パナソニックグループにはさまざまな技術職の社員がいますが、一口に技術者と言っても、業務内容はもちろん目指すキャリアも異なります。多様な選択肢から自分だけの未来を描く3名の技術者にお話を伺いました。
2022年11月
プロフィール
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森石 麻紗子
パナソニック ホールディングス株式会社
神戸大学大学院 工学研究科応用化学専攻修了2014年入社。大学院時代は、主に医療分野への応用を目指した分子認識材料の開発研究に没頭。入社後は、電池触媒開発や色素開発を手掛け、2022年4月からは新たに植物など自然由来の材料を改質し、高機能化を目指す研究に取り組んでいる。中でも注力しているのは、建築材料としての杉の高機能化。
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福永 奈央
パナソニック ハウジングソリューションズ株式会社
大阪市立大学(現・大阪公立大学) 生活科学部居住環境学科卒業2009年入社。大学時代は人間工学を専攻し、人の体にかかる負担を減らすことで、くらしを良くするために、人とモノのあるべき関係性を探る研究に取り組む。体育会ボート部にも所属し。入社以来、全自動おそうじトイレ「アラウーノ」の商品企画を担当。小学生2児の母であり、3年間の育休取得経験も。
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須崎 遥
パナソニック オートモーティブシステムズ株式会社
早稲田大学理工学術院 先進理工学研究科ナノ理工学専攻修了2018年入社。大学院時代は、マイクロ流体有機ELなど半導体デバイスの開発に注力し、首席で卒業。国際学会では、開発した技術の新しさやプレゼンテーションが評価され表彰も。入社後は車載デバイスの無線通信モジュールの設計開発に携わる。社内のミニMBA研修の受講を機に、新規事業開発にも参画。
目次
人の温かさと、挑戦できる風土に惹かれて
パナソニックグループに入社したきっかけを教えてください。
私も、入社の一番の決め手は人でしたね。初めての面接のときに、履歴書を忘れてしまったんです。慌ててコンビニで履歴書を購入し、15分くらいで必死に書いたのですが、無事選考を通過できて。アルバイトの面接に使うようなフォーマットの履歴書で、他の学生さんの履歴書と明らかにサイズが違ったので、内心では「大丈夫かな......」と不安でいっぱいでした。けれど、そんな形式に左右されることなく、面接で私という人間をきちんと見た上で判断してもらえたのだなと感じました。
実は私も、決め手は人です。パナソニックグループには、仕事だけでなくプライベートも充実させている方が多いという印象で、そこがいいなと思いました。実際にご家庭やお子さんの話をよく聞くので、周りの人と自分の人生を大切にされている方が多いなと感じています。
あと、広い選択肢からキャリアを描けるのも魅力のひとつ。私は就職活動の時に明確な将来のビジョンが持てずにいました。国際学会で表彰されたり、研究での成果がある程度出せていたりと、大学の研究もやりがいを感じていました。でも、何か新しいことにも挑戦してみたくて......その"何か"は、会社に入ってから見つけたっていいよねと思っていました。
だからこそ、家、街、社会、そして世界が事業領域といえるぐらい広いパナソニックグループなら、多様な選択肢の中から自分のやりたいことを見つけていけると思ったんです。
分かります。パナソニックグループ全体はもちろん、一つの事業内においても携われる業務範囲が広いのは魅力ですよね。私は、会社説明会に参加する前は「大企業だから、担当する商品のほんの一部分にしか関われないのかな」と勝手に思っていました。しかし、入社してみるとアラウーノだけでなく、手洗いや収納など周辺の商品を担当することもでき、やりたいことに挑戦できていると感じます。
さまざまな領域に携われることで、自分の可能性を広げ、楽しいと思える分野を増やすことにも繋がりますよね。私は現在、Bluetoothや無線LANにまつわる事業に携わっていますが、実は大学では全く触れたことがない領域だったんです。入社後、ゼロから勉強をスタートしたのですが、周囲が教えてくれる風土があるおかげで、新しい領域を学ぶこと自体が楽しいんですよね。
