パナソニックの#はたらくってなんだろう

アゴ下の長いくせヒゲも、なぞるだけで剃りあげる 国内プレミアム市場のシェア拡大に貢献~ラムダッシュ6枚刃 ES-LSシリーズ~

左から、澤さん、池田さん、大倉さん、山本さん、小森さん、清水さん、内田さん、石倉さんの写真

パナソニックグループにおいて革新的な商品・サービスに対して社内表彰を行う「パナソニック商品表彰」。今年の社長賞は複数刃技術と意匠の両面から前例のない開発に挑戦し、10年ぶりのフルモデルチェンジを成功に導いた「ラムダッシュ6枚刃 ES-LSシリーズ」が選出されました。「新6枚刃システム」を搭載し「アゴ下のくせヒゲさえもなぞるだけで剃りあげる」と発売直後から反響を呼び、3万円以上の国内高価格帯の市場を拡大し、高級ゾーンのシェア向上に大きく貢献。あえて色展開を設けず黒の世界観にこだわり上質感を高め、複数刃技術と意匠の両面から前例のない開発に挑戦し、設計、製造、企画、デザイン、マーケティング、営業の各部門による「五設一体」のものづくりに取り組んだメンバーに話を聞きました。

プロフィール

  • 小森 俊介

    パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社 ビューティ・パーソナルケア事業部

    小森 俊介さんのプロフィール写真
  • 清水 宏明

    パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社 ビューティ・パーソナルケア事業部

    清水 宏明さんのプロフィール写真
  • 大倉 翔貴

    パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社 ビューティ・パーソナルケア事業部

    大倉 翔貴さんのプロフィール写真
  • 澤 勇一

    パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社 ビューティ・パーソナルケア事業部

    澤 勇一さんのプロフィール写真
  • 池田 建太

    パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社 ビューティ・パーソナルケア事業部

    池田 建太さんのプロフィール写真
  • 内田 聡

    パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社
    ビューティ・パーソナルケア事業部

    内田 聡さんのプロフィール写真
  • 山本 健司

    パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社 ビューティ・パーソナルケア事業部

    山本 健司さんのプロフィール写真
  • 石倉 幹泰

    パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社 くらしプロダクトイノベーション本部 デザインセンター

    石倉 幹泰さんのプロフィール写真

目次

  1. 「アゴ下トリマー刃」を開発し6枚刃を最適配置 長いくせヒゲのカット率を4倍向上
  2. 刃が上下に浮き沈みし肌に密着 深剃り追求と肌への負担軽減を両立
  3. 引き算のデザインで上質感を追求 世界が認めた「クラフトブラック」の世界観
  4. 誇るべき開製販「五設一体」のものづくり
  5. 転機はリニアモーター 技術を磨きさらなる高みへ
  6. 見る、見る、作る 誰よりもヒゲ、肌を観察
  7. 窮地を救った品質確認技術 金色加工と形状を安定
  8. ピンチをチャンスに 土壇場で転換した商品訴求
  9. 性能向上を明快に表現 突き詰めたワンフレーズ
  10. 「上を向いて歩こう」顧客体感価値の最大化で逆風を突く
  11. 実証実験で他社を圧倒 黒一色の信念を貫く

「アゴ下トリマー刃」を開発し6枚刃を最適配置 長いくせヒゲのカット率を4倍向上

商品の刃の部分のクローズアップ

新6枚刃システムがフォーカスしたのは、アゴ下などに生える長いくせヒゲのカット率の向上です。近年、生活スタイルの変化でヒゲを剃る頻度が減り、コロナ禍により在宅勤務が増えたことも加わり長く伸びたヒゲをきれいに剃りたいというニーズが増していることに着目。長いくせヒゲが比較的多い外国人の方からも評価される剃り性能を実現できれば、競合メーカーに押されていた国内高価格帯のシェア逆転はもとより、海外市場における攻勢の活路につながると狙いを定めていました。

最上位モデル「ラムダッシュPRO6枚刃」は3種類、合計6枚の刃を搭載。新開発した「アゴ下トリマー刃」は長いくせヒゲも素早くすくい取り、カット部分に取り込みやすくしました。ただ、ヒゲをすくい取りやすく刃の先端を薄く細く加工すれば、肌を傷めかねません。「刃の先端形状、肌に当たる高さなどあらゆる角度から細心の注意を払い、量産開始ギリギリまで微調整を繰り返しました」とリーダーの小森さんは話します。

「肌にやさしく、長いくせヒゲを取り込みやすく」、二律背反を両立する刃のシステムにたどり着いた結果、アゴ下トリマー刃を2枚に増やして配置を最適化し、長いくせヒゲのカット率が大幅にアップしました。シェーバーを肌に当てると、まず金色のアゴ下トリマー刃が長いくせヒゲを素早くプレカットし、短くなったヒゲを最薄部0.041mmの2種4枚の極薄深剃り刃が根元から深剃りして仕上げます。ラムダッシュシリーズは外刃で捉えたヒゲを高速で左右に動く内刃でカットする構造を採用しており、内刃の駆動には1秒間に233往復する高速リニアモーターを搭載。6枚刃システムとの相乗効果によりカットアクション毎分約8万4000往復というパワフルなカット性能を維持しつつ、長いくせヒゲのカット率を従来モデルの約4倍*まで大幅に向上させることができました。

