2021年10月に、パナソニックグループ内の電池関連事業を統合し発足したエナジー社。2022年4月の持株会社制移行後は、新会社「パナソニック エナジー株式会社」として独立し、新たなスタートを切ることとなっています。モビリティの電動化のキーデバイスであり、持続可能な環境の実現にも重要な役割を担う「電池」のグローバル企業として、同社は今後どのように事業を推進し、進化していくのか。副社長の渡邊庄一郎氏に話を聞きました。
2022年03月
プロフィール
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渡邊 庄一郎
パナソニック エナジー株式会社 副社長
「人類の幸せの追求」と「サステナブルな社会」の両立に挑戦する
──まずはエナジー社の発足の背景について教えてください。
エナジー社は、2022年4月にパナソニックが持株会社制に移行するのを見据え、従来のカンパニー制でインダストリアルソリューションズ社やUS社のテスラエナジー事業部および本社部門に分散していた電池関連事業を統合する形で発足しました。持株会社制移行後は、「パナソニック エナジー株式会社」として独立します。
そもそも持株会社制移行の狙いとして、絞り込んだ事業領域において競争力を磨き上げる「専鋭化」があります。パナソニックは今や、家電メーカーのカテゴリーに収まりきらないさまざまな事業を抱えており、領域を絞ってそれぞれに最適な戦略をとって戦っていかなければ、この先勝ち続けることはできないと考えています。そのため各事業領域で事業会社として独立し、「自主責任経営」を徹底していくことになったのです。
エナジー社はこうした背景のもと発足しましたが、単に「電池」というつながりをもとに部署がくっつくだけでは、うまくいくはずがありません。乾電池事業を行っていた部署と、テスラ社向けの車載電池事業を行っていた部署とでは、戦略もオペレーションも全く違うわけです。
そのため、ただ部署が一体化するだけでなく、「一から会社をつくるならどんな会社にしたいか」を徹底して話し合うとともに、「何のために一緒にやるか」を考え抜き、ミッション・ビジョンに落とし込んでいくことからスタートしました。
──その結果、どういったミッション・ビジョンが生まれたのでしょうか。
Our Missionとして、「幸せの追求と持続可能な環境が矛盾なく調和した社会の実現。」、Our Visionとして「未来を変えるエナジーになる。」、そしてOur Willとして「人類として、やるしかない。」を掲げています。
まずはっきりさせたのは、「私たちはただ電池をつくって売るだけの会社ではない」ということです。「では私たちは何をする会社なのか?」「存在意義は何か?」と突き詰めていったところ、「エナジーによって社会課題を解決する」ことこそが私たちの実現したいことであり、なすべき役割だという考えに行き着きました。
そのうえで、とりわけ今、何に一番チャレンジしなくてはならないのかを考えました。私たちは今まで、「人類の幸福」という側面をとことん追求してきました。しかしここにきて、「環境」という側面についても考えざるを得なくなっています。そこで、「人類の幸せの追求」と「サステナブルな社会」の矛盾のない両立に、「エナジー」の観点から挑戦する会社になると自らを定義づけることによって、誰もが納得して一つの方向を目指していけると考え、これをミッションとしました。
「未来を変えるエナジーになる。」というビジョンには、「自分たちが未来を変える先頭を走る集団になる」という決意と、「自分たちがつくり出す商品としてのエナジーが未来を変えていく起爆剤になるんだ!」という熱意を込めています。そして「人類として、やるしかない」というWillは、このミッションを強い思いでやり遂げるという私たちの覚悟を示すものです。
エナジーの進化の速さに対応すべく、3事業部と「センター化」「統括本部化」した事業部横断開発組織へ
──エナジー社の組織体制についてお聞かせください。大きく3つの事業部があるそうですが、それぞれがどのような領域を担っていますか。
