パナソニックの#はたらくってなんだろう
オフィス空間から電源供給を変革「どこでも電気が取れる世界を目指す」~ライフバッテリー イーブロック、イーブロックデスク、イーブロックスタンド~

パナソニックグループにおいて革新的な商品・サービスに対して社内表彰を行う「パナソニック商品表彰」。Cross-Value Innovation(CV)賞は、従来の枠組みを超え、パナソニックグループ内と、社外の異なる強みの掛け合わせで、顧客価値を最大化するとともにイノベーションを起こすことが期待される商品に授与されます。今回選出された「イーブロック」は、バッテリーと充放電器をセパレート型にすることで、バッテリー部分だけを持ち運べる可搬型バッテリーです。コンセントの差込口がないところでも充放電器を設置すれば、バッテリーを交換し続けることで長時間電気を使い続けられる、新たな電源の仕組みになっており、配線フリーの新しい空間設計を実現する次世代型バッテリーです。定置型のバッテリーとも、低容量のモバイルバッテリーとも異なる、全く新しい電源システムを提案するイーブロックは、電源の取り方を革新し、オフィスから住居まで、空間設計そのものを刷新する可能性を秘めた製品です。
目次
配線フリーの空間。電源をもっと自由に、快適に。
「イーブロック」は、蓄電池と充放電器が分離した可搬型の電源システムで、設置場所が固定される定置用蓄電システムとは異なり、バッテリーを取り外して持ち運び、交換しながら使います。これまでのポータブル電源は電池残量がなくなれば、コンセントがある場所まで電源装置ごと持ち運び、充電する必要がありましたが、イーブロックは複数のバッテリーを充電しておけば、差し替えるだけで継続して電気を供給できます。
バッテリーの蓄電容量は304 Whでスマートフォンなら約25台分の充電が可能、重量は約3kgと小型・軽量で持ち運びしやすいのが特長です。イーブロック本体にはUSB出力端子を搭載し、スマートフォンなどの充電が可能です。さらにACコンセントの差込口を備えた充放電器「イーブロックスタンド」「イーブロックデスク」を組み合わせれば、AC100 Vの機器へ給電し、シーンに合わせて最適な使い方が可能になっています。
コンセントがない場所では仕事ができない、フリーアドレススペースを確保するために改築しようと考えても建物が古すぎてOAフロアを設置できない----。イーブロックは配線に縛られた空間設計から解放し、配線工事が難しい場所でも簡単に電源を提供します。さらに追加設備不要で停電時の電源にもなるため、防災用電源として企業の事業継続計画にも役立ちます。
空間になじむユニバーサルなデザイン。非常時でも扱いやすいサイズ設計。
これまではどちらかといえば武骨なデザインが多かったポータブル電源機器。イーブロックは、オフィスや家庭、避難所などさまざまなシーンで、誰でも使いやすいバッテリーを目指し、デザインされました。持ち運びやすさを重視し、500mlペットボトル大にサイズを抑えるため、あえてACコンセントはイーブロック本体ではなく充放電器側に搭載させて、小型化を実現しています。これは災害時応急受水用袋に水を入れた状態と同様の重さで、停電時に子どもでも持ち運べる重量を目安にしています。カラーは中間色のウォームグレーを採用し、持ち手を箱型の中に収めて出っ張りを無くしたデザインは、空間になじみ、場所やシーンを選びません。
業界で唯一「Sマーク」認証取得。長く使っていただける高い安全設計。
容量の大きなバッテリーを持ち運んで使用するには、安全性の確保が必要不可欠です。繰り返し抜き差ししても安全性を損なわない堅牢な充放電端子を国内コネクタメーカー大手と共同開発。内蔵する蓄電池も社外メーカーとタッグを組み、モジュールを設計しています。
イーブロックはシステム全体で安心して使用してもらうために、イーブロックバッテリー本体と充放電器の組み合わせで、電気製品の安全のための第三者認証制度である「Sマーク※1」認証を取得しています。これまで定置用蓄電設備に適用されてきたSマークを、イーブロックは可搬型バッテリーとして業界で初めて取得しました。※2
※1 Sマーク:電気用品安全法を補完し、電気製品のより安心安全のための第三者認証制度。Sマーク付電気製品は、第三者認証機関によって製品試験および工場の品質管理の調査が行われている証となる。
※2 2021年3月時点当社調べ
充電状況やバッテリーの劣化度合い、異常動作を知らせるアプリ連携の仕組みも取り入れています。リアルタイムで状態が確認でき、異常があればバッテリーだけ交換すればよいというメンテナンスのしやすさも特長です。普段の業務や生活の中でイーブロックを使用し、停電が発生すればすぐに使用できる状態がいつも保たれます。また、2022年9月に発売した専用充電器のイーブロックステーションを導入いただければ、突然の停電時に部屋の明かりが消えた場合でも、使用可能なイーブロックがランプで点灯され、すぐに電源として使用でき、防災用途としての使いやすさも追究しています。
「震災の記憶」から生まれた構想。オフィスの在り方を変えたい。
[商品企画] 安藤 聖師