*従来機種5枚刃モデル「ES-LV9FX」比較。当社調べ。

刃が上下に浮き沈みし肌に密着 深剃り追求と肌への負担軽減を両立

6枚刃システムは肌への負担軽減も可能にしました。内刃と外刃を一体化し、それぞれの刃が肌の複雑な凹凸に合わせて上下に大きく浮き沈みする「新密着フロート刃機構」を新たに採用。5枚刃から刃が1枚増え、肌に接触する面積が広がったことにより肌接触圧力が分散し、肌にかかる負担を約10%低減*できました。前後、左右、上下、前後のスライド、ツイストの5軸で可動して360°全方位にスイングする「密着5Dヘッド」は動きの配分を改良。今後のグローバル展開も視野に外国人の方が好むヘッドの固さをモニター調査から反映し、ヘッドスイング力のバランスを見直して肌追従性とヘッドがしっかり当たる感覚を両立させました。

*従来機種5枚刃モデル「ES-LV9FX」比較。当社調べ。

商品の画像

引き算のデザインで上質感を追求 世界が認めた「クラフトブラック」の世界観

ラムダッシュの性能進化を象徴し、購入者の所有欲をくすぐるような男性美容器具のかたちとは――。国内外の男性美容有識者とヒアリングを重ね、たどり着いたのは上質感を最大限に表現する新色「クラフトブラック」の開発でした。あえて色展開を設けずにラインアップ3機種全てを質感のある黒一色で統一し、使用感の向上にはこれまで以上に工夫を凝らしました。グリップ部に設けた「LEDインターフェース」は、手に取ると反応してLEDが浮かび上がり電池残量など必要な情報を直感的に確認でき、シンプルで上質な雰囲気を醸します。

また、USB充電コネクタが一体となった持ち運び用ケースを新たに採用。モバイルバッテリーなどから手軽に充電が可能となり、出張時などの携帯がより便利になりました。ケースカバーは上質感のあるファブリックを採用しました。素材一つにまでこだわり抜かれたラムダッシュの意匠は「世界三大デザイン賞」と称される「iFデザイン賞」「レッドドット・デザイン賞」をダブル受賞。世界中の名だたる商品の中から認められたという誇り高き実績。進化を続けるラムダッシュの存在感を世界に強く知らしめました。

ケースに入った商品

誇るべき開製販「五設一体」のものづくり

小森 俊介 [技術開発]

棚に並ぶ複数の商品と小森さん

今回の6枚刃システムは従来モデルから大幅な仕様変更を試みており、過去に蓄積してきた技術では応用できない課題に何度も直面しました。経験だけに頼ると技術者自身も成長できない。いくつ商品を作っても常に新たな学びや発見があると感じました。私たちが働く彦根工場は国産シェーバー第1号機発祥の地です。フルモデルチェンジの計画段階から、設計部門をはじめ、製造、企画、デザイン、マーケティング、営業のメンバーと連携を図りながら、当工場の強みである「五設一体」でスピーディーかつ合理的なものづくりを結実できたからこそ。今回紹介されたメンバー以外にも、関係の多くの方々から多大な協力をいただきました。私自身はこの仕事に関わった皆さんで受賞した社長賞だと誇りに思っています。

転機はリニアモーター 技術を磨きさらなる高みへ

清水 宏明 [技術開発]

笑顔で話す清水さん

私のターニングポイントはラムダッシュに搭載されているリニアモーターの性能向上技術の開発でした。従来と同じエネルギーで二つのリニアモーターを同時に駆動させるという難題ではありましたが、普段から理論・解析・実機評価といった技術スキルを磨いてきたおかげで解決に導くことができました。リニアモーターは電動歯ブラシなどにも搭載されており、用途は違っても根っこの技術は重なる部分は多く、参考になるヒントも少なくありません。パナソニックの強みは部門の枠を超えて技術を共有できるオープンな場が設けられ、切磋琢磨できること。単一商材だけ開発しても新たなアイデアは生まれにくいですから、総合技術シンポジウムをはじめ、他部門の技術を把握できる機会を積極的に活用し、今後のシェーバー開発に生かしていきたいです。

見る、見る、作る 誰よりもヒゲ、肌を観察

大倉 翔貴 [商品設計]

笑顔で話す大倉さん

顔の形状や、ヒゲの濃さ、肌の敏感さなどは人それぞれ。あらゆる要素を最大限まで技術に合わせこむために大切にしてきたのがモニター調査でした。実は私自身はヒゲが薄く、シェーバーを使う頻度が少ない方。実際の使用感を把握しづらい分、海外まで出向き外国人の方に協力を呼びかけ使用感を聞き取りました。ヒゲの種類や生え方でどのように剃り具合が変わるのか、その場でじっくり観察しさらに動画を何度も見直しては試作品を調整するという繰り返し。当工場にはモニターに協力的な方が多く、ヒゲや肌を徹底して俯瞰で観察したことで多くのデータを設計に落とし込むことができ、商品力を高められたのだと感じます。

