未来をつくる技術の現場から 介護施設の送迎業務の課題に寄り添うクラウドサービス。〜送迎支援DRIVEBOSS〜

社会課題を解決し、世の中に新しい価値を生み出していくために。パナソニックは技術革新だけでなく、これまでにないソリューションやサービスの開発にも挑み続けています。今回は、人手不足が課題の介護現場で活躍するクラウドサービス「送迎支援DRIVEBOSS」の開発チームにインタビューしました。

送迎支援DRIVEBOSS
製品名 介護事業者さま向けクラウドサービス「送迎支援DRIVEBOSS」
担当 パナソニック カーエレクトロニクス株式会社

高齢者を乗せ、街を行く福祉車両。これまで介護施設では、デイサービス利用者を送迎する車両5~6台の送迎計画は、介護スタッフが頭で考え作成していました。これには在宅位置情報だけでなく、利用者の体調や、同乗者の組み合わせまで考慮する必要があります。誰を、どの車両で、どの順路で......。「送迎支援DRIVEBOSS」は、パソコン上で送迎計画を自動作成し、カーナビやスマートフォンと連携する新たなクラウドサービス。構想段階から実用化に至るまで、通所介護最大手の株式会社ツクイさまの全面協力を得て開発されました。判断基準は「現場の実感、使いやすさ」、DRIVEBOSSはクロスバリューイノベーション(従来の枠組みを超え、社内および社外の異なる強みを掛け合わせることで、これまでにない価値を持った商品やサービスを生み出す独自のしくみ。以下CV)が生んだ現場ソリューションです。

DRIVEBOSSの操作画面

目次

  1. 車用品の販売から介護現場へ
    何もかも、初見・初耳の連続。
  2. エイジフリーからつながった縁、業界トップとのCVへ急展開!
  3. IT機器への不安感を払拭、人手不足の介護現場にお役立ちを。
  4. 新システムが根付かない場所、課題はそこに横たわっている。
  5. 拠点の数だけ「最適」がある、全てのお客さまから声を聞きたい。
  6. 細かな条件設定やUIを高めてこそ他分野、異業種が見えてくる。
  7. PCEの強みが生かせる事業、人がつなぐDRIVEBOSS。
  8. CVで立ち上げたサービス事業、業界のデファクトに育てたい。
  9. 共創パートナーから
  10. 「ありがとう」が胸に響く共存共栄、お客さまとともに歩む。

車用品の販売から介護現場へ
何もかも、初見・初耳の連続。

実際にDRIVEBOSSを使用している様子

AさんとBさんの家はお隣だけど、相性が良くないので別々にお迎えを......、そう話しながら1時間近くかけて送迎計画を練る介護スタッフ。介護施設特有の約束事は「制約条件」と呼ばれ、車いすの利用や希望時間などの条件から、仲の良しあしといった心理面も含まれます。「DRIVEBOSS」が見渡すのは、20項目もの制約条件×利用者と車両の組み合わせ。ベテランにしかつくれなかった緻密な計画が、誰でも簡単に作成できます。そのコアエンジンはパナソニック株式会社 ビジネスイノベーション本部(以下BI本部)AIソリューションセンターが開発した「効率巡回・配車技術」です。この技術を活用して送迎計画の自動化を実現したのは、販売会社のパナソニック カーエレクトロニクス株式会社(以下PCE)。既存事業とはかけ離れた月額制サービスの提供に向け、開発チームはBI本部のメンバーと足しげく介護施設に通い、社外の株式会社スマートバリューとシステム構築を推進。現場の声を聞き、プロトタイプを磨く。その連続で2018年のサービスインにこぎつけました。

DRIVEBOSSの操作画面

エイジフリーからつながった縁、業界トップとのCVへ急展開!

カーナビの操作画面

ゼロから介護分野のリサーチを始めたPCE、まず訪れたのはグループ内のパナソニック エイジフリー株式会社でした。そこで聞いた現場の声、送迎計画は介護業界の課題そのものだといい、仮説とした「巡回車両へのお役立ち」が現実味を帯びました。さらに、エイジフリーからの紹介で業界トップ500の事業拠点を誇るツクイさまへとつながりました。同社はすぐに100を超える拠点でアンケートを実施し、詳細な回答をPCEに提供。送迎計画の作成にExcelを用いたり、ホワイトボードを使ったりと事業所ごとにまるで違う実態が明らかになりました。目まぐるしいスピードで多くの作業をこなす介護現場は、1度決めたオペレーションが数年間変わらずに存在し続ける――。変革の機と位置付けたツクイさまは、トップから送迎に関する課題認識をコメント発信し、地域ごとのチーム編成を実施して事業所と本社、PCEの連携を推進。開発メンバーは送迎予定表のサンプルをツクイさまの拠点に持ち込んで、実用性をブラッシュアップしていきました。

