パナソニックの#はたらくってなんだろう ドライブデータ×ミリ波で「街の見える化」スマートシティへの新境地を切り開く!〜次世代V2X通信 開発プロジェクトチーム インタビュー〜

オフィスを背に並ぶ相原弘一さん、中野幸成さん、江上晃弘さん

街の課題を見える化するスマートシティ向け次世代V2X通信

スマートシティを実現する上で、街で日々変化するデータの利活用は欠かせません。しかし、あらゆる場所にカメラやレーダなどのセンサ類を設置するのは現実的ではなく、自動車の通常走行をデータ収集に生かそうという取り組みが主流です。そこに立ちはだかる問題は、データ収集の手間とコスト。ドライブレコーダーの画像や動画などの大容量データを無理なくアップロードするにはどうすればいいか。移動通信にほとんど使われていない高周波数帯域の電波「ミリ波※1」を利用し、安価で効率の良い方法で課題解決に挑戦した技術者たちに話を聞きました。

※1 波長が1~10ミリメートル、周波数が30~300GHzの電波の総称。通信可能範囲は狭いが、高速・大容量通信に適する。

2021年09月

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プロフィール

  • 中野 幸成

    パナソニック インダストリー株式会社

    中野 幸成さんの顔写真
  • 江上 晃弘

    パナソニック インダストリー株式会社

    江上 晃弘さんの顔写真
  • 村松 慎太郎

    パナソニック インダストリー株式会社

    村松 慎太郎さんの顔写真
  • 相原 弘一

    パナソニック インダストリー株式会社

    相原 弘一さんの顔写真
  • Gaius Wee Yao Huang

    Panasonic R&D Center Singapore(PRDCSG)

    Gaius Wee Yao Huangさんの顔写真

目次

  1. PROBLEM
  2. INTERVIEW
  3. MESSAGE
  4. FUTURE

PROBLEM

ビッグデータと活用者を隔てる「高い壁」

自動車内でモニターを眺める様子

地図画像

事故発生時の証拠を残す目的で、多くの自動車に搭載されているドライブレコーダー。そこには、時刻や位置情報(GPS)がひも付けされてさまざまなシーンが録画されています。録画した映像には流れてゆく周囲の街の様子が映し出されており、この映像の有効活用について探る動きが強まっています。すでに街の見守りサービスに役立てられるなど、交通用途を超えた利用なども始まっていますが、開発の現場では「データをどのように集めるか」という大きな問題に頭を抱えています。

例えば、搭乗者がSDカードを取り出して所定の位置へアップロードする試みは、記憶媒体を毎回抜き差しする手間のため敬遠され、普及が進みませんでした。携帯電話回線を利用した自動データ収集の場合、大量の画像や動画をアップロードしすぎるとデータ量がかさんで帯域制限に引っかかるおそれもあります。しかも、世界を見渡すとそもそも通信網が行き届いていない地域も多く、実用化には高いハードルがありました。大量・大容量のデータをいかに手間なく集められるか。スマートシティ実現に向けて、この難題をブレークスルーする方法を世界中が模索しています。

INTERVIEW

「じゃじゃ馬」のようなWiGigをどう生かす?

スマートシティの実現に向けて、パナソニックが行っている取り組みとは?

中野 幸成さん
中野

自動車間の通信のV2V(Vehicle to Vehicle)、自動車とインフラ間の通信のV2I(Vehicle to Infrastructure)、自動車と歩行者間の通信のV2P(Vehicle to Pedestrian)など、自動車とあらゆるモノをつなぐ無線通信技術を総称してV2X(Vehicle to Everything)と呼びます。そこで私たちは、スマートシティの実現に向けて、大容量データ通信に適したミリ波の一つである「WiGig※2(ワイギグ)」を利用して、ミリ波V2X通信によるデータ収集プラットフォームを確立すべく開発と実証実験を現在進行形で繰り返しています。

