パナソニックの#はたらくってなんだろう

学生限定イベント「HOPE Day」特別セッション ~ミッションから探るHOPEな企業とは~

会場の様子

パナソニック株式会社は、2019年12月22日(日)に東京・日の出の複合施設TABLOIDで開催された学生向けイベント「HOPE Day」(主催:株式会社ニューズピックス)に協賛。「ミッションから探るHOPEな企業とは」がテーマのディスカッションに採用ブランディング担当の杉山がパネリストの一人として登壇し、これから社会に羽ばたいていく現役大学生に向けたトークセッションを展開しました。(モデレーター:正能 茉優)

プロフィール

  • パネリスト
    宇田川 元一(うだがわ・もとかず)

    経営学者/埼玉大学経済経営系大学院 准教授

    1977年、東京生まれ。2000年、立教大学経済学部卒業。2016年より埼玉大学大学院人文社会科学研究科(通称:経済経営系大学院)准教授。人文系の理論を基盤にしながら、組織における対話やナラティヴとイントラプレナー(社内起業家)、戦略開発との関係についての研究を行っている。著書に『他者と働く――「わかりあえなさ」から始める組織論』(NewsPicksパブリッシング)がある。

    宇田川 元一さんのプロフィール写真
  • パネリスト
    杉山 秀樹(すぎやま・ひでき)

    パナソニック株式会社 採用ブランディング・PeopleAnalytics課 課長

    慶應義塾大学(SFC)卒業。ITベンチャーでマーケティング・広報・IR・経営企画を経てHRチームを立ち上げ、採用・組織戦略・ブランディングをリード。その後、メガベンチャーでHRを立ち上げ、HR/PRを統括。子どもが生まれたことを契機にパナソニックに入社し現職。

    杉山 秀樹さんのプロフィール写真

そもそも"ミッション"とは何か?

就活におけるキーワードのひとつとして定着した"ミッション"という言葉。個人が目指すミッションと企業が掲げるミッションが一致しているほど良いマッチングになると言われているけれど、そもそもミッションって何だろう...?そんな素朴な疑問から、1時間のセッションは幕を開けました。

トーク中の写真

まず、"ミッション"というものについて教えてください

宇田川:企業における"ミッション"は、その会社の存在意義や存在理由を意味しています。日本語に訳すと"使命"にも似ていると言われていますね。"使命"ってよく考えるとすごい言葉で、"命をどう使うのか"という意味。会社をひとつの人格として考えたときに、自分たちの活動は何のためにやっているのかという企業の指針を定めるのが"ミッション"です

よく言われるミッション、ビジョン、バリューというものは、基本的には、世の中のどの企業も持っているものなのですか?

宇田川:数人で立ち上げたスタートアップとか、小さい事業体だとない場合もありますけど、大きい会社はだいたい定めてますよね

杉山:パナソニックには"A Better Life, A Better World"というブランドスローガンがあります。これには、一人ひとりのくらしを見つめて、より良いくらし、より良い未来の社会をつくっていくという想いが込められています。原型となっているのはもっと堅い言葉なのですが、日々の中でもよく使われているという印象です

具体的には、どういうときに使われているのですか?

杉山:採用でいうと、この会社はどこを目指しているのかという説明の場面では必ず使いますし、社員にインタビューをする機会も多くあるので、そのときに『今やっていることは、どう"A Better Life, A Better World"につながっていくのですか』というような質問をすることもあります

なるほど。私は毎日働くのが楽しいですし、自分の仕事の内容にも満足してますけど、正直なところ、ビジョンとかミッションってすごく遠い存在というか、普段そんなに気にしない存在になってしまっているんですよね。まず、企業目線で考えたときに、ミッションって何だと思いますか?

宇田川:お金を稼ぐということを個人で考えると、衣食住をちゃんと満たして、自分の好きなものを買って...ということになりますが、それにも"何のために"という理由がありますよね。企業も同じで、企業の本筋は利益を上げる活動ですが、じゃあ、何のために利益を上げるのか。そこがはっきりしないと、働いている人も何を頑張ったらいいのかよくわからなくなってしまう。

みんなの努力の方向がバラバラになると、そのぶんムダも大きくなる。だから、方向性をまずちゃんとそろえましょうというのが、ミッションをつくる目的だと思います

"どういう方向性で頑張るのか"が見えていた方が、働く人たちも仕事がやりやすいということですか?