私が大事にしている「計画的偶発性理論」という考え方に近いものを感じます。「計画的偶発性理論」によると、キャリアの8割は偶然の出来事によって決定されると。キャリアパスではゴールを定めすぎず、目の前のものに対し、柔軟に行動するのがよいそうで。
私は就活生のころ「大学での学びを活かして働くことこそが最良だ」という考えにとらわれていました。そのため、入社後自分の専門領域と業務内容が離れたとき過剰な不安を感じてしまったことがあって。ですが、須崎さんのように偶然の出来事を好意的に受け入れ、一から学べることを楽しみ、むしろチャンスに変えようという姿勢をもつことで、キャリアがより充実してきたように思っています。
チームのチカラで、大きな成果に繋げる
もっとも印象的だったお仕事を教えてください。
私は、タンクレストイレ「アラウーノ」の商品企画から開発、導入に加え、営業のカタログへの落とし込み、営業などの前線メンバーに対する商品研修の実施など、幅広い業務に携わっています。
これまでを振り返って印象に残っている仕事は、「アラウーノ L150シリーズ」のミッキースクリーンデビュー90周年記念デザイン商品を手掛けたこと。過去にもミッキーデザインの商品を展開したことがあったのですが、ファン心理を捉え切ることができず、思っていた成果が上がらなかったということがありました。
そこで今回は、ディズニー好きの後輩と共に、再度ミッキーデザインに挑戦することに。ファンの気持ちに寄り添う商品を生み出せるようウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社との交渉を行いました。
トイレという商品だったこともあり、商品化は簡単ではありませんでした。そこで、アラウーノは全自動おそうじトイレであり清潔さを保てる機能があることや、インテリア性に力を入れていることなどを説明。「一般にイメージされるトイレとは違うこと」をご理解いただき、実現にこぎつけました。
ここまで主体性と責任感を持って動いたことは初めてでしたし、社外との交渉にこれほど積極的になったことも、社内でデザインや開発に深く入り込んでいったことも初めてでした。この経験によって、その後の商品への取り組み方も変わったと思います。
交渉という意味では福永さんと似ているかもしれませんが、私も、Bluetooth/Wireless LAN 無線通信モジュールの温度性能を良くするため、社内外のさまざまな人とディスカッションを行った仕事が印象に残っています。
車載デバイスは、使用温度環境が幅広く、下は-40度、上は+85度という環境に耐えられる性能がなければなりません。それを担保するため、社内の設計開発や生産チームをはじめ、国内外のチップベンダーや測定器メーカーのエンジニアとさまざまなやりとりをしました。関わる企業が多岐に渡り、また調整すべき項目も多く、技術の専門性も高い上にタイムマネジメントも行わなければならないということが大変でした。
また、その仕事は十数人規模のチームで行っていたのですが、メンバーの中では私が一番の若手。そのためチーム内でもともとあった共通認識が分からず、都度聞かなければならない時も多々ありました。ただ、私が「分からない」と声を上げることで、誰かの気づきになったこともあり、発言は歓迎されていましたね。今後はそれらを明文化し、新しいチームメンバーが入って来ても簡単に共有できるようにしたいと思っています。
もっと学びたい!働きながら大学の博士課程に進学
森石さんの印象に残っているお仕事も教えてください。
私が印象に残っている仕事は、入社後に一から学んだ技術分野で自分の提案を成果に繋げられたことですね。
仕事で色素開発に携わることになり、光化学と量子化学計算を学び始めたのですが、これまで勉強したどの分野よりもおもしろく感じました。そこで、専門とする大学の研究室を自分で探しアポを取り、学びたい熱意を伝えて試験を受け、博士後期課程への進学を決めました。
うれしかったのは、大学で学び研究した内容を仕事に活かせたこと。化合物を設計し、実際に実験したところ目指していた特性を得られ特許を出願できたんです。
パナソニックグループには、仕事をしながら博士後期課程に進学する人も結構いますよね。私の以前の上司は、MBAの取得のために大学へ進学していました。
そうなんです。私と同じ課の中だけでも、私の他に2人いて。そういった学びへの意識が高い環境で研究開発ができることは、幸せだなと思いますね。ちなみに大学院の研究は、仕事を終えた後や休日などの業務時間外に無理なく進められるように調整しています。
