パナソニックの#はたらくってなんだろう

高品質・ハイスピードを追求した新規ライン 生産能力を倍増、製造コストは25%減

表彰状を持って並ぶ社員たち

パナソニックグループの全工場を対象に、業務効率や生産性向上を実現し、優れた実績を上げた製造現場に贈られるモノづくり表彰。製造・物流・ソリューション革新の部は、仕入れ先、工場からお客様までのモノと情報の流れの見える化、ムダ取り、しくみ改革、人材育成などで経営成果を実現した事例に授与されます。今回選出されたのは、パナソニック オートモーティブシステムズ株式会社 車載システムズ事業部 敦賀拠点。2021年度に新規ラインの量産体制を構築し、従来比約25%の製造コスト削減を達成しました。新規設備の特徴は、ソナー製造で前例のない「レーザーはんだ方式」の導入です。常態化していた人依存の工程を削減しました。生産能力を倍増した製造ライン、革新に挑んだ敦賀工場のメンバーにその取り組みを聞きました。

プロフィール

  • 八原 徳和

    パナソニック オートモーティブシステムズ株式会社 車載システムズ事業部 生産技術

    八原 徳和さんのプロフィール写真
  • 加藤 紘大

    パナソニック オートモーティブシステムズ株式会社 車載システムズ事業部 生産技術

    加藤 紘大さんのプロフィール写真
  • 橋本 涼

    パナソニック オートモーティブシステムズ株式会社 車載システムズ事業部 生産技術

    橋本 涼さんのプロフィール写真
  • 伊藤 直樹

    パナソニック オートモーティブシステムズ株式会社 車載システムズ事業部 製造

    伊藤 直樹さんのプロフィール写真

目次

  1. パナソニック オートモーティブシステムズ株式会社 敦賀拠点(福井県敦賀市)とは
  2. レーザーはんだの導入へ 敦賀工場が挑んだ初の工法
  3. 「設備との会話」を大切に より高度なモノづくりを目指す
  4. 想定パターンの積み上げと最適案の選択は自分との戦い
  5. 「ともに交通事故ゼロ社会を」お客さまの声がチームの誇り
  6. 改善はコミュニケーションから 「不良の芽」はすぐに摘み取る

パナソニック オートモーティブシステムズ株式会社 敦賀拠点(福井県敦賀市)とは

安全安心なモビリティの進化に向けて――。パナソニック オートモーティブシステムズ株式会社の敦賀工場は、ステアリングやインパネのスイッチなどの機構パーツと、ECUやバック&コーナーセンサーなどの安全支援装備を開発・生産しています。材料から手掛けることのできる源泉工程を持ち、高度なモノづくりまで一気通貫の強みを発揮しています。ソナーデバイスの開発・製造は2017年に敦賀へ拠点を移し、高まる需要に応えながら、着実に販売台数を伸ばしています。

レーザーはんだの導入へ 敦賀工場が挑んだ初の工法

車載ソナーの事業、モノづくりの変遷を教えてください。

デバイスを製造する工場の様子

橋本さんのプロフィール画像
橋本

当社が接近ブザー用ソナーの生産を始めたのは1984年です。ソナーデバイスは障害物の検知・警報の「安心用途」から、近年は自動緊急ブレーキ制御を行う「安全用途」へと進化し、以前はオプション設定とされていた装備が法規制化により標準仕様へと切り替わってきました。安心用途では車両の後方に2個だけだったソナーが、安全用途の現在は車両1台に8個~12個が搭載されています。ADAS(先進運転支援システム)搭載の需要が高まり市場規模が拡大する中、自動駐車や検知性能などの技術進化で、ソナーの性能もさらに高機能化(デジタル化)が進んでいます。

八原さんのプロフィール画像
八原

まさにソナーの需要が拡大する中、私たちは生産台数のアップに取り組んできたわけですが、同時に従来設備の限界も感じていました。自動化による加工費の改善はできても省人化にかかる設備投資が大きくなり、品質を確保するための官能検査や人依存作業も欠かせない。いずれも下げ止まり、手詰まりの状態になりつつありました。ソナーが新モデル(高機能)となるごとに部品価格は上昇、限界利益率も悪化する――。抜本的な工程革新に向け、従来は6台の設備で行ってきたスリーブはんだに代わる、新工法を模索しました。それが非接触で加熱とはんだ溶融ができる、レーザーはんだ方式です。

レーザーはんだ方式を用いた溶接の様子

加藤さんのプロフィール画像
加藤

従来は一つの端子の溶接に4秒かかっていました。目標としたのはその半分。そのためには、いかにはんだを早く溶かすかがポイントで、一番優位と見たレーザー方式をターゲットにしました。レーザー方式は非接触なので、従来であれば時間もコストもかかっていた点検作業や劣化する部品の定期交換など、メンテナンス費用も大幅に削減ができます。

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八原

ただ、レーザーはんだの導入