手がけた設備で、社会に役立つものを
つぎつぎ生み出したい。
生産技術 川上 みずほ
子どもの頃、テレビでロボットのコンテストを見るのが好きだった。「どうやって動いているの?」「なぜ、あんなに速いの?」「そんな手、あり?」...。独創的なアイディアにわくわくドキドキ。隣で弟も大興奮。その頃から、川上みずほは父親と同じ機械系の道を、しかも姉弟そろって歩み始めていたのかもしれない。
メカが好き!といってもいろいろだ。プログラムを駆使した「人型ロボット」より、彼女は仕組みに工夫をこらす「からくり人形」的なものに魅力を感じる。工場の生産ラインを紹介するテレビ番組も小学生の時からお気に入りだ。たとえばお餅。こねる→つく→充填→成形→切断→包装と、一糸乱れず流れるライン。ただ人の動きを真似るのではなく、遠心力など機械の特性も活かした動きがたまらない。大学も、迷わず機械工学をめざした。
大学では本来の研究テーマ以外に、のめり込んだものがある。ロボットのコンテストだ。憧れのステージにあがるチャンスが目の前に広がったのだ。実は高等専門学校生限定のコンテストはデザインやご当地感も審査されるが、大学生などを対象としたものは金属むき出しでより機構の工夫が試される。20人ほどのこぢんまりしたサークル。プログラミングは電気工学の仲間に託し、彼女は設計と制作を担当した。単にスピードを競う時もあれば、搭乗して操作し人との融合が問われる時など、課題は年それぞれ。打ち合わせの熱い声、旋盤のノイズ、モータの唸る音。ガレージを改造した部室は、熱気と期待にあふれていた。全国大会に出場できるチャンスは3回あった。しかし「1回しか出られなくて、悔しかった」。
工場見学から、無駄が徹底排除された設備機器に興味をもった。何もないところから、仲間と一緒に考えてつくるたのしさを覚えた。不完全燃焼だった挑戦から、ものをつくる仕事に就きたいと強く思うようになった。機械設計ができる企業ならベストだ。そんな環境は身近に、彼女の住む大阪にあった。先端技術を駆使し、自社の量産設備を発注側と一緒に開発できる。それが、パナソニックだった。
入社後、既存ラインの改造に携わった。環境対応車へのシフトを加速させる「車載用二次電池」をつくる設備だ。3年目からは早くもその新規設備の開発に関わり、設計をまかせられている。組立工程において端子部分をレーザーで高精度に溶接するものだ。まだ未熟だが、グループ内のお客さまと仕様を何度も何度も詰め、最適な設備をめざしている。「まわりのサポートのおかげです」。謙遜しながら彼女は「社会問題の解決にもつながる、やりがいのある仕事です」と誇らしげだ。「手がけた設備が動いて、製品を量産しているのを見ると感無量です」。そこには、大学時代の悔しさをバネに変えた彼女がいた。
「機構設計した設備で役立つ製品をつくって、社会に貢献したい」。それは彼女が引き続き描く目標。そのために最先端のレーザー・光学の知識も学び、設備全般のことに精通した技術者をめざしている。研修として先端の機械要素を紹介する展示会にも行かせてもらっている。各種検定を受けるために、まわりが相談にのってくれる。目標に向かう環境は整っている。奇しくもパナソニックで機械技術に関わる弟も、彼女の目標を後押しするライバル的な存在になっているのかもしれない。