学びたい気持ちを応援してくれるのはパナソニックグループの特徴ですよね。私は、社内のミニMBA研修を半年にわたって受けたことがあります。アメリカから講師が来て授業をしてくださるというので、これは滅多にない機会だと思って自ら手を挙げたんです。もともと技術研究だけでなく、マーケティングやファイナンス分野にも興味があり、会社や社会を別の視点から見られるいい機会になりました。
その研修を通して、企業におけるマネジメントとは何かを学び、自分がマネジメントに携わることにも興味を持つようになりました。私は、自分の人生を自ら"選択しながら"生きていきたい。つまり、1つの企業に囚われずに生きていくことが目標なんです。そのためには、社会がどのように動き、会社がどのように存在しているのか、その中で従業員がどのように働いているのかといった社会の仕組みを学んでおく必要がありました。マネジメントは、偉くなるためではなく、この先のために触れておくべき項目の一つ。今はその学びを生かして、新規事業開発にも携わっています。
そういえば、マネジメントという点では、森石さんはすでにチームを率いるという立場を経験されているんですよね。
そうですね。小さな開発テーマではありますが、リーダーとして、他チームとの調整やメンバーの役割の割り振り、研究の進捗管理や解決すべき課題の見極めなどを行っています。
初めてリーダーになったのは入社4年目で、上司から「テーマリーダーをやってみないか」と打診されたことがきっかけでした。せっかく期待してもらえたのだからと承諾しましたが、当時は自分の研究開発スキルがまだまだ積み上がっていないと感じていたので、リーダーになることで、研究に充てていた時間がマネジメント業務に割かれ、同年代の人たちに技術面で置いていかれるのではないかという不安がありました。
実は、大学院に進学したのは、自分の技術力を上げて自信につなげたいという思いもあったんです。先ほどの「印象に残った仕事」の話にもつながりますが、自分自身で研究室を探して進学を決めたこと、それが仕事の成果としても実を結んだことが大きな自信になりました。
最初にリードしたチームは開発戦略上の理由で中断することになり、一度メンバーに戻って別の研究に携わりましたが、今はまたリーダーを務めています。リーダーを経験後、一度メンバーに戻ったことで、改めてリーダー像を客観視することができ、リーダーとして自分に足りなかったことが分かるようになりました。自分に自身もついたことで、今回のリーダーの打診を受けたときは、すごくワクワクした気持ちで受けることができたと感じています。
「研究を極めたい」「新商品をつくりたい」「興味のままに可能性を広げたい」
今後、挑戦していきたいことを教えてください。
将来的には、サーキュラーエコノミーに貢献する研究開発テーマを自分で考え、立ち上げられたらと思っています。現実離れした夢物語ではなく、確実に世の中の役に立てるテーマを見つけるのはとても難しいのですが、それができるように頑張りたいですね。また、現在担当している研究開発テーマの事業化に貢献できたらと思っています。
私は、人の生活を変えるような、新たな商品やサービスを提供したいと思っています。今のトイレにはいろいろな機能が付いていますが、その中には実はあまり使われていない機能もあります。アラウーノはIoT化していて使用データが取得できるので、それを参照することで本当に使ってもらえる商品にしていくことが次のステップだと考えています。
これまでの人生を振り返ると、何かを目指して進路を選んできたというよりは、その時々で興味が向くものを選び進んできました。これからもそんなふうに、ふとした出会いから興味の向く方へ進んでいきたいです。もしこのまま技術を深めるとしたら、今の技術に一貫する業務を続けていき、もし技術から離れるのだとしたら全く別の職種で、ゼロから勉強したいなと思っています。それが実現できるのも、幅広い選択肢があり、挑戦を応援する風土があるパナソニックグループならではの良さだと実感しています。
*所属・内容等は取材当時のものです。
私は、大学院のときにインターンシップに参加したのがきっかけです。そこで先輩社員の方々が年齢や入社年次に関係なく対等にディスカッションし、熱い志を持って研究開発に取り組んでいる姿を見て惹かれました。
また、選考の過程では、先輩社員がとても親身になって技術プレゼンの添削をしてくださって。人の温かみが感じられたことも、入社を決める後押しになりました。