パナソニックの#はたらくってなんだろう
豊富な経験と人脈を生かす、練達の技術インテグレーター

パナソニックグループを見渡しても2人しかいないインテグレーター、その1人が片岡秀直さんです。ものづくりをトータルで見渡し、各事業会社のお困りごとに対して各専門分野に秀でた技術者を招集しソリューションを提案、解決に導く手腕に事業部門からの信頼も厚い。「人と技術をマッチングさせて、事業を成功に導くのがやりがい」と言う片岡さんは、これまでの会社生活で培った知識や経験、人的ネットワークをフル活用して課題解決に心血を注ぎます。そんな片岡さんに技術者としての働き方について伺いました。
プロフィール
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片岡 秀直
パナソニック ホールディングス株式会社 技術部門
マニュファクチャリングイノベーション本部 マニュファクチャリングソリューションセンター 開発企画部大学の機械工学科でプラズマを用いた微細加工について学ぶ。パナソニックに入社後、デジタルカメラや光ディスクなどに使用されるレンズ製造技術の開発や事業化を担当。1997年~2001年は富士電機株式会社に出向し、ハードディスクのメディア製造技術を共同開発。その後、1年間のパナソニックのボストンにある研究所でレーザー設備開発を経験する。マニュファクチャリングイノベーション本部(以降、MI本部)に異動し2008年~2017年、機械や成形、薄膜、レーザー、実装、環境技術など多岐にわたる分野で、全社横断的なソリューション・要素技術の開発を担う。2018年から技術インテグレーションを担当し、2022年度からプリンシパルインテグレーターに任命。
目次
Mind_01 知と技を束ねる
現在の仕事を教えてください。
パナソニックグループの各事業会社が抱えるお困りごとを拾い集めて、課題を分析して、その解決手段(ソリューション、要素技術)を開発すること――。また、その活動を通じて、マニュファクチャリングイノベーション本部(以降、MI本部)全体の製造技術の進化を図ることが私の担当領域です。歩留まりが悪い、加工精度が低い、あるいは新しい商品のための製造設備をつくりたい、そうした製造上の諸課題に対して、MI本部が行う技術インテグレーションは目の前の課題解決にとどまりません。事業会社と3~5年先の中長期的な商品ロードマップを共有し、商品の進化を見越した上で、本部が持っている技術や知識をうまくマッチングさせたソリューション提案に主眼を置いています。
一つの技術だけでお困りごとを解決するには限界があるので、材料や生産プロセス、IT、設備といった多くの専門家の連携が必要です。事例によって異なりますが、事業会社から上がってきた要望や課題に対して、その商品、ものづくり分野に詳しい技術者で課題の分析・検討を経て、開発目標を設定し、解決するための方法(ソリューション)を構想、設計。そこから必要なスキルを持った人材を集めてチームを作ります。私が主として担当しているのは課題のひもときと体制の構築、人材のマッチング、予算立て、そして解決までのスキーム作りです。ある程度、軌道に乗れば若手にプロジェクトリーダーをバトンタッチしています。
インテグレーターの仕事の難しさはどこにあるでしょうか。
中長期的な商品進化の視点および工場・ものづくり全体を俯瞰した活動でなければ、仮に目の前の課題を解決できたとしても、商品力、ものづくり力の強化につながらず、事業会社の収益につながりません。インテグレーションは、事業部門からの要望に対して丹念に分析を重ね、課題設定を行う必要があります。実際に現場を訪れて分析してみると、問題が発生した工程だけで解決できないと判明する場面も少なくありません。
目の前の問題にフォーカスすることから始まり、生産プロセス全体を俯瞰して将来的に発生するであろう問題や潜在的なリスクについても漏らさず分析して、包括したソリューションを提案するように心掛けています。そのためには製造現場だけでなく、商品設計の担当者も交えてディスカッションを重ねる必要があります。商品のロードマップを共有してもらい商品が進化していくステップが分かれば、発展段階で顕在化しそうな問題を先回りして発見し、予防策を提示することもできます。現在だけでなく、その前後にも注目すべき点があります。
自身の強みはどこにあると考えていますか。
これまでグループ内をいろいろ渡り歩いてきた経験、人とのつながりだと自分では考えています。材料や薄膜、機械、実装、レーザー加工、環境技術など異なる技術に触れてきたので、どこに行けばどんな技術と知識が得られるか、どんな人がいるのか、引き出しは多いと思っています。一つの技術に特化するのではなく、広いジャンルの知識を有している点が、インテグレーションの仕事に役立っていると感じます。
これまでで、「ここには苦労した」という経験を教えてください。
入社してすぐ、自分が開発した技術を量産現場に導入したら、これが全然うまくいかなくて現場の方にかなり迷惑を掛け、厳しく叱られたことがありました。自分だけではどうにもならないと、現場の方をはじめとして方々から知恵を借りました。商品の作り方を変えるだけでなく、設計段階から手を加えるなど上流から下流まで改善して、なんとか解決に至りました。周囲の助けを得る、工程全体を見渡す、今につながる大事なことを最初に学んだ経験だったように思います。
Mind_02 技術と人間性を反映したチーム
専門職系として新設された高度専門職、その魅力ややりがいは?