江上 晃弘さん
江上

WiGigは国際標準規格「IEEE 802.11ad」として標準化された無線LAN(Wi-Fi)のミリ波通信方式で、標準化の際にはパナソニックが大きく関わりました。その特長は、大容量データの伝送が得意で、しかも利用が無料なこと。基地局を自分たちで設置すれば、初期費用も限られます。一方で、電波がまっすぐ飛ぶ性質を持つので遮蔽物などがある環境が不得手で、また、通信範囲は200メートル程度にとどまります。確かに通信距離が短いのはデメリットですが、例えば交差点通過時などに一気にデータ転送を行うV2Iの「通り抜け通信」を採用すれば、コストがかかる逐次通信以上の成果を出せるのでは。こうした仮説をもとに、2018年から技術開発がスタートしました。

※2 60GHzの電波帯を用いたミリ波の通信方式「Wireless Gigabit」の略。既に普及している無線LAN(Wi-Fi)には2.4GHz帯や5GHz帯の電波が使われている。

作業をする中野さん

開発に当たって、1番の課題は何でしたか?

中野 幸成さん
中野

初めての国内のサーキットを利用した走行実験では、とにかく「接続できない」に尽きました。1回目の走行実験では原因が何もつかめていませんでしたが、そこから何度も実験を繰り返す中で少しずつ接続できるようになりました。試行錯誤で見えてきたのは、モビリティ環境でWiGigを使う難しさでした。

江上 晃弘さん
江上

WiGigによるV2I通信は、信号機などに設置した路側機(RSU:Road Side Unit)と自動車に設置する車載機(OBU:On-Board Unit)の無線接続により成立します。車載機が通信相手となる路側機を発見し、無線でつながる「初期接続」を経てデータ通信は始まりますが、当初接続するまでに10秒以上の時間がかかっていました。路側機の通信エリアに進入してから路側機の真下を通り抜けるまでの間に初期接続からデータ伝送までを済ませなくてはなりません。車載機搭載の自動車が時速60キロメートルで走行すると、通信距離200メートルにおける通信可能時間は12秒※3です。つまり、「初期接続10秒以上」は、まだスタートラインにすら立てていない状況でした。

中野 幸成さん
中野

車載機は、路側機が一定間隔で発する電波「ビーコン」を発見するスキャン処理から初期接続の確立が始まりますが、このスキャン期間が6秒以上と、とにかく長かった。というのも、WiGigはWi-Fiやバックホールといった移動とは無縁の用途が一般的で、高速移動するモビリティ環境を想定していなかったからです。

ベストケースと言える条件であっても、初期接続確立にかかる時間は7.65秒。これを1秒でも縮めて、データ伝送の時間を増やす必要がありました。そのため、車載機が路側機を発見後、即座に接続できるように、車載機におけるスキャン期間やインターバル時間を見直しました。スキャン期間について調査を進める中で、210ミリ秒を境にスキャン成功率が急降下する崖が発生することが判明。これこそが、ビーコン周期とファームウエアの作動速度を鑑みたベストアンサーだと確信し、スキャン期間を210ミリ秒に設定しました。

理論上は、こうしたパラメータ最適化により、高速化を実現できると考えていましたが、実際に走行実験を行ってみると、接続できたり、できなかったりと、初期接続時間が大きくばらつき、接続の不安定さに課題が残りました。そこで、通信環境に左右されやすいふるまいを発見し、車載機の受信電力低下に起因する接続失敗の際に、すぐに再スキャンできるように通信制御ソフトウェアを改良しました。モビリティを前提とする利用において、当初の30分の1となる0.25秒まで初期接続時間の短縮に成功。つまり、通信時間を向上させることができました。

※3 200(メートル)÷17(メートル≒時速60キロメートル)≒約12(秒)

作業する様子

雪かきをする様子

ハイスピードな初期接続で、データ伝送に10秒以上の時間をかけられるようになったのですね。

江上 晃弘さん
江上

ただ、続いて新しい問題が発生。それは、車載機から路側機を介してクラウドへ大容量のデータが送れないことでした。理論上は数万枚ものデータ伝送ができるはずですが、途中でアップロードが止まり、想定よりもはるかに少量しかアップロードできませんでした。WiGigのスピードは既存無線の速度と比べると圧倒的ですが、その速度を出せるのは車載機と路側機間の通信のみで、他の部分での通信や処理が流れをせき止めていたのです。

例えば、路側機の中にはローカルでデータ処理を行う「エッジサーバ」があります。エッジサーバから最終データ集積地であるクラウドに至るインターネット回線は低速で、これらの箇所がボトルネックとなり、WiGigの速さを生かせていませんでした。

