パナソニックの人 田島 大侑

仕事場と田島 大侑さん

調達プラットフォームを
グローバルで統一し、
納期管理プロセスを革新したい。

調達 田島 大侑

「いろんな分野に携わりたいなら調達はどう? 向いていると思うよ」。就職活動真っ只中、職種まで絞り切れないでいた田島大侑は、第一志望にしていたパナソニックの面接でそう助言された。調べてみると確かに調達はさまざまなステークホルダーと関わり、いろんな製品や部品を扱う。なるほど好奇心が強い自分に合っている。モヤモヤとした気持ちがスッキリした。最終面接では自信をもって「希望の職種は『調達』です」と明言した。

納得のいく進路を見出した田島だが、道のりは平坦ではなかった。ロボットに興味を持ち、産業用ロボットの研究をするために大学は情報理工学部を選択。しかし入学して衝撃を受けた。使い込んだ自分専用のノートPCを持参する同期生が珍しくなかったのだ。話を聞くと、小学校からプログラミングに親しんでいたという。自分が半年かけてやる課題も、彼らにかかればわずか1週間。実力差は簡単に埋められるとは思えず、将来、産業ロボットの世界に進みたかった気持ちも徐々に薄れていった。しかし純粋にロボットを動かしてみたい想いは強く、プログラミングだけは4年間しっかり学んだ。

PCに向かう田島さん

進路に悩んでいた田島は大学卒業後に就職することなく、英会話を学ぶためにフィリピンへ語学留学した。英語を話せるようになりたくて留学したが、それは改めて自分を見つめ直すきっかけにもなった。「ロボット以外に興味があった家電を、技術視点で研究するジャンルがないものか......」。そんな想いで調べてみると、通っていた大学の大学院に「MOT=マネジメント・オブ・テクノロジー」という専攻があることを知った。これは技術が持つ可能性を事業に結びつけ、経済的価値を創出していく経営。「技術経営」の研究だ。語学の勉強の合間に田島は進学の準備を進め、帰国後、早々に入学。大学院での研究をスタートさせた。

修士論文に向けて研究テーマを教授と相談するなか、フィリピン留学の話をしたところ「BOP(Base of the Pyramid)ビジネス」の研究に決まった。これは40億人といわれる貧困層をターゲットに商品を供給するもので、市場開拓として世界経済に貢献する一方、BOP層にとって手に届きやすく商品が提供されることで生活の質向上につながるサスティナブルなビジネス。具体的には無電化地域への新たな家電として「ソーラーランタン」普及論を研究することになった。田島は調査のため、早々フィリピンの無電化地域へ向かった。現地の方々は協力的で、日常生活やソーラーランタンに関するアンケートを詳細に取らせていただき、説得力のある分析をすることができた。そしてソーラーランタンに必要な機能や価格を導き出して設定。まとめた修士論文は、最高評価をもらった。

俄然、家電がおもしろくなった田島は就職活動も家電メーカーに照準を定め、大阪出身者として愛着のあるパナソニックを第一志望にした。職種は技術のバックグラウンドを活かして営業活動を行う「技術営業」を候補にしたが、分野が絞られることに違和感があった。「自分の性格上ひとつの分野を極めるよりも、いろいろなことを知りたいゼネラリストタイプという自覚がありました。なので、モヤモヤとした気持ちのまま面接に臨みましたが、そこで提案いただいた『調達』はまさに的確でした。その時、やっと就職活動のゴールに辿り着くことができたように感じました」。田島が感慨深く語った。

打ち合わせで話す田島さん

入社後、田島はグローバル調達部門の集中購買センターに配属され、輸出業務の貿易実務を経験。2年目から複数の海外工場向けに輸出する部材の納期管理を担当することになった。「調達」は、国内外にある事業会社の工場に対して製造に必要な原材料や部品を仕入先と交渉して価格や量を決め、適切な輸送手段で届ける仕事。パナソニックグループでは、独自の部材を扱う「各事業会社の調達」と、グループ全体を通して主に汎用性の高い部材・部品を集約しボリュームメリットを活かす「グローバル調達」がある。さらに、そのなかで役割は3つに分かれる。全体をマネジメントする「企画」。値段を交渉して決める「契約」。発注して納期を調整し、工場へ輸送するまでをハンドリングする「購買」。田島が担当するのは「グローバル調達」の「購買」だ。

田島は調達オペレーションの効率化を推進するプロジェクトにも携わっている。多様な事業があり、調達方法もシステムもバラバラだったパナソニックグループでは、近年、主な調達業務をグローバル調達部門が集約して合理化を進めている。そのなかで共通のプラットフォームを利用し、納期管理プロセスを日本国内だけでなく、グローバルで統一をめざす改革を担っているのだ。もちろん海外出張もある。直近では、タイ工場の調達業務立て直しをミッションとする3カ月の長期出張。現地で調査をすると、納期管理のマニュアルが多く、購買スタッフの混乱を招いている課題が見えてきた。そこで自ら携わるプラットフォームを導入。それがタイ工場での調達業務の標準化につながった。「システム開発には、大学で学んだプログラミング言語の知識を役立てることができました」。田島の言葉は自信にあふれていた。

話す田島さん

成果は出ているが、納期管理の統一化はまだ道半ば。パナソニックグループのどこにいても調達業務はすべて同じ、そんな環境を構築することが田島の目標だ。業務が効率化された分、付加価値のある業務へシフトチェンジできる環境をつくりたいと言う。さらに「事業をまたがって調達しているからこそ集まる情報を駆使して、仕入先と交渉したり、事業会社へ提案したり、そんなデータサイエンスのような仕事もやっていきたい。めざすは新世紀型バイヤーです」。この先の道も平坦ではないかもしれない。しかし、どんな道でも乗り越えるバイタリティが田島にはある。

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