パナソニックの人 大城 大典

仕事場と大城 大典さん

エアコンのなかにある圧縮機で、
見えないところから世界を驚かせたい。

設計開発 大城 大典

エアコンの圧縮機。大城大典が心血をそそいで開発するその製品は、決して目立つ場所にはない。コンプレッサーとも呼ばれる圧縮機は、エアコンの室外機のなかに組み込まれるキーデバイスのひとつ。エアコンの省エネ性能では、よく消費電力が注目されるが、実はエアコンを動かすのに必要な電力のうち、約7割を圧縮機が占めている。より効率の良い圧縮機を生み出せれば、直接それがエアコンの省エネ性能につながり、電気代は安くなるというわけだ。圧縮機によって、製品の性能は大きく左右される。

機械を操作する大城さん

開発しているBtoB向けの圧縮機は、主にエアコンに使用されているが、圧縮機そのものが活躍する領域は、もっと幅広い。冷蔵庫、除湿乾燥機、スーパーやコンビニの冷蔵ショーケース、自動販売機、給湯器。エアコン同様、冷却と加熱の機能を持つ製品には圧縮機が必要となる。くらしの快適さに欠かせない技術として日々性能を向上させ、世界に1歩ずつ変化をもたらしている。「学生の頃の研究が圧縮機に関するものだったので、さまざまな製品への汎用性は理解していました。それでも、ヒートポンプ式洗濯機に使用されているのは入社するまで知りませんでした。それだけ、世の中になくてはならない技術に携わっているのだと実感しています」。

大城の父もモノづくりの仕事をしていた。「これ、お父さんがつくったの?」、幼い頃にそう聞いた記憶がある。そして「つくったものを自慢できるっていいな」と思ったことも覚えている。ものをつくるやりがいを身近で見聞きするうちに、自分も何かをつくりたいという想いは自然と育っていった。そうして、モノづくりの代表的なものといえば機械と考えた大城は、機械工学を専攻した。流体の性質や流れなどの物理現象に興味を持ち、流体力学を学ぶ研究室を選択。機械、物理、その研究の経験が現在の仕事である圧縮機へと興味を駆り立てていった。

機械の部品を手に持ち作業をする大城さん

入社を後押ししたのは、会社見学で会った先輩社員の雰囲気の良さだったという。一人ひとりが担当している圧縮機に責任を持って向き合いながらも、自己完結で黙々と仕事に取り組むのではなく、意見を交わしたり協力し合いながら開発しているのが伝わってきた。幼い頃からずっと野球をやっていたこともあり、チームで取り組むという雰囲気も好きだった。「仕事を進める上では、図面を描くなどの基本的な技術はもちろん必要になります。でも、私も会社に入ってから知り身に付いたことは多い。だからこそ思うのは、入社する時に必要なのは、技術よりも気持ちだということ。大学での研究領域は、社会に出ればすぐにカバーできます。まずは何にでも興味を持ち、分からなければ素直に聞けるという学ぶ力を持つことが大切だと思います」。

エアコンをとりまく技術革新には目まぐるしいものがある。これまで以上の環境性能を実現する難しさも、日々増している。それでも大城のもとには、性能に関する要望から室外機を静音化して欲しい、あるいは環境負荷の少ない冷媒に対応して欲しいという類のものまで、さまざまな課題が舞い込んでくる。性能ばかりを追求すれば、当然コストは増えてしまうが、いかなる設計でも壊れにくさと安全は優先されなければいけない。数ミクロンの進化を問う世界で、技術は磨かれているのだ。「はじめから妥協案を用意するようでは、これまでの技術は超えられません。まずは、自分なりに追求できる限界をしっかり捉えることが重要です。その姿勢で続けていると、妥協しないことが、最善の解決策を教えてくれたりするんです。うまくいかないことも多いけれど、真理と間違いを見分けていくのも仕事。周りからそれは試さなくてもいいのではと言われることもありますが、やり通す実力も必要。失敗しても、いい勉強になりましたと笑っていられるぐらいの気持ちを持って取り組むように心がけています」。

笑顔で話す大城さん

そんな大城も、失敗を重ねて今がある。まだ入社して間もない頃、量産を控えた製品の品質確認を行うための信頼性試験で想定外の不具合が起きたことがある。信頼性試験には多大な時間を要するため、お客さまと約束した量産日程を遵守するには1回の不具合でも致命的な時間のロスが生まれてしまう。原因を探りながら、もう1度試験を行うための時間を確保し、製造期間も短縮しなければならなかった。そこから学んだのは、わずかな変化も見逃してはならないということ。そうした経験を重ねて、技術者として成長してきた。「納入先のお客さまに喜ばれる商品をつくることが第一。でも、いつもめざしているのは、その先にいる実際に使用する人を満足させたいということです。いつか、自分が手がけた世界No.1の高効率な圧縮機がこんなにも世界中に広がっているんだよと、自分の子どもに自慢できたらいいなと思います」。大城は今日も、世界を驚かせようと挑戦している。

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