お迎え計画票

IT機器への不安感を払拭、人手不足の介護現場にお役立ちを。

DRIVEBOSSのタブレット操作画面

介護事業に向き合い、カーナビ発想のUIは根本から変わりました。初期のプロトタイプで、大きく表示していたマップは選択機能となり、トップ画面は全車両の一覧へと変わりました。エリアを熟知するドライバーに地図は不要、むしろ60歳を超える方が多いため、安全運転の補助機能や文字の見やすさが重要だったのです。送迎計画の作成や送迎実績の記録など、スタッフが時間をかけていた作業がデジタル化され、省力化のメリットは目に見えて進化しました。半面、いちばんの障壁は新たなIT機器を導入する現場の不安感です。システム改変を繰り返して実現したDRIVEBOSSは、さらに約半年周期のアップデートで使いやすさを高めています。ツクイさまの先進事例は同業他社に伝わり、導入事例は2020年に1000拠点を突破。スマートフォンとの連動で、より扱いやすいシステムをめざして開発が進められています。送迎計画づくりに割いていた時間は、来所する高齢者と接するための時間に――。DRIVEBOSSが、介護現場に貴重なゆとりを生み出しています。

新システムが根付かない場所、課題はそこに横たわっている。

徳本 諒也 [システム開発]

PCに向かう徳本 諒也さん

日本社会の課題、介護業界の人員不足に直接関わって問題を解決できる。そこが、DRIVEBOSS開発でいちばんのやりがいです。私は文系の出身で、JAVAやアルゴリズム、AIといった技術は入社後に一から学びました。入社2年目からパナソニック システムソリューションズ ジャパン株式会社(以下PSSJ)へ、4年目から2年間はパナソニック株式会社 ビジネスイノベーション本部(以下BI本部)でシステム構築のノウハウを身に付けてきました。クラウドサービスは、使われ始めて真価が問われます。もちろん、お客さまに絶賛されれば嬉しいのですが、むしろ導入したのに使用頻度が低い拠点があれば、そこを訪ねています。自分はいい意味でプレッシャーに動じない性格。ご要望をどう実現できるかを考えていく過程はワクワクしますし、おもしろいと感じています。

拠点の数だけ「最適」がある、全てのお客さまから声を聞きたい。

天笠 雅之 [マーケティング(西日本)]

笑顔で指をさす天笠 雅之さん

約15年担当してきたカー用品の営業とは、全くの別世界。介護現場で何を話せばよいのかさえ分からず、「3年後にこの営業をやっているだろうか」と半信半疑でスタートしました。振り返れば、転機は高野部長からかけられた一言でした。「きっと役に立つ、信じてやっていこう」と。ツクイさまの関西エリアに順次導入をめざし、全拠点を回るなかで、お役立ちの形が見えてきました。DRIVEBOSSは基本設定のままでご要望にハマるわけではなく、拠点ごとの細かなカスタマイズが重要なのです。お客さまの反応を確かめながら、導入後も改善点を見いだすのがマーケティングの仕事。西日本担当は若くて元気なメンバーが多数いますので、もっとシェアを伸ばし、介護事業で培ったアルゴリズムを他業種にも広げたいと思います。

細かな条件設定やUIを高めてこそ他分野、異業種が見えてくる。

西川 真魚 [システム開発]

PCに向かう西川 真魚さん

エイジフリーとの協業をはじめ、介護現場でヒアリングを重ねてつくりあげたコア技術。DRIVEBOSSの開発には、社内外の知見を生かすおもしろさがあります。私も徳本さんと同様に2年目からPSSJやBI本部で情報処理の基礎理論を学び、さらに現在は、社外の株式会社スマートバリューに出向中。サーバー関連のマネジメントや設計の理解を深めています。現状、DRIVEBOSSはまだまだ粗削りな面がありますが、順調に導入実績が評価されています。また、今後の他分野への展開を考えると、自動配車技術は物流業界にも応用できるはずです。運行管理システムは他社も手掛けていますが、細かな条件設定や誰にでも使いやすいUIは当社の強み。どの分野であれ、お客さまと一緒につくり上げる、私たちのコアを忘れずに取り組んでいきます。