プリンシパルインテグレーターに任命され、これまで以上にインテグレーションをどんどんやっていかねばと気持ちが引き締まる想いです。また、後進を育成してほしいという会社からの期待も大きいと感じています。技術者はどうしても自分の専門分野を突き進み、深めてしまうのですが、インテグレーターに必要なのは、さまざまな分野の技術への知識と理解。一方で、自分の仕事を抱えたまま、専門外の知識を高めるのは難しい。だからこそ、プロジェクトを通じて、各部門から若手の技術者にどんどん入ってもらい、相互に連携することで技術の幅を広げる。プロジェクトが軌道に乗ればかじ取りを後輩に譲って、OJT的にインテグレーターとしての経験を積んでもらっています。
チームビルディングで意識することはありますか?
社内全体を見渡すと、経験豊富で有能な技術者とそこから生まれた確かな技術があります。まず考えるのは、誰なら今抱えている課題を解決に導く知識と能力を持っているのか。またパーソナリティーも考慮に入れます。研究開発に秀でた人、現場経験が豊富で実用化に秀でた人、中には能力は非常に高いけど、これまで、機会に恵まれずいろいろと苦労をしてきた人もいる。プロジェクトで活躍してくれるか、経験を積んで自信をつけてくれるか。技術力ももちろん大切ですが、各技術者のキャラクターも見定めながら適材適所、マッチングしてチームを作っていくのが、インテグレーターの楽しみであり、やりがいでもあります。
1人の技術者として、大切にしてきた信念やモットーは?
現場現物へのこだわりが一番だと思います。開発目標が現場のニーズ、課題からずれていると自己満足な開発になってしまいます。上がってきた要望に対して「本当に困っているのはどこですか」「本質はそこですか」と現場を俯瞰、深堀して、開発目標を定めるのが一番大切なんです。また、最終的に現場にどのように落とし込んでいくのか、量産の姿をしっかり考えてソリューションを設計していく必要があります。そして、お客さまが求める要望に対して、われわれの提案する出口があっているのか常に検証を繰り返します。マッチしていなければ、もう一度最初から修正することを恐れないこと。この課題設定、課題検討の役割に自分は一番力を入れています。
To the Next
次世代の「何でも屋」の育成を
若い人たちが、どんどんと次代の新たな技術を取り込み、課題にチャレンジし、成長していく姿を見るにつけ、専門性の高いことは他の人に任せながら、人と技術、工場をつなげるサポーターとしての役割に徹することが自分の役割だと思っています。また、お困りごとを解決して、喜んでもらえる瞬間は、大きな達成感があります。
製造上の諸課題は一つの技術では解決できないことが多いので、製造現場全体を俯瞰して、技術を束ねて解決策を提案する人材は今後も必ず必要になってきます。私のような「何でも屋」も楽しい職務なのだとを実感してもらえるように、ノウハウを共有して、若手インテグレーターの育成に尽力したいです。
*所属・内容等は取材当時のものです。