「経理」と聞くと、一般的には「黙々と数字と向き合うデスクワーク」のイメージがあるのではないでしょうか。しかしパナソニックグループでは経理を「経営の羅針盤」と表現し、ただ数字と向き合うだけでない「経営管理を行う役割」を担っています。パナソニックグループの経理とは具体的にどのような仕事なのでしょうか。3人の経理担当者に話を聞きました。
2022年11月
プロフィール
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芳野 光邦
パナソニック オートモーティブシステムズ株式会社
慶應義塾大学 経済学部卒業2005年入社。学生時から現在に至るまで剣道一筋、パナソニック剣道部在籍。入社後はパソコン用光ディスクドライブ事業の経理に従事し、2013年からはフィリピンへ出向。2018年に帰任、2019年から車室空間デバイスを担当する事業部の新設とともに同経理課を担当。
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尾上 正和
パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社
神戸大学 経営学部卒業大学ではコーポレートファイナンス理論のゼミに所属。卒業後は電子部品メーカーで資金運用や工場経理、単独決算、IRなどを経験したのち、2018年にパナソニックへキャリア入社。入社後はパナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社の設立に関わり、2021年からは同社の経理部主計課に。
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情野 芳信
パナソニック株式会社
大阪大学 経済学部経営学科卒業高校時代は陸上部に所属し部活三昧、大学時代はバイト三昧の日々を送る。メガバンク、タイヤメーカーを経て2010年にパナソニック電工へキャリア入社。2014年からはトルコへ出向し、経理・人事・IT・法務・内部監査などの管理系の職務を担当。現在は、くらしアプライアンス社 ライティング事業部 経理部 プロフェッショナルライティングBU管理課で経営管理全般を担う。
目次
一から商品作りに携われるコンシューマービジネスの魅力
形に残る商品に携わりたかったという気持ち、わかります。私はキャリア入社で前職はBtoBメーカーでしたが、自社の商品を最終的なお客さまにお届けしていることを、より実感できるコンシューマービジネスにずっと興味があり、グローバルにビジネスを展開しており、ブランド力もあるパナソニックに惹かれました。
所属するパナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社(以下、PEAC)では、テレビやビデオレコーダー、オーディオ、カメラ、電話など、いわゆる黒物家電を扱っており、私自身は主にPEACの管理連結決算業務を担当しています。
情野さんは私と同じキャリア入社ですよね。どのようなきっかけで入社されたのですか?
私は前職が銀行で。当時、企業調査部で建設・不動産業界を担当していたこともあり、住宅はもちろん、人のくらしに根ざした商材に興味があり、パナソニック電工(現、パナソニック株式会社)への入社を決めました。また、以前からパナソニックグループが掲げる「経営経理」「経営の羅針盤」といったワードをよく耳にしていて、実際にどのように運用され、経理としてどのような事業貢献ができるのか気になっていたんですよね。
現在はライティング事業部で、オフィスや病院、商業施設で使用される非住宅照明器具を製造・販売する事業を担当し、経営管理をしています。
経営の方針を指し示す。パナソニックグループの経理の役割
先ほど情野さんからもお話が出ましたが、パナソニックグループの経理で特徴的なのは「経営の羅針盤」であることですよね。私も新人時代こそ会計伝票の処理や財務数値のとりまとめといった、いわゆる「経理の実務」をメインに経験しましたが、海外赴任後はマネジメント業務に携わり、経営者に対し経営の方向性や改善策などの進言を求められるようになっていきました。
私は他の会社のことは詳しく知らないのですが、おふたりは他社も経験されていますよね。経理の仕事にどんな違いがありますか?
