質を追求して、
世界中でパナソニックの
ファンを増やしたい。
品質管理 石谷 和愛
新しいものにどうしようもなく惹かれてしまうのは、たぶん海と砂丘に囲まれた少し田舎の街で育ったからだと思う。都会の大学に通うようになり、地元にはなかった大型家電量販店に行った時に、発売したての新製品がずらりと並んでいるのを見て胸が躍った。「新しいガジェットが出るとすぐに触りに行きました。家電も好きで新製品が出たら機能を見比べて、いちばん良いと思うものを買っていましたね」。
就職活動が始まると、電機メーカーを中心に会社を回った。志望職種は自分が大好きなテレビやデジタルカメラや携帯電話の開発。しかしパナソニックの人に会って話した時に、思いがけないことを言われた。「石谷さんは、品質管理の仕事が合っているかもしれない」。正直、戸惑った。しかし話を聞くうちにだんだんと興味が湧いてきた。「実は家にある家電、買った時は特に意識していなかったですが、後で見たらパナソニックばかりだったんです。知らないうちに品質を信頼して買っていたんだって気付いてから、パナソニックの品質を支える仕事にすごくやりがいを感じて、志望を変えました」。
入社すると希望通り品質部門に配属された。そして製品審査業務の担当になった。「これはパナソニックグループ独自の品質の仕事だと思うのですが、発売前の製品をお客さまと同じように使ってみて、本当にお客さまの元へお届けして問題ない製品かを確認する仕事です」。梱包された箱は問題なく開けられるか、製品は問題なく設置できるか、取扱説明書を見て操作できるか、使い勝手に問題はないか。お客さまが実際にどのように使うかを想定しながら評価し、問題が見つかれば該当する部門にフィードバックし、改善してもらう。発売までに問題が解決できなければ出荷を止めることだってある。
「私たちの製品はあらゆる段階で、安全性を確認しながらつくられています。しかし、私たちの想定にない使われ方によって、思わぬ事態につながってしまうこともあります。この製品をはじめて見たお客さまはどんな使い方をするだろうか。それを常に考えるとともに、お客さまからいただいた声やネット上のさまざまなレビュー、SNSでの書き込みをチェックし、あらゆる使われ方を想定して安全性を検証しています」。
品質管理の仕事について5年。海外市場での製品の使用環境を調査するプロジェクトに参加した。さらにその翌年から、インドでの顧客満足度向上活動を推進。そして2016年、インドへ出向し、現地がマネジメントする製品の品質管理業務を担当することになった。「現地の責任において社外パートナーたちと協同して製品を開発し、それを組み立ててパナソニックブランドとして販売する際に、それらの品質をいかに保証するか、が仕事です。しかしスピード感が求められる海外市場において、最初は日本流のプロセスや考え方はまったく理解されませんでした」。
そこで、パナソニック品質と現地事業のスピードを両立させるための「品質マネジメントシステム」の再構築に取り組んだ。何度も現地のメンバーと話し合い、パナソニックグループの品質、安全に関する理念や基準、背景を粘り強く伝えた。その上で、現地のやり方や考え方を踏まえて、どうしたら実現ができるのかを一緒に考えた。「激しい議論になったこともありますし、本当に、本当に大変でした。何度も話して。話すだけでなく、自分がやって欲しいことを自分でもやってみせたりして。そういう自分なりの伝え方で少しずつ浸透させていったんです」。最適と思えるしくみづくりができた頃、3年の月日が過ぎていた。
現在は日本に戻り、パナソニックグループ全体で順守すべき、製品安全基準の充実と強化に取り組んでいる。パナソニックグループや他社の製品において起こった不安全事故事例を分析し、2度と起こさないために、グループのあらゆる活動において守るべき品質・安全基準を常に見直し、改定するとともに、それらの理解を深めるための教育・啓発活動を実施している。「どれだけ優れた製品安全基準を制定しても、守れなければ意味がありません。特に海外では、パナソニックグループの品質と製品安全の考え方が十分に理解されていないことがあります。インドで経験したことを活かして、現地の実情を理解し、それを私たちの理念とうまく融合させることで、安全と品質への考え方をもっともっと浸透させていきたいですね。そしてパナソニックの製品は安全で安心だ、そう言っていただけるモノづくりで、世界中のひとりでも多くの方にファンになっていただく。今はそれを実現することにワクワクしているんですよ」。