ネットワークの世界には「End-to-Endの原則」があり、一般的にはシステムの末端(End)同士が通信を行います。今回のデータの流れは「車載機→路側機(エッジサーバ)→クラウド」で、車載機からやってきた全ての撮影データがクラウドに書き込めたことを確認できてから、「終わったよ」の合図をクラウドが車載機に返していました。ここで問題になるのが、エッジサーバとクラウドをつなぐインターネット回線の遅さです。完了の合図が車載機に返されるまでに時間がかかり、車載機と路側機間も含めて通信速度が低下していました。

この課題を解決するために考えたのが、常識破りとも言える方法です。途中のエッジサーバが「問題なく書き込めそう」と判断したら、すぐに完了の合図を出していいことにしたのです。加えて、通信速度の差に対応できるようバッファリングのしくみと異常時の再送制御機能を追加しました。これにより、完了の合図を車載機に高速に返すことができるようになり、通信速度を向上させることができました。通り抜け通信のように短時間しか通信を行うことができない場合でも、大量のデータを送ることができるようになったのです。

中野 幸成さん
中野

詰まるところ、WiGigの性能は飛び抜けて高すぎるんです。性能はピカイチだけど扱いが難しいWiGigは、例えるならまるでじゃじゃ馬(笑)。パナソニックR&Dセンターシンガポール(PRDCSG)の助けを借りながら、走行実験を繰り返し、無線通信制御やネットワークの枠組みをモビリティ前提にした通り抜け通信において、伝送するデータ量(通信時間×通信速度)を最大化していきました。

パソコンを操作する様子

ベストケースの初期接続確立時間と、データ転送の平均スループットを表したグラフ

強みを持ち寄って、めざした未来の基盤技術

IS社とCNS社のクロスバリューはどのように始まりましたか?

相原 弘一さん
相原

私たちCNS社(パナソニック株式会社 コネクティッドソリューションズ社)でも、似たようなプロジェクトに取り組んでいました。焦点を当てていたのはV2Pで、車と歩行者をつなぐ試みです。自動運転車が普及する未来に向けて、携帯端末のセンサで得た情報を路側機に集めて、障害物や遮蔽物の先に人がいても把握できるような、自動運転車のスムーズな運行を助けるしくみづくりを進めていました。

2018年の終わり頃、共通した要素を持つIS社(パナソニック株式会社 インダストリアルソリューションズ社)が進めるプロジェクトの存在を小耳に挟みました。とはいえ、社内でも別々の部署なので相手の技術を利用し合うのはハードルがあります。調べる中で「本塚 裕幸」という名前をよく目にすることに気づき、本塚さんの講演に足を運びました。聞くとプロジェクトのシステムアーキテクトを担当されており、話し込むうちに意気投合しました。こうして個人的に本塚さんと親交を深めていき、お互いのチームが持っている技術やプロジェクトにおける課題を共有。すると、お互いの強み・弱みがはっきりしていることに気づきました。

IS社の本塚さんらのチームの領域は研究開発に近く、誰にもまねできないミリ波の通信技術を持っていました。CNS社にいる私たちのチームは商品開発に近く、アーキテクチャの設計やアプリケーションの設計などはお手のものです。それぞれに欠けたパーツが交差していることは一目瞭然でした。あとは、お互いのメリットを明白にし、協力体制を取れるようにIS社・CNS社それぞれの部署に働きかけました。実際にはここが一番難しかったのですが(笑)。

こうして、IS社がWiGig周り、CNS社がアプリケーション周りをそれぞれ分担すると役割を決めて、私たちはお互いに委託・技術協力契約などを結ばず、2019年から本格的に共同開発を始めました。直近で行っているプロジェクトの目標は異なりますが、めざす最終目標はお互いに一緒です。部署間のやり取りや線引きはもちろん難しいのですが、信頼関係を築いて本音で向き合い、今もともに最適なプラットフォームを模索しています。

機械に触れる相原さん

3人でディスプレイを眺める様子

公道を想定した実証実験はどのように進められましたか?