パナソニックグループの経理の1番の特徴は、コーポレート部門だけでなく、事業部の内部にまで経理組織を構えて、事業に密接していることだと思います。
事業活動の「結果」である経営数値を集計・報告するだけではなく、事業部単位で見通し数値を更新し、経営課題への対処や改善策を検討し、部門を巻き込んで活動を推進していく。事業活動の「過程」に関与できることが、パナソニックグループの経理の特徴であり、やりがいだと感じています。
経理が事業部に入り込んで事業戦略を深く理解し、経営数値を軸とした定量化情報を武器にモニタリングして、次の一手をリードする役割を担っているんですよね。そのため、パナソニックグループや他部門の経理職との繋がりを活用して全社的な状況を鑑みつつ、自分たちの経営管理する事業が全社戦略の中でどのような位置づけにあるのかという客観的視点を持ち、事業経営責任者の経営参謀になる必要があると感じます。
そうですね。経理は時として、事業責任者や部門の方々にとって耳の痛い話でも、あえて提言しなければならないこともあります。
そういう意味でも、私は仕事をするうえで「常に合理性を追求すること」を大事にしています。経営改善の施策を実行するには、現場で活動する部門の協力が不可欠です。われわれ経理はそれら部門の方々に活動の主旨を理解してもらう必要があるので、みんなが納得できるように客観的な事実を積み上げ、合理的な説明をすることを心がけています。
私が仕事をするうえで大事にしているのは、「発想」と「チャレンジ」です。経営管理の仕事では、将来を予測し経営を進めていきますが、さまざまな壁にぶつかります。時には外的な環境要因で経営状況が左右されることもあるので、方向性や解決策を考え、数値で示してどのように経営を支援できるか、自ら発想しチャレンジすることを大切にしています。
芳野さんがいるパナソニック オートモーティブシステムズ株式会社は世界の産業を牽引する自動車業界と協働する事業体なので、特にそういうカラーが強いのかもしれませんね。自社の強みを発揮するためには、みんなが課題を認識して、その解決のために行動していくことを文化として根付かせる必要があると思います。
そのため、私はみんなが目標としたKPIを達成できるよう課題を認識し、それを解決するために実際に考動(こうどう)する、考えて動くことを心がけています。そして、KPIを達成したときには、皆さんの頑張りが経営成果に繋がっているんだとしっかり定量化して伝えていくことも重要だと感じています。
経理って数字とばかり向き合っていると思われがちですが、実はコミュニケーション力も求められますよね。
はい、経理が来たら「私なにか伝票処理を間違いましたっけ?」とか警戒されちゃう部署ですから、余計にね(笑)。
新設の事業会社で経理の礎を作り、海外で活躍する。経理の概念を越える仕事
私のいる事業部は2019年に新設されたので、他事業部を参考にしながら、今の事業や商品に沿った経営管理の仕組みを強化してきました。
尾上さんはPEACの経理部主計課ということで、組織の再編など大変だったのではないかと予想しますが......。
そうですね。実は私が所属している主計課は、2022年4月の事業会社化を機に新設された組織です。PEACの前身は一つの事業部であったため、管理連結決算や税務といった本部機能を持っていませんでした。主計課では事業法人化によって新たに発生した業務の多くを担っていますが、これらの業務経験があるメンバーがPEAC内部にいないため、他の会社の経理とヨコ連携しつつ対応していく日々です。大変ではありますが、その一方で、自分が体系化していく業務が今後のPEACの経理業務の礎になると思うと、非常にやりがいも感じています。情野さんが印象に残っているのはどんな仕事ですか?
VIKO社(在トルコ)の買収検討から買収、買収後の経営までの一連の流れを経験したことです。また、その中で2014年のロシア・ウクライナ紛争や、2016年のトルコクーデター未遂など、予測不能な政情変化、事業環境変化に対して失敗と成功を繰り返しながら経営者や現地メンバーと一丸となって戦略を立案し、実行してきました。赴任最終年度の2020年ではコロナの逆境を跳ね返しながら、主要な経営目標を全て達成できたことは貴重な経験であり、自身のキャリアにとっても大きな財産となりました。
世界情勢の変化の激しい中で、経営目標を達成されたのは素晴らしいですね。
入社したときは、まさか自分が海外でこんな経験ができると思っていませんでした。これも、チャンスをくれるパナソニックグループの経理の魅力なのかなと感じています。
そうですね。多くの商品や事業経営に深く関わることができて、発想次第で国内外問わず多くの方々といろいろなことにチャレンジできるのは、パナソニックグループの経理ならではなのかもしれません。それによる自己成長と人脈形成、一体感を得られることも魅力の1つだと感じます。
パナソニックグループにおける、経理の概念や役割は一般的なイメージよりもかなり広いと思います。そのぶん求められることも多いです。自分自身が経営改善に繋がる一手を提案し、実際の事業貢献に繋げることができるのは大きなやりがいですよね。
実際にVIKO社では、「経理」という範疇を超え、人事、IT、法務、内部監査など多岐に渡る管理業務を担当しました。ローカルスタッフを自ら採用して、法務部、内部監査部を立ち上げています。事業に向き合い、結果だけではなくプロセスも重視しながら事業に貢献していく組織文化があるので、経営管理を通じて事業貢献したいという思いがある方には向いているのではないでしょうか。
パナソニックグループの経理は、さまざまな部門の方々と関わることにより、会社の事業活動を広く知ることができるのも特徴ですよね。日常の業務の中で経営層と会話することも多いので、会社全体を見渡した高い視座を得る機会に恵まれているのも大きな魅力です。
ここにいる3人の経歴もバラバラですが、一口に経理の仕事と言っても、活躍の場は十人十色。あらゆる事業活動は結果として財務数値に現れるので、経理とは自ら興味を持っていろいろな事案に主体的に関わることで、会社のさまざまな事業活動にも参画し、貢献できるチャンスのある職種だと思います。
*所属・内容等は取材当時のものです。
私は新卒でパナソニックに入社しました。志望動機は、「一から形に残るものを作り、社会に貢献する仕事がしたかった」から。現在は、パナソニック オートモーティブシステムズ株式会社で、車載用ディスプレイ、スピーカー、スイッチなどの商品の事業経理として、海外の子会社15拠点を含む経営管理を担当しています。