おっしゃるように、「エナジーデバイス事業部」「モビリティエナジー事業部」「エナジーソリューション事業部」の3つの事業部があります。
「エナジーデバイス事業部」は、おなじみの乾電池やリチウム一次電池、ニッケル水素電池の製造・販売を行う事業部です。日々の「くらし」を支える電池をつくってお届けするということに加えて、近年は気候変動の影響で自然災害が増えていることもあり、防災の観点からいざというときにお客様に安心・安全をお届けすることも事業の目的に掲げています。
「モビリティエナジー事業部」は、従来、テスラエナジー事業部という名称だった事業部で、EV(電気自動車)用の円筒形リチウムイオン電池の製造・販売を行っています。名称を変更したのは、「テスラ社向けの車載電池だけにとどまらない幅広い事業成長を目指す」という意図からです。もちろんテスラ社のEVを中心に製品を提供していくことに変わりはありませんが、近年、車のみならず、船・建設機械・飛行機などさまざまなモビリティに電動化の流れが押し寄せています。そうした移動の電動化を牽引する事業部を目指しています。
「エナジーソリューション事業部」は、リチウムイオン電池やそれを活用した電池パック・蓄電モジュールを扱う事業部です。リチウムイオン電池はもともと携帯電話やパソコンを中心に用いられていましたが、近年、自転車・バイクなどの駆動用電源や家庭用蓄電システム、さらには通信基地局やIT企業のデータセンターのバックアップ電源などへと用途が急拡大しています。モバイルを支えていた事業部から、社会システム・社会インフラへエネルギーソリューションを提供し、その成長を促す事業部へと転換しています。
──ほかにも、新たな組織体制として刷新したことはありますか。
新たな組織体制では、先ほど申し上げた3つの事業部と並列する形で、「研究開発センター」「セル開発統括本部」「システム開発統括本部」からなる技術部門を置き、3事業部全ての電池研究開発を「センター化」するとともに、リチウムイオン電池を扱う技術・生産技術部門とシステム開発を行う技術部門をそれぞれ「統括本部体制」で一元化したのも大きな特徴です。
「研究開発センター」では、10年、20年先を見越した基礎研究や競争力を生み出す電池の原型開発、プロセスの開発を行います。リチウムイオン電池そのものの中身とその生産システムをつくるのは「セル開発統括本部」。ここには化学材料のエンジニア、商品開発のエンジニア、商品を量産する設備を開発するエンジニアの全てが配置されます。「システム開発統括本部」は「セル開発統括本部」が開発したセルを使い、お客様の用途に合わせた制御やユニットを入れたシステム・パッケージを開発し、提供するのが役割です。
そのうえで、出来上がった電池を使って事業を行うのが3事業部。事業化する・しないの判断はもちろん、どう生産し、どう販売するか、どれくらいの投資をするかといったことは全て事業部が決定します。
──「センター化」「統括本部化」の目的や意義はどこにあるのでしょうか。
エナジーの進化の速さに対応していくのが最大の目的です。電池が使われる領域が広がるほど、その領域と領域の間に多くの隙間が生まれます。例えばバイクの電動化の場合、それをエナジーソリューション事業部とモビリティエナジー事業部のどちらが担当するか、さらにそのバイクが大型化したらどうするか、などということを議論して進めていたら、変化のスピードについていけず周回遅れになってしまいます。そうではなく、いったん全てを技術部門で受け止めることで、フレキシビリティーを上げて開発を加速することを目指します。
もう一つ、マインドセットの面でも狙いがあります。従来のような、「私は○○事業部のエンジニア」という意識では、その事業部以外の仕事は無関心になりがちです。それに対し、例えば、全ての電池開発を行うセル開発統括本部に属していると、自分の担当以外の話も自然と耳に入ってきて興味を持つようになります。縦割り的な思考を変える意味でも、「センター化」「統括本部化」は有効だと考えています。
車だけにとどまらず、あらゆるモビリティの電動化に注力
──競合他社にはないエナジー社の強みはどのようなところだと思いますか。
