パナソニックの人 多田 翔平

仕事場と多田 翔平さん

世界のくらしを向上させる
きれいなプログラムを組みたい。

設計開発 多田 翔平

「子どもの頃、宇宙が大好きで、星とか、ロケットが出てくるドキュメンタリーをいっぱい観ていたんです。そこに出てくる望遠鏡とか、星を観測するための機械が本当にかっこよくて。あとは、コンピュータ。観測機とか、人工衛星とか、当時はいろんなものにコンピュータが搭載され出した時代で、コンピュータがあれば今までにできないことできるって聞いて。とにかく触ってみたかったんです。そうしたら小学生の高学年になる頃に、やっと買ってもらえて。嬉しくてずっと触っていました」。

夢中で触っているうちに、興味は宇宙から次第にコンピュータそのものへと移っていった。ハイテクの最新記事が載っているサイトをチェックし、ソフトウェアをつくることが日常になった。掲示板やマニュアルを見ながらプログラムを組み、どうすれば思い通りに動かせるか試行錯誤する日々が続いた。

パソコンに向かう多田 翔平さん

「大学でも、プログラミングをやろうと思ってそういう学部に入りました。その傍らサークルでロボットをつくることを始めて、そこでコンピュータ上で動くプログラムではなく、モータとかものを動かすプログラムを作成したんです。その時、自分がすごく機械が好きだったことを思い出して。やっぱりおもしろいなって。それで電子回路や電気機器を扱うようになって。くらしを直接変えられる手段を手に入れた気がして、そこからめちゃくちゃ勉強しましたね」。

ソフト的なものと電気的なもの。それが彼のなかの大きな軸となった。就職活動が始まると、これらができるところを条件として地元関西を中心に会社を回った。そのひとつがパナソニックだった。「自分が軸にしていたものがみんな揃っているところって、他にあまりなかったですし、パナソニックには社内で自ら異動できる制度があって、新しいチャレンジがしたいなと思ったら他に自分の意志で異動できるということもいいなって思ったんです。それに機械好きの延長で、昔から家電もけっこう好きだったので、内定をいただけた時は『ここしかない!』って決めました」。

スマートフォンを操作する多田 翔平さん

配属されたのは、ドアホンをつくる事業部の設計開発。最初に取り組んだのは、ドアホンの親機に組み込むソフトウェアの開発だった。求められたものは、インターフォンが鳴った時に、その映像を外出先からスマーフォンで受けられるようにすること。「ドアホンがインターネットにつながり、外出先から映像で応対ができるというのは当時はじめての試みでした。私はもともとあったプログラムに新しい機能を追加していく担当だったんですが、従来のプログラムが複雑すぎて、全然分からなかったんです。それまで、ひとりでコードを書いてきたので、他の人がどういう思考で書いているのかよく分からなかったんですね。だから、いろいろな人に聞いたり、あとは上から下まで全部確認するという力ずくのやり方で書いていきました」。こうして完成したドアホンは、ただ訪問者とやりとりする機器から、ホームセキュリティ端末とも言えるものになろうとしていた。

その後、社内サーバーの管理に携わったあと、現在はドアホン用のスマートフォンのアプリの開発に取り組んでいる。「このアプリでは、玄関の映像をスマートフォンで確認できるだけでなく、警報器や監視カメラのようなセキュリティ機能もあります。それらの機能を、どのようにデザインすればお客さまが使いやすいか、企画部門などさまざまな人達と話し合いながら開発をしています」。ドアホンは何十年と使われ続ける製品だ。セキュリティなどの面でソフトウェアの更新は欠かすことができない。また、スマートフォン自体がどのようにアップデートされても、常に問題なく動き、快適に使えるようにすることも大切な仕事だ。

説明をする多田 翔平さん

はじめてコンピュータを手にした日から、ずっとプログラムと歩き続けてきた。そのおもしろさを彼はこう語る。「たとえば新しい機能を追加するために1からプログラムを組む時って、真っ白なキャンバスに新しい絵を描くような感じなんです。プログラムは、便利さだったり快適さを実現するための手段ですが、同時に表現の手段でもあるというか。美術品に近い感覚なんです。きれいに組めた時は本当に気持ちいいですね」。そして彼は、こんな夢を見ている。「ドアホンって、はじめは玄関にあるただのチャイムでしたが、映像で見られるようになり、今では外出先で応対できることが普通になりました。その進化は、便利であるだけでなく、生活者の時間の使い方を変えてきたと思います。それは、わずかな時間かもしれませんが、そういったもの積み重ねて、世界中の人の自由な時間を1%でも増やせたら、素晴らしいなって思うんです。そんな従来のドアホンの枠組みを超えるような進化、それに貢献していきたいんです」。

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