発想の根底にあるのは「震災の記憶」です。東日本大震災を経験し、世の中の「電源」の考え方が変わりました。避難所などで電気をシェアする、みんなで使えるような電源として可搬型バッテリーの構想がスタートしたのです。コロナ禍でリモートワークが普及した2020年から、「配線レスの電源」というコンセプトが社会のニーズと合致すると判断。一気に商品化が具体化し、詳細な仕様、法規面での取り扱いなどを決めて、安全性を再検証し、構想から約10年で誕生しました。その10年間で権利化された特許は45件*、現在申請中の特許は35件*と、圧倒的な知財群を確立して、他社への参入障壁となっています。
*2022年3月時点
われわれが開発したイーブロックは、従来の電源に縛られた生活の在り方も革新するものだと考えています。「単0電池」とでも呼んでいただけるようなインフラとしてイーブロックを普及させて、オフィス、住宅、商業施設に加えて将来的にはモビリティやロボットなどさまざまな分野で使ってもらいたいと思っています。
イーブロックの企画を通じてさまざまな方と関わらせていただきました。社内・社外を問わず幅広く共創関係を構築し、新たな価値を生み出していけることがパナソニックの強みだと思っています。そこには一筋縄でいかない苦労もありますが、今後もいろいろな方を巻き込みながら新たな価値を生み出し、社会で役立つ製品・サービスを提供していきたいです。
プロトタイプで使いやすさと機能性を追求。企画からプロモーションまでのデザインを担う。
[デザイン] 笹田 基弘
イーブロックが商品化に向けて動き出す前から、プロトタイプを作り使いやすさと機能性から仕様検討を続けていました。世の中にない新たな商品なので、プロトタイプを作って可搬型バッテリーが広く商品として成立することの具現化と実証することもデザイナーの大きな役目でした。私もさまざまな事業部内や外部のメンバーと連携しながら、企画提案から展示会のデザインまで関わりました。
今、デザイン戦略の必要性が重視される中で、単に商品の最終段階を担うだけでなく、商品のコンセプトイメージ、商品企画、工学的な面も含めた設計、プロモーションに至るまで、プロジェクト全体にデザインは関わってきます。プロジェクトのビジョンをビジュアルで提示して、共通言語として皆が理解できるように進めていくのが、デザイナーの役割だと思っています。
現在も継続してイーブロックを搭載できる機器を検討しています。できないと思ったことでも試行錯誤しながら考えてやってみて実際動作する物ができると感動しますし、自分の仕事でチームメンバーのモチベーションが上がると本当にうれしいです。自由に挑戦できるメーカーならではのデザイナーの醍醐味を楽しみながら、今後イーブロックが色んな場面で使われ、色んな人の生活の必需品になるように創造していきたいです。
バッテリーと充放電器のソフト連携に注力。一生懸命さが加速させた開発。
[ソフト開発]阿部 孝義
「ハードはでき上がっているが、動作がうまくいかない」、そんな場面で私に声が掛かりました。イーブロック本体と充放電器のソフトウエアの連携がうまくいっていないと分かり、それぞれの開発を担当する2社と調整を開始しました。我々からの一方的な要求だけでは良いモノはできないと考え、コミュニケーションを重視し、双方が納得する形でソフトウエア開発を進めました。ソフトウエアの実機を使った評価でも、組織の垣根を超えていろいろな人に助けてもらい実現することができました。
誰かが一生懸命やっていると、チーム全体にその熱意が伝播し、皆が奮起し、「攻め」の姿勢になって、私も一生懸命を心掛けました。良いチームで仕事ができました。
商品開発はチームプレーであり、しっかりと自分の役割を果たし、他のメンバーに感謝の気持ちを持つことが大切と考えています。賞を頂けるような商品に出会えたことにも感謝し、今後も、イーブロックがさまざまな分野で使ってもらえるよう商品開発に頑張っていきたいです。
パナソニック品質実現とSマーク認証取得の両立に尽力。海を越え、ともに困難を乗り越えた開発。
[回路開発] 豊永 智彦
バッテリーと充放電器がセパレート型であるイーブロックは、社内的にも、業界的にも新規性が高く、高い安全・品質水準が必要となりました。そのため、電気用品安全法(電安法)の適合性確認や各種社内試験に加えて、Sマーク認証も必須要件でした。前例がないが故に、各方面への製品仕様、適用技術基準、設計事項の度重なる説明や技術相談が必要になるなど、新ジャンルならではの苦労がありました。
試作段階では熱やEMCの課題も発生しましたが、海外のODM開発委託先からの提案だけでなく、われわれもかなり具体的な対策案を提示し、解決に導くことができました。熱やEMCのような重要な評価は、両社で実施し結果の再現性を確認するところまでやりました。
強い熱意と確かな根拠をもって「必ず成功させる」と臨めば、相手にそれが伝わり、応えていただけます。検証を早めるために試験を両社で分担して海外と日本で同時並行して行うなど、スピード感をもって開発し、非常に高い壁となっていた安全・品質水準をクリアできました。
商品開発においては、性能満足はもちろんのこと、社内品質基準、電安法、各種認証など順守すべき事項がさまざま存在します。特に新商品開発時は新たな規格への設計対応が必要になることがほとんどですが、チームや関係者の知見を集めれば必ず乗りこえられると考えています。今後もパワーエレクトロニクス技術を磨き、イーブロックを含めたパワーエレクトロニクス商品で社会の困りごとを解決していきたいです。
*所属・内容等は取材当時のものです。