パナソニックは100年近くにわたって電池事業を手掛け、市場の拡大とともにパイオニアとして最前線を走り続けてきました。車載電池というカテゴリーだけとっても、世の中を大きく変えるブレークスルーに関わり続けてきたと自負しています。
そうした長い歴史のなかで、私たちは、高いレベルの研究開発を継続的に行うコアな組織体と、エナジーの将来を見据える先見の明を養ってきました。それこそがエナジー社の特色だと考えます。
現在、私たちはテスラ社向けに、年間数十億セルもの車載用リチウムイオン電池を出荷しています。それだけのボリュームを、大きな問題を起こさずに生産するには相当な技術力やスキルが求められます。こうした技術力やスキルは、パナソニックがこれまで長年かけて、時には大きな失敗をしながら蓄積してきたものであり、近年数多く生まれている新興のEV用電池メーカーにはない強みかもしれません。
さらに今回、新しくできる会社の名前を「パナソニック エナジー株式会社」とし、あえて「電池」という言葉を外しました。このことからもわかるように、私たちは向き合うマーケットを明確に変え、ミッション・ビジョンに共感してもらえる企業とのコラボレーションもさらに加速していきたいと考えています。それがまた新たな強みにつながっていくことは間違いないでしょう。
──エナジー社が今後、特に注力していきたいと考えているのはどのようなことでしょうか。
やるべきことはたくさんありますが、やはり「電動化」は大きなキーワードです。今、ようやく車の電動化が本格化してきましたが、先ほども話に出たように、船や建設機械、飛行機など、化石燃料を使って動かしているものはまだまだたくさんあります。お客様からもさまざまなご相談をいただいており、ぜひ一緒にモビリティの電動化を進めていきたいと思います。
また、環境面ではリサイクル、リユースも重要なテーマとして取り組んでいかなければなりません。電池には希少金属を用いることもあり、私たちにとって無視できない問題です。つくった電池を分解してリサイクルする方法もありますが、それではまた製造する際にエネルギーを使うことになるため、できる限りリユースを進めたいと考えています。
その際、以前のユーザーが電池をどのように使っていたかわかると、「あとどれくらい使えるか」「この用途では再度使える」といったことが判断でき、リユースを有効に行えます。そのため、クラウドに電池データを残し、一元管理できるシステムの開発・導入も行っています。
──エナジー社はこれから、どのように進化していこうとしているのでしょうか。成長戦略をお聞かせください。
電池事業とは、シンプルにいえば世の中から化学物質の材料を持ってきて、電気をためやすい形にパッケージして、制御などをつけてお客様にお届けする事業です。まずはこれからも、そのプロセスを世界一上手に行える企業であり続けること、そして、お客様が電池で何か新しいことをしたいと考えたときに、真っ先に想起していただける存在でありたいと考えています。
スタートは3事業部体制ですが、今後ソリューションベースで小さなパッケージ事業をたくさんつくり、その集合体としてビジネスをさらに成長させていきたいですね。
電池はまだまだ進化できる。その一方で、世の中には無駄な使われ方をしているエネルギーが多いのも事実です。本来は、人間が必要なときに必要なだけエネルギーを供給できればいいので、私たちは電池の力でそこを極めたい。それが、ミッション・ビジョンの実現につながると考えます。
誰も成し遂げたことのない領域に挑み、世界の電池事業をリードする
──エナジー社が、今このタイミングで採用強化を図る狙いを教えてください。
ミッション・ビジョンを制定する過程で、私たちのやりたいことは明確になりましたし、組織体制の変革で社内の人材の流動性も高まりました。しかし、私たちはこの3~4年、テスラ事業だけでも数千億円ほどの投資を行っており、今後のさらなる成長には、まだまだたくさんの人材が必要です。第2、第3のテスラ社のような会社と一緒に新しい世界を創っていく。その中心になってくれる人材に集まっていただきたいと思っています。
