パナソニックの人 柏木 将希

仕事場と柏木 将希さん

ITの力を活用し、生産技術職として
安全なクルマ社会に貢献したい。

生産技術 柏木 将希

柏木将希は、高専の卒業と同時に大学の3年次に編入学した。「就職先の選択肢が広がる」という高専の教師の勧めからだった。編入学して間もなく、ラグビー部に誘われ入部する。ラグビー経験はなかったが、運動には自信があった。しかし、その自信はすぐに吹き飛ばされた。ラグビー経験者とは、大人と子どもほどの差があった。「先輩はもちろん、後輩たちにも強烈なタックルを受け、ボコボコにされながらも毎日続けていましたね。でも、そのおかげで上下の立場関係なく、謙虚に学ぶ姿勢を身に付けることができたと思います」と、彼は懐かしむように語った。だが、得たものはそれだけではなかった。それは、ラグビー部のある先輩との出会いだった。その先輩は、決して身体が大きいわけではなかったが、誰よりもタックルに行き、周りを鼓舞するような人だった。後輩たちは、その先輩に憧れていた。彼もそのひとりだった。1年後、先輩はパナソニックに入社した。先輩を通して、パナソニックには彼が専攻していた情報工学が活かせる場があることを知った。さらに海外志向が強かった彼が就職の条件としていた「グローバル展開するメーカー」とも一致。先輩に導かれるように、彼はパナソニックに入社した。

作業をする柏木 将希さん

入社後に配属されたのは、パナソニック株式会社オートモーティブ社。「車載用ディスプレイ」のカバーパネルの生産工法を開発する部署だった。パネルの裏面に色を印刷する加飾工程を担当。先輩に付いてもらいOJTが始まった。しかし、それから1年も経たないうちに、その先輩が退職。彼は、いきなり加飾工程の主担当になることに。「正直、ヤバイと思いましたね。不安しかなかったです。でも、これまでの検証・評価結果などは自分がいちばん詳しい立場なので、やるしかないと腹をくくりました」と振り返る。そんな彼を、大きな困難が待っていた。昨年の夏、メキシコの工場に出張した時のこと。パネルの試作品をつくりお客さまに納品する仕事で、パネルに不具合が発生した。その原因を特定し、すぐに生産工程の改善を進めるはずだったが、原因が見つからない。来る日も来る日も、原因探しが続いた。気が付けば、3週間が過ぎていた。主担当としての責任感から、彼は精神的にギリギリまで追い込まれていた。そんな時「これ、じゃないかな?」と、見つけてくれたのは、一緒にメキシコに来て別の仕事に当たっていた先輩だった。安堵感で力が抜けた。その後、悔しさが猛烈に込み上げてきた。「自分がいちばん見ていたのに気付けなかったなんて」。自分の未熟さを思い知らされた。探していた原因は、彼がスルーしていた場所にあった。現場の改善には、先入感を捨て、広い視野を持つことの大切さを改めて学んだ。

対話する柏木 将希さん

現在は、生産工法から量産工法の開発にプロジェクトが移行。彼は「車載用ディスプレイ」のカバーパネルの加飾工程と切削工程を受け持ち、日々、検証と評価を繰り返しながら量産の安定性と効率性を追求している。この仕事の魅力について聞いてみた。「検証の前に結果を予測し、その結果が予測通りだった時は嬉しいですし、自信になりますね。違った結果が出ても、なぜそうなったかを理論付けることで技術の知見が深まるので、またそれも嬉しいです。そして、何と言っても、自分が開発した工法で生産された製品が世に出て、多くの人に使っていただけることがいちばんの魅力ですね」と彼は微笑んだ。

笑顔で語る柏木 将希さん

生産技術職としてキャリアをスタートして2年。彼は、どんな将来像を描いているのだろうか。「私の好きな言葉に『守破離(しゅはり)』があります。これは、茶道や武道の修行における段階を示す言葉です。現在の私は『守』で、師に教わった技や型を忠実に守り、確実に身に付ける段階だと思っています。パナソニックには、すごい技術を持った方がたくさんいらっしゃいます。その先輩方からどん欲に学んでいきたいと思っています。そしていつかは、『守』から『破』へ、『破』から『離』へ進み、自分オリジナルの技術や型を身に付けていきたいと思います。たとえば、私は情報工学を学んできたので、ITの力を品質管理の技術に取り入れてみたいですね。そしてクルマの完全自動運転実現のキーとなる製品開発に生産技術職として関わり、安全なクルマ社会の実現に貢献したい。そんなことを夢見ています」。大学時代のラグビーのように、誰にでも謙虚な姿勢で学べる彼なら、その夢はきっと叶えられるはずだ。

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