宇田川:そうですね。ガチガチのマイクロマネージメントではなく、もう少し広い括りで努力の方向性を決めておくのは、会社にとって大事なことだと思います

一方で、企業を選ぶときに、その努力の方向性が個人と合わないこともあると思うのですが...

杉山:もちろんあると思います。企業側が目指しているミッションや方向性に対して、違うなと思ったら選ばない方がいい。ミッションの話って、実は企業と個人の相対的な関係性で語るべきものだと思うんですよ。

これまでの時代は、個人がミッションを軸に会社を選ぶという環境になかった。それが、時代が変わっていく中で、ミッションが会社を見る上での選択肢になってきている。なぜそうなってきたかというと、仕事に熱中すること、夢中になることが、核になる時代になってきたからだ思うんです。

夢中になるためにはどういう選び方をしたらいいのかと考えたときに、給料や福利厚生といったものだけでなく、ミッションも大事になってくるのかなって

ミッションを軸に企業を選ぶというのは何となく理解できました。一方で、個人が普通に生きる中でミッションを持つことってなかなか難しいと思うんです。ミッションの選び方って、企業から与えられたものに共感して、それを自分でミッション化していくという考え方でいいんですか?

宇田川:僕はそういう考え方にはあまり意味がない気がするんですね。日本にはたくさんのすごい起業家の人たちがいて、それはたしかに共感したり尊敬したりするかもしれない。でも、違う人間だし、同じように考えなければいけないなんてことはないと思うんです。多少ズレていても構わない。

僕の場合、自分は何が好きで、何が嫌いなのかが見えてきたのは、30代に入ってから。そう考えると、最初から会社のミッションと自分のミッションがぴったり合ってなくてもいい。ただ、これは嫌だなと思うところには行かない方がいいと僕は思います

企業が掲げる"ミッション"は本当なのか?

ミッションというものは、実際にどれくらい事業や普段の仕事の中に反映されているものなのですか?

杉山:僕は3年前にパナソニックに入社したので、客観的に見ている部分もあるんですけど、自分が入社前に想像していた以上に、やたらめったら"A Better Life, A Better World"など理念にまつわる言葉や"くらし"というキーワードが出てくるなという印象です。おそらく、1日に10回ぐらいは聞いていると思います

企画書や提案などにその言葉が出てくるということですか?

杉山:それもありますし、あとは社内のメッセージにも必ず出てきます。たぶん、誰も強制していないんですけど、誰かしらに何かを伝えようとしたときに、必ず"くらし"か"A Better Life, A Better World"というキーワードを絡めて説明しようとする。それによって、言葉と事業が自然と関連付けられているように感じます

ああ、なるほど。それはやっぱり、理念とか使命に絡んでいた方が、会社として実現する価値がある事業という風に判断しやすいからですか?

杉山:そこまで精緻に考えてるかどうかはわからないですけど、たぶん、ミッションって文化に近い話だと思うんですよ。ミッションを果たすために言語になっていて、それを使うことが無意識に刷り込まれている。文化って何かというと、言葉なんですね。意識しなくても、日常で使う言葉になっている。結果的にそれが会社のカルチャーとなり、ミッションにつながる事業行動になっていくのだと感じています

それぐらい自然なものだとすると、やっぱり、企業のミッションに共感できない、あるいは違和感を持ってしまった場合、そこで働くのは結構難しいような気がしますね

一緒に働く人たちと"ミッション"を共有できる?

学生と会話中の杉山さん

今後、ミッションというものに向き合っていく学生や若い世代は、ミッションを持つ会社で働くときに、どういう意識を持って向き合っていったら幸せに働くことができますか?

