パナソニックの人 坪田 裕太

仕事場と坪田 裕太さん

モビリティの未来へ、
量産ラインの合理化を加速させたい。

生産技術 坪田 裕太

「クルマの電装系のカスタマイズ、手伝ってくれないか」。高等専門学校に通っている頃、クルマを買った兄から声をかけられた。学校で電気電子工学を学び、しかも幼少の頃からクルマが大好きだった坪田裕太にとって、またとない誘いだった。習っている知識を座学から実用へシフトさせ、どうしたら兄を満足させられるかを考えた。室内灯をLED化したり、HDDの映像を車内で視聴できるようにしたり、ヘッドライトまわりに発光器を付けたり...。試行錯誤を繰り返した仕上がりに、兄は想像以上だと喜んでくれた。「自分の知識や技能を活かしてものをつくり、誰かを『笑顔』にするっておもしろい。そんな仕事に就きたい」。卒業後の進路を強く意識した出来事だった。

作業をする坪田 裕太さん

ただ、坪田には就職するにあたり、他にもゆずれないこだわりがあった。「生まれ育った福井を離れたくない」。地元が好きだし、学校の友人がいる、キャプテンも務めたハンドボール部には苦楽を共にした仲間や後輩たちがいた。希望が叶うか不安だったが、あきらめなくて良かった。坪田にとって理想的な条件の会社が見つかった。実家から車で1時間ほど、敦賀市にある「パナソニック オートモーティブ社」だ。ここではカーエレクトロニクスをベースに車載機器やシステム、デバイスなど、BtoB事業を展開している。「実家から通勤するのは大変ですが、一人ぐらしも経験できるし、週末には仲間たちに会いにすぐ帰れる。何より好きなクルマに関連するモノづくりメーカーでしたから」。もはや選択肢は他にないと思えた。

卒業後、坪田は念願の環境で社会人生活をスタートさせることができた。敦賀拠点は、HMI(ヒューマンマシンインターフェイス)システムズ事業部としてハンドル周辺のスイッチやセンサなどを開発・製造しており、坪田が配属されたのは生産技術課だ。主に良品/不良品を判定する検査器の開発導入を担当した。自分がモノづくりに携わった製品が自動車メーカーに納入され、クルマに搭載されていく。街じゅうで目にするのが嬉しかったし、仲間にも誇れる仕事だった。

作業をする坪田 裕太さん

仕事にもすっかり慣れた5年目、「『ものづくり大学校』へ行ってみないか」と上司に尋ねられた。製造現場に勤務する若手を対象に、グローバルに活躍できるヒューマンスキルと専門スキルをかねそなえた実践者を育てようという、1年間のパナソニック独自の研修制度。その参加の提案だった。もっと知識を広げたい、もっと技術を磨きたい、そう思っていた坪田は「ぜひ、参加させてください」と即答した。集まったのは国内外から約30名ほど。まず教わったのが「技術力」「ヒューマンスキル」「マネジメントスキル」の3つが製造現場で重要だということだ。「研修は実践的で、課題に取り組むなかで自分の専門技術だけでは達成できないことが数多くありました。そこで、周囲と協力し合い、調整、解決しながら進めていく。海外からの研修生もいるなかで、コミュニケーションなど専門技術以外のスキルの大切さを痛感しました」。有意義だった1年を、そう振り返った。

笑顔で語る坪田 裕太さん

職場に戻ってしばらく経ち、坪田は生産プロセス全体の開発導入を担当するようになった。最適な生産体制を構築するために生産工程全体の設計を行い、高品質な製品をつくるために各工程の重要なポイントを設備の設計に落とし込み、量産ラインをつくることがミッションだ。さっそく研修の成果が出た。「メカニカルな勉強が功を奏し、製品設計部門や設備製作部門との取り交わしに必要な図面を描けるようになったのです」。仕事の幅がぐんと広がった。さらに坪田は、得意としているカメラやロボット技術を用いて生産作業の合理化を推進。コンビネーションスイッチやステアリングスイッチ、インスツルメントパネル、舵角センサなど、坪田が手がける生産ラインが次々動き出している。

コネクティッド化や運転支援、自動運転、環境対応など、自動車産業は今、かつてないスピードで変革の時を迎えている。新たなモビリティ社会へ、激動の最前線で働く坪田に、仕事への思いを聞いてみた。「私たちがつくっている車載製品は、人の命をあずかる精密機器。いつも緊張感を持って仕事をしています。もちろん安全・安心だけでなく、より快適で、そして環境への配慮も欠かせません。これからも色々なスキルを身に付け、世界中の街で『笑顔』が行き交うよう、モノづくりで貢献していきたいと思っています」。坪田の仕事への原動力は、やはり人の「笑顔」。それは、これからも揺るがない。

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