江上 晃弘さん
江上

テストの面ではシンガポールのPRDCSG(Panasonic R&D Center Singapore)のサポートなしにはできませんでした。実証実験へのハードルが高い日本に対して、スマート国家構想を掲げるシンガポールは国家戦略として多くのモビリティ実証実験を受け入れています。2018年にテストベッド(新技術の実証実験に用いるプラットフォーム)を設置していただき、実際の公道を使ったテストは有用なデータの宝庫でした。

Gaius Wee Yao Huangさん
Gaius

PRDCSGには100人弱が所属し、さまざまな研究開発プロジェクトに関わっています。シンガポールでは新しい技術を試す機会が多く、IS社からの相談にも特に迷うことはありませんでした。まず、オフィス内でセグウェイを用いたデモと評価を始め、徐々に実際の道路環境に近づけてV2Xモビリティの実現可能性を探りました。

最初のテストベッドを設置したのは、2018年、南洋理工大学(以下、NTU)の構内です。制限時速が40キロメートルまで可能で、実験場と違って複雑かつ予測不能な人や車の流れがあります。NTUには別の帯域のテストベッドをすでに設置した実績があり、交渉はスムーズに進みましたが、シンガポールならではの高温多湿の気候に耐える設計や多発する落雷への備えも万全にして臨みました。

2つ目のテストベッドは、制限速度60キロメートルの公道に面した公共のバス停に取り付けました。技術面では最初の経験があったので問題ありませんでしたが、公道に設置する場所や方法は悩みました。そんなとき目に入ったのが、オフィスの外で工事が進むバス停でした。「チャンスだ」と建設会社にアプローチすると陸上交通庁(LTA:Land Transport Authority)へ働きかけてもらうことができ、提案のチャンスを得られました。

ただ、実証実験の認可を得るには、シンガポールの国益にかなうことを示してLTAに納得してもらう必要があります。LTAの複数の部署が審査に参加する大がかりなものでしたが、練りに練った提案書には好意的な反応で許可をいただけました。実際の公道を使うことでよりリアルなデータを取ることができ、技術の確立に役立ちました。

作業するGaiusさん

試験を行う様子

V2X通信によって集められたデータは、最終的にどのような成果を生むのでしょうか?

中野 幸成さん
中野

私たちが準備するダッシュボード上で「街の課題を可視化する」というソリューションが、現時点におけるアウトプットです。米国のPanasonic Automotive Systems Company of America(PASA)の尽力により、2019年末から、スマートシティに対して積極的な米国オハイオ州のメリーズビル市に協力を仰ぎ、共同実証にこぎ着けました。カナダと国境を接するオハイオ州は寒冷地で、メリーズビル市は人員不足によりインフラ補修が後手に回るケースがあります。「街の見える化により、問題発生に先んじることができるのでは」というオファーを出すと快諾いただけました。市役所付近の交差点にある信号に路側機を設置。その上で、市が運行する自動車に車載機を設置してデータ収集を始めました。

江上 晃弘さん
江上

このプラットフォームの事業化に向けては道半ばですが、V2X通信のベースを確立することができました。次は、ビッグデータをどのようなサービスとして展開するかを考えていくフェーズです。カンパニーの枠組みを超えて多くの人を巻き込み、よりお役立ちできるしくみづくりを進めていきます。

信号機と作業員

信号機と地図

MESSAGE

中野 幸成さん
中野

技術の開発は当然難しかったですが、それ以上にベンチャーさながらの環境に戸惑いました。2017年に入社からの約3年間で十数回、屋外のサーキットで走行実験をしてきましたが、初日にコースが大雪に見舞われたときは気が遠くなりました(笑)。プロジェクトは少数精鋭で、何でもこなさなくてはなりません。走行実験が必須の開発なので、サーキットの候補地探しや交渉から始まり、車両や運転手の手配、機材調達など、今まで経験したことがないような役目も必要でした。

福島や苫小牧での実験では、雨天や寒さのためにパソコンや機材が動かなくなったり、ソフトウェアのトラブルが相次いだり⋯⋯。ただ、それを解決するために対策を積み重ねる中でチームに強い団結力が生まれ、集大成とも言えるオハイオ州での実証実験には万全の態勢で臨むことができました。大量のデータを生かして、世の中にはない新しいサービスやビジネスを今後生み出してみたいです。