杉山:1日って、寝る時間を除くと結局1,000分しかないんですね。そのうちの半分を会社で過ごすと考えたとき、もし、その時間が避けたいものだったら、人生の半分を捨てているようなものじゃないですか。逆にその1,000分をいかに夢中になって過ごせるかを考えたときに、ミッションという軸があって、そこにピンとくるならいいと思いますし。あるいは、『ミッションなんて今はよくわからないけど、この人と一緒にやってるのが楽しいから、とりあえずここで夢中になってやってみよう』というのでも全然いいと思うんですよ

寝ている時間を除く人生の半分以上を仕事に費やしていると考えると、ミッションとか、方向性みたいなものに共感できるのは大事なのかなって思いますね。平たい言葉で言うと、たとえば自分の上司や一個上の先輩とかが、なんかいい感じのことを言っていい感じの方向性で働いている。『ここだったら嫌じゃないかも...』というのも、実はミッションのひとつの見え方っていうことですよね?

杉山:社会性という軸と、自立性という軸。どっちに転んでもいいという話なんですね。誰かが言ってる立派な話に共感すること(社会性)、自分自身のために何かこれをやりたいなと思うこと(自立性)。その両方が時間とともにちょっとずつちょっとずつ寄っていけば、結果的にいいんじゃないかなって

そうですよね。ミッションという言葉をすごく堅いことのように思ってましたけど、たしかに今ぐらいの話だったら考えられるかもしれない

宇田川:本来、ミッションというのは、個と組織という対立になってしまうものを乗り越えていくためにあるんじゃないかと思うんです。つまり、同じ土台に乗って頑張れるというところにたどり着くためにある。だから、たとえば自分に合わないから即辞めますっていうのは違うと思うんです。

その会社の事業があるということは、社会の中で役割があって、その役割を自分が果たすことが求められているわけですよね。自分だけの世界に閉じこもるためにミッションがあるわけじゃない。学生のみなさんは、そこのところを忘れないでほしいです

トーク中の宇田川さん

たとえば"A Better Life, A Better World"ってすごくいい言葉だし、違うとは思わないけど、じゃあ今日の自分の仕事にそれをどうリンクさせるの?と考えたときに、対立はしないまでも、やっぱりどうしても共感しきれない部分ってあると思うのですが...

杉山:極論になりますけど、動機って誰かから与えられるものじゃないですよね。"あなた、これやったら楽しいよ"って言われても楽しくなるわけじゃないし、心が感じて初めて楽しいって思うわけで。まずはがむしゃらにやってみて、そこと結びつくポイントを自分なりに考えてみたらいいのかなって思います

ミッションであれ何であれ、やってみなければわからないことって多いですよね。私が実際に会社員として働いていて思うのは、得意なこと、やってみたいことじゃなくても、案外、人に振られてやってみたら楽しいことってあるんです。受け身の形でまずはやってみて、それをがむしゃらにやって合ったらいいし、合わなかったらやめて、ほかにもっと合うものを見つける。そういうやり方だったらできるかもしれない

宇田川:みんなが最終的に天職みたいなものを持てたらいいなって思いませんか?そこにたどり着くのってすごく大変で、おかしいと思うことやムカつくこともいっぱいあるけど、そういう中でもがむしゃらにやっていくと、いつかたどり着けるのかなって気がします。僕にとっては研究がそうですね

ハピキラでは地方創生のお仕事をしてるんですけど、その中で『どうやってやりたいことを見つけるんですか?』って聞かれることがあるんです。今だったらドヤ顔で『地域のことがやりたいんです』って後出しジャンケンで言えるけど、最初からやりたかったのかって言われるとそうじゃなくて、結果として見つかっただけ。

使命も実はそれと同じで、『これが私の使命です』『この使命に自分は共感してます』って今は自信を持って言えなくても、その使命のもとで働いていく中で、なんか、案外これ気持ちいいぞと思えたときに、結果として『これが自分に合う使命だったんだ』って、後出しジャンケンで言えばいいんだなって、なんか、気が楽になりました

宇田川:ただ、それを"追い求める"ことはしないでほしいんですよ

そうですね。使命を探すことにしがみついちゃうと、それ自体が目標になって、元も子もなくなっちゃうので。まずは企業から与えられたミッションの中で、自分が嫌じゃないなって思えるものの中で働きながら、自分なりのミッションというものの輪郭が見つかればいいですね。私は社会人7年目ですけどまだ全然見えてないので、10年先とか20年先とか、あるいは30年経って、見つかったらいいなと思います(笑)

意思決定のときこそ、ミッションを考えるチャンス

トーク中の会場の様子

ミッションを持って生きていく、ミッションを持って働いていくために、私たち個人は何を意識したらいいのでしょうか?