PCEの強みが生かせる事業、人がつなぐDRIVEBOSS。

赤井 毅 [開発リーダー]

スマートフォンを操作する赤井 毅さん

数値化しにくい人間関係まで、人は考慮する。開発の上では、その再現性が最も難しいところ。送迎計画をつくる方の多くは40代の女性で、天文学的な組み合わせから条件を満たす案を見つける様子を見ると、改めて人間ってすごいと驚きます。DRIVEBOSSに求められるのは、その精度とユーザビリティ。カギを握るのは、使いやすさやUIの追究、お客さまの満足度です。そして、この事業が継続する要因は「人」にあります。技術の真似はできても、人が介すれば参入障壁は高くなる。実際、ツクイさまの事例をご覧になった事業者さまとの新規契約も多く、介護業界の横のつながりを物語っています。人でつながる、販社ならではのビジネスモデル。私たち開発者も、現場でお客さま目線のサービス提供を続けていきます。

CVで立ち上げたサービス事業、業界のデファクトに育てたい。

高野 茂 [事業起案、マーケティング]

筆記する高野 茂さん

私たちがSDカードを使う運行サービスに乗り出したのは2016年。翌年に通信型に進化し、AIを使うサービス構想が膨らみました。運よく、エイジフリー、ツクイさまへとつながりましたが、もしも彼がいなかったら......ともうひとり思い浮かぶ顔が、当時BI本部にいた原田尚幸さんです。いつも現場に出て、驚くほど丁寧な検証をしてくれました。プロトタイプを持ち込んで作成した案に、スタッフの方が何かの手直しをすると、その瞬間「何を変えました?どうしてですか」と聞いて、ロジックが少しずつ実装されていきました。そうして高めた送迎計画が、「もう、元の方法には戻れない」と評価され、DRIVEBOSSが役に立っていると実感します。ぜひ、介護業界のデファクトをめざしたいですね。

共創パートナーから

株式会社ツクイホールディングス ビジネスイノベーション推進本部 新規事業開発部 楚山 和豆さま

楚山 和豆さま

DRIVEBOSS導入でいちばんの感想は「ここまで、現場に入り込んで寄り添っていただけるのか」という驚きでした。PCEの皆さまは非常にフットワークが軽く、500以上の事業所導入というミッションをチームワークよく、かつ熱心に議論を重ねながら取り組む姿が印象的でした。現場の多岐にわたる意見をつぶさに拾い上げ、それを形にするスピードもさすがと言わざるを得ません。仕事のなかで個人に感銘を受けることはあるとしても、チームに対してというのはまれで、一緒に仕事ができて本当に良かったと思います。

現在、私たちはDRIVEBOSSのデイサービス向けの機能をベースに、訪問介護や訪問入浴といった訪問サービスへの転用、安全管理というテーマで、ツクイグループ内の各部署が参加して、新たなサービスの構築に取り組んでいます。少し先にはなりますが、最終的には、「送迎業務自体の自動化」という世界も、ぜひパナソニックさまに実現していただきたいと期待をしています。

「ありがとう」が胸に響く共存共栄、お客さまとともに歩む。

熊谷 繁 [マーケティング(東日本)]

説明を行う熊谷 繁さん

お客さまからいただいた「便利になったわ。ありがとう」の言葉、それは私にとって初めての経験です。入社以来、自社商品の販売サイクルを回す仕事をしてきましたが、今はお客さまの業務における課題を共有して、解決に向けた道を共に歩み成長・発展する手応えを感じております。これこそ、松下幸之助創業者の語った「共存共栄」です。パートナーがいなければサービス事業の収入はゼロですから、当初は不安しかありませんでした。しかし、ツクイさまへの一斉導入で考えながら走り続け、現在はお困りごとを解決できるスキームも確立できています。若いメンバーも多い開発陣ですが、厳しい声にも正面から向き合い、最後にはお客さまから「操作性が良くなった」「計画作成がたのしくなった」といった声が。私たちのチームのモチベーションは、感謝の言葉です。

*所属・内容等は取材当時のものです。
*こちらの記事の内容はパナソニック カーエレクトロニクス株式会社の事業となります。こちらの事業に関心がある方はこちらのHPをご確認ください。

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