江上 晃弘さん
江上

学部、院生時代からずっとミリ波通信の研究をしてきましたが、2018年に入社して変わったのは「出口」への意識です。学生時代は技術の出口戦略を具体的に考えることはあまりありませんでしたが、「○年後にこうした無線の普及が見込まれるから、それに先駆けて△△なサービスを確立しよう」とか「□□に強みを持ったパートナーと組めば、将来の普及が加速しそう」など、ロードマップを強く意識するようになりました。

今回の私たちの取り組みは「走行中のデータを集めること」にフォーカスしています。V2X通信が広く知れ渡る中で、私たちが想像もしなかったようなサービスが出てくるはず。必ず広がるであろうデータ利活用ビジネスの基盤技術を生み出すのが今の目標です。全くの新規開発なのでうまくいかないときの方が多いくらいですが、そんなときは「誰かの役に立てるはず」と信じて目の前の課題に向き合っています。

相原 弘一さん
相原

カンパニーの枠組みを超えた協力を実現するのは「熱意」しかないと私は考えています。サービス/システムの開発にはとにかく幅広い知識や技術が求められ、現実的にひとりで行えることには限界がある。あのとき本塚さんにアタックして熱意を伝えていなかったら、もしかすると今の技術確立はなかったはずです。そう考えると、今後のパナソニックに必要なのは前向きなマインドなのかもしれません。

私はパナソニックの可能性をさらに広げられないかと考え、カンパニーの壁を越えた技術提供を積極的に行っています。実際に、路側機にカメラを設置、そのデータをストリーミングできるアプリケーションを作成したものがあり、これを皆さんに使ってもらえるようにしました。現在では私が所属するセンター内で開発したソフト技術資産を活用するタスクフォースに意思を持って参加し、どうやったら有効に活用できるかというしくみづくりを含めた検討を始めています。自分のところで全部つくって、結果的に活用されなかったでは宝の持ち腐れです。本塚さんも同じ思いで、だからこそつながることができた。今後も多くの人と協力しながら、ひとりでは超えられないハードルを一緒に跳び越えたいです。

Gaius Wee Yao Huangさん
Gaius

新型コロナウイルスの感染が広がる前は、日本でミーティングを行ったり一緒に食事を楽しんだりもしましたが、今はオンラインでのやりとりがほとんどです。日本の開発メンバーとは毎週ビデオ会議をし、頻繁にメールやチャットで情報共有・技術的な議論を重ねています。海外が相手であってもデータ開示や率直な意見をもらい、お互いに尊敬し合って、信頼のある関係性を築けているので、とても前向きにプロジェクトに向き合えています。

2019年10月にシンガポールで開催されたITS世界会議※4では、公式テクニカルツアーの一環としてV2X通信を用いたデモが採用され、多くの人に開発の成果を見ていただく機会になりました。ただ、実は開催の数日前に実施したプレビューのテストは大失敗。急がば回れで、まずは全体を俯瞰して見渡し、問題点を体系的に整理することで解決策が見えてきました。数日でソフトウェアをアップデートした結果、本番は不具合なくスムーズに。お客さまからも良い評価をいただき、世界にパナソニックの技術をアピールできました。今回の経験を生かしてスマートシティ関連の技術に関わり、多くの人に幸せを届けられるようにしたいです。

※4 高度道路交通システムにおける国際協力の推進を図る国際会議

FUTURE

このV2X技術とデータ収集プラットフォームを利用すると、データ伝送1回につき3,000枚前後の静止画を送ることができ、車両1台につき1日あたり10ギガバイト以上という膨大な画像データが自動的に収集されます。ダッシュボードに表示される撮影IDの数字を選択すると、それぞれの画像がどこでいつ撮影されたかが分かり、街の様子が手に取るように分かります。しかも、誰の手も煩わすことなく、電波が届かないようなへき地であってもサービス提供が可能。メリーズビル市との共同実証では、AIを利用した道路の損傷具合の見える化を提案し、大きな関心が寄せられました。大量のデータを収集するための実証実験を経て、スマートシティ実現に向けたサービス開発を加速していきます。

集合写真

前列左から、村松 慎太郎、中野 幸成、相原 弘一、江上 晃弘
後列左から、中川 洋一、入江 誠隆、大久保 義行、本塚 裕幸、林 俊光、坂本 剛憲

*記事の内容は取材当時のものです。

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