宇田川:そうですね...会社の中の話ではないのですが、先日、アフガニスタンで亡くなられた中村哲医師はみなさんご存知ですよね。中村哲さんは、多くの方の命をアフガニスタンで救われましたが、最初から今のようなことをするためにあの地域に渡ったわけではないんですね。最初のきっかけは、もともと蝶が好きで、蝶の原種がいる地域だったので、赴任するのも悪くないなと思ったからだそうなのです。

最初から今のような志で行ったのではなく、たまたま何かのプログラムで最初はパキスタンに医師として派遣されて、行った先で病気だけでなく、干ばつで亡くなる人がたくさんいる現実を見て、そこから自分はこういう活動に目覚めたんだと。

そんな風に、自分が想像もしていなかったところからミッションの第一歩が示されることってあると思うんですよ。

あると思います。全然関係ない話ですけど、私、すごい数学がバカで、偏差値が24しかなかった時期があるんですよ

宇田川:すごいですね(笑)

(笑)。で、中学3年生のときに、すっごいイケメンの塾の先生に出会いまして。一目惚れして、塾に入ったんです。それで数学の偏差値が74まで上がって。そのとき、うちの母親が言ったのは『きっかけは何でもいい』(笑)。

ミッションとか、働くということも、どうしても広く捉えがちですけど、今のお話のように、まずは自分の心の琴線に触れることから入って行って、そのあと、結果として何かミッションが見つかることもあるだろうし。あと、"始める"こともそうですけど、そのあとの"判断する"とか"決断する""続ける"というのも難しいことですよね

宇田川:僕は"ピンチのときこそチャンス"と思っていて。たとえば、自分が思った通りに行かなかったときに、『あれ?今まで自分はこれを大事だと思ってきてたけど、なんか違ったのかな?』『そもそも自分はなんでこれを大事だと思ってたのかな?』って考えることってあると思うんですね。

僕の親しい友人に、大手企業に勤める社内起業家みたいな人がいるんですけど、彼がそういう方向で頑張っていこうって思ったのは、すごく大きな病気をしたことがきっかけだったんですよ。僕の知る限り、会社の中で何か新しいこと、大事なことを頑張ってやっていこうとしている人って、結構な比率で大病を患ったり、大失敗をして会社に干されたりとか、そういう大きな出来事があった人が多いんです

意思決定のタイミングだったり、何かを考えざるを得ない状況のとき、自分の選び方の指針になるものがミッションなのかもしれないですね

杉山:僕が今日いちばん伝えたかったのは、ミッションを軸に考えることが大事だということと、一方でミッションそのものについては大層に考えなくていいよ、ということ。それが伝わる時間だったら良かったなと思います。

大きな会社の一員として言えることがあれば、もし、自分が成したいことと、会社のミッションが合致していると思える部分があるのならば、会社が大きければ大きいほど、自分がやりたいことに向き合っていけるチャンスがあるということ。そういう働き方も結構面白いよ、というのは最後にお伝えしておきたいです

これまでミッションについてあまり考えたことがなかったのですが、今日、みなさんと一緒にいろいろ考えてみることができて良かったです。"努力の方向性"という言葉もすごく印象に残っていて、同じがむしゃらにやるのでも、こっちの方向性で頑張りたいなっていうのは何となく持っていた方が生きやすいし、意思決定もしやすい。

実はミッションを持った方が、楽しく、気持ちも軽めに生きていけるんじゃないかなって、そんなことを思った1時間でした


企業のミッションと、自分にとってのミッション。社会に出る前の学生が「自分のミッションがわからない」のは、ある意味、当然のことかもしれません。ミッションは追い求めるものではなく、少しでも興味が惹かれることをがむしゃらに頑張っていく中で、自ずと見えてくるもの。「堅苦しく考えなくても大丈夫」という言葉に、気持ちが軽くなった方も多かったのではないでしょうか。

*記事の内容は取材当時のものです。

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