──エナジー社で働くからこそ感じられる仕事の醍醐味、またここでしか得られない経験についてお聞かせください。
エネルギーというのは、社会・環境の「ど真ん中」にあるものです。世界の電池事業で存在感を示すパナソニックのエナジー社で働くことは、まさにその「ど真ん中」に入っていくことにほかなりません。それ自体がモチベーションを大きく刺激してくれるはずです。
また、電池の開発は陸上競技や競泳のように、数字で結果が出やすいという傾向があります。そのため、自分の仕事がダイレクトに世界で評価され、非常にわかりやすい達成感を得られるのではないでしょうか。
「グローバル」という観点でも大きな魅力があります。私たちの生産拠点は世界のさまざまな国・地域にありますし、お客様も世界中におられるため、グローバルなビジネスに携わるダイナミズムを体感できます。自分の持つ技術を武器に、世界を舞台に活躍したいという人にはまたとない環境と言えます。
電池の分野でパイオニアになるには、前例のないところに踏み入り、自分たちの手でルールづくりから行っていかなくてはなりません。とりわけ今は、まさに事業が成長ポイントに入ったところで、一から工場を建て、人材を採用してといったゼロベースで事業を進めていく機会も豊富にあります。誰も成し遂げたことのない、スケールの大きなチャレンジができるのも当社ならではだと思います。
困難も楽しみに変えられるチャレンジャーを求む
──エナジー社はどのような方を求めているのでしょうか。
今、申し上げたように、私たちの仕事は「道なき道を行く」ようなもので、失敗も数多くあります。そのため、そこでへこたれず、粘り強くチャレンジし続けられる人、「リスクがあるからやめよう」ではなく、「とにかくやってみよう!」と前向きに挑んでいける人を何よりも求めています。当社では、一度や二度の失敗でその人を評価するようなことはありません。むしろ、「前向きな失敗ならばそれも一つの経験じゃないか」と受け入れる風土があります。
また、幅広い業界・業種の人と協力しながら仕事を進めなくてはならないので、コミュニケーション力も重要ですね。グローバルでの連携も必要なので、英語をはじめとする外国語もできるとよいですが、「できなければならない」というわけではありません。むしろ、「語学力は足りないかもしれないけれど、現地に行って頑張ってみます」と自ら手を挙げるような、困難も楽しみに変えられるキャラクターの人であれば、伸び伸びと活躍できるでしょう。
──実際にどのような人が中途入社で活躍していますか。
前職の業界・業種はさまざまで、むしろ電池メーカー以外から入社した人が多いかもしれません。電池の開発はつまるところ、化学物質をパッケージにしていくプロセスなので、例えば食品や薬品などの分野で積んだ経験も十分に役立てられます。
機械設計についても、業界は問わず、設計の基礎力さえあればそれを展開して活躍していくことが可能です。また電池は近年、非常に高度な制御が求められていることから、ソフトウエアの制御技術を有する人材も多く入社しています。
──最後に、この記事をご覧の方にメッセージをお願いします。
2022年4月から、私たちは「パナソニック エナジー株式会社」となります。今回新会社をつくるにあたって経営陣が考えたのは、「いったん辞めたとしても、もう一度入りたいと思える会社にしよう」「この会社で働いていることを家族に誇りに思ってもらえる会社にしよう」ということです。ぜひこれから入社される人とも一緒に、そうした会社をつくり上げていきたいと考えています。
繰り返しになりますが、電池の分野をリードし続けるには、急で険しい坂道を上っていくような困難も待ち受けています。しかし、そこを上りきった暁には、今まで誰も実現できなかった世界をこの目で見ることができるでしょう。そこを喜びとしてチャレンジできる人、そして私たちのミッション・ビジョンに共感していただける仲間をお待ちしています。
出典:ビズリーチ 公募ページ「パナソニック株式会社」(2022年1月13日公開)より転載
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