窮地を救った品質確認技術 金色加工と形状を安定

澤 勇一 [製造技術]

同僚と笑顔で話す澤さん

アゴ下トリマー刃の開発はパターン設計から最適な金型を作成し、狙った形状を製造できるところまで進行していたのですが、より高級感を演出し、商品価値を高めるため金色に着色しようという提案が出ました。ところがこれが一筋縄ではいかない。協力会社に加工を委託したのですが、コーティング時の加熱により元の形状が変形してしまい、組み立て時に不具合が発生しました。「現場現物」が鉄則ではありますが、コロナ禍のため現地に出向いて原因を調べることがかなわない。窮地を切り抜けられたのは、納品前後に形状をチェックする品質確認装置の存在でした。良品のみを選別し、形状データを蓄積し、生産と改善の両方をうまく推進できたと思います。このような場面も想定し準備した装置、今回ほど品質安定に貢献したことはありません。

ピンチをチャンスに 土壇場で転換した商品訴求

池田 建太 [商品企画]

テーブルで席につき話す池田さん

販売直前、コロナ禍に突入し商品訴求の戦略を練り直す必要に迫られました。外出規制により店頭購入の機会が減り、衛生面のリスクを考慮するとお客さまに実機で剃り体験もしていただけない。実際に剃らずとも商品価値を伝えるには......。開発メンバーと知恵を絞った結果、「ラムダッシュなら新しい生活様式で2、3日伸ばしたヒゲでもきれいに剃り上げる」という切り口にたどり着き、コロナ禍を逆手に取った商品訴求に昇華しました。企画アイデアから販売戦略までかじを取る商品企画という立場上、商品は最後まで見届けるのが信条。私が所属する部門は立場に関係なく意見をぶつけ合え、いざというときに知恵を出し合えます。今回のような土壇場でのピンチも衆知を集めればチャンスに変えられる。パナソニックで働く原点を改めて実感できました。

性能向上を明快に表現 突き詰めたワンフレーズ

内田 聡 [技術開発]

笑顔で話す内田さん

6枚刃の性能向上を簡潔に分かりやすく伝えるため、どのようにワンフレーズで表現するかを提案することが私のミッションでした。シミュレーション技術と実機による性能評価を行いながら、お客さまが共感できるようなアピールポイントを何度も模索。「長いくせヒゲのカット率を4倍向上」という答えにたどり着いたときは、求められていたものにパズルのピースがぴったりとはまったような手応えを感じました。この体験からシミュレーション技術の重要性を感じ、関連する解析の専門部門を巻き込んで、さらに高度なシミュレーションモデルの構築にチャレンジしています。能動的に仕事をやり切り、その積み重ねがやりがいや成長につながる。そういった点からパナソニックは一歩踏み出せば、技術の幅を自由に広げられ、自分自身の意志次第でいくらでも仕事を楽しめる場所だと感じます。私も探求心を持ち続け、新しい世界をどこまでも広げていきます。

「上を向いて歩こう」顧客体感価値の最大化で逆風を突く

山本 健司 [国内マーケティング]

展示場で商品を手に笑顔で話す山本さん

コロナ禍による総需要逆風の最中にマーケティングを任されましたが、10年ぶりのフラッグシップモデルで国内高価格帯シェア1位奪還すると奮起し、市場導入マーケティングコンセプトを練り上げました。今回私が重要視したのは機能価値を顧客が体感できるベネフィットに転換すること。長いくせヒゲの剃り性能向上と在宅勤務などでヒゲを剃る頻度の減少という事実を結び付け、WITHコロナ時代に最適なニューノーマルシェーバーというコンセプトを打ち出し、「上を向いて歩こう」と題した動画を発信しました。コロナ禍でもヒット商品を世に送り出し、市場を大きく動かせた経験は財産です。時代の一歩先まで読むのがマーケターの真骨頂。男性美容の潜在的なニーズを掘り起こし、新たなシェーバー文化を創りたいです。

実証実験で他社を圧倒 黒一色の信念を貫く

石倉 幹泰 [デザイン]

商品を机上に並べ、笑顔で話す石倉さん

フラッグシップモデルの象徴として表現した「クラフトブラック」の世界観は、前例のない提案だけに事業部内からはためらう声も一部上がりました。ならばと、実際の店舗を再現して他社商品と並べて展示し、100人のお客さまから意見を伺う実証実験を実施。色展開をしている他社商品よりもラムダッシュが高く評価され、「これならいける」と信念を貫きました。海外有数のデザイン賞を受賞し、機能性はもちろん、意匠を世界レベルまで高められことにデザイナーとして大きな喜びを感じています。アイデアが生まれるのは、お客さまが使っている姿をリアルに想像している時。その語りに耳を傾けて寄り添い、何が感動体験につながるのか、これからも問い続けていきたいです。

製品名 ラムダッシュ6枚刃 ES-LSシリーズ
担当 パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社 ビューティ・パーソナルケア事業部

*所属・内容等は取材当時(2022年12月)のものです。

パナソニックの
#はたらくってなんだろう 一覧へ