パナソニックの人 邸 睿

仕事場と邸 睿さん

3Dシミュレーションで、
未来に誇れる電池づくりに貢献したい。

研究開発 邸 睿

「日本に行きたい」。そう伝えた時、両親は少し驚いた顔をしたそのあとは全力で応援してくれた。理系という家族の誰とも違う道を選んだ時、一言も反対はしなかった。理由は聞かなかったけれど、自分に子どもができてからは、あの時どんな想いだったか分かる気がする。中国を旅立つ際に、両親が姿が見えなくなるまで手を降り続けていた時の光景は、今も目に焼き付いている。

外の世界を見に行くこと。それは邸睿の子どもの頃からの夢だった。自分が何をしたいのかは分からなかったが、進み続ければ何か見つかる気がしていた。「日本の大学院では、リチウム電池の研究をしました。当時はエネルギー問題が叫ばれ始めた時代で、EVなども世の中にあまり出回っていませんでしたが、これからの成長を感じさせる分野で。だからこれだ!と思って。将来の仕事にしようとかは、まったく考えていませんでしたが、とにかく興味のあることを学び続けていました」。

笑顔の邸さん

自分が進むべき道は、どっちにあるのか。就職活動をする頃に、改めて考えた。日本で働くことは決めていた。自分の武器である語学力を活かすなら、やはりグローバルな企業がいい。あとは大学院での知識を活かせるところ。そうやって絞り込んでいくと、パナソニックグループが第一志望になっていた。「大学院の研究室に、よくパナソニックの社会人ドクターの方がいらっしゃっていたので、電池に強い会社だとよく聞いていたんです。あとパナソニックは中国でも有名ですから、出張で実家に帰れたりするかもって思って(笑)」。

それから邸は、パナソニックでリチウム電池の研究をし続けている。「最初に任されたのは、リチウム電池の電気化学現象を再現するシミュレーションの開発でした。はじめは分からないことばかりだったので、勉強しながら取り組む毎日でしたね」。それがひと段落つく頃、邸は産休に入った。そして復帰後すぐに任されたのが、車載リチウム電池の3Dシミュレーションのモデル開発だった。

仕事中の邸さん

これは電池の複雑な内部構造をパソコン上で仮想的に再現することで、試作品をつくらずとも内部構造や電気化学反応を確認できるようにする技術。実験することなく、詳細かつ正確なデータが取れるため、時間とコストを大幅に削減できるだけでなく、製品開発や改良の効率化にも役に立つ。「たとえば電池に不具合が発生した時、評価するには分解しないといけないのですが、それには危険が伴います。3Dシミュレーションを使えば、分解せずともどこで問題が起きているのか特定しやすくなるので、安全面でのリスクも減らせるんです」。

しかしそれは、社内の誰もやったことがない挑戦だった。特に車載リチウム電池の3Dシミュレーションの開発には、数学、材料工学、化学など、さまざまな知識が求められる。一つひとつ学びながら試行錯誤を繰り返す日々であったが、幅広い分野の新しい知識を身につけていくことは、たのしかった。「この仕事を通じて改めて思ったのは、パナソニックには成長に必要な環境が整っているということです。研修だけでなく、周りにいる優秀な人の知識やアドバイスにも、とても助けられました。ここにはお互いが刺激し合いながら、いっしょに成長していこうという空気があるんですよね」。そして半年後、まだまだ改良の余地はあるものの、実際の業務に十分活用できるものが完成した時、ここで働くことができてよかったと改めて思った。

パソコンを開きながら談笑する邸さん

3Dシミュレーションが、さまざまな電池で活用できるようになれば、電池の開発は飛躍的に効率化する。より安全で、より高性能な電池の開発をすることで、人類が直面しているエネルギー問題の解決にも大いに貢献できるはずだ。「そのためには、さらに高度な専門知識や技術が必要ですし、常に学び続けなくてはいけません。でも、私は実現したいんです。子どもが大きくなった時に、『これがお母さんの仕事だよ』って誇りを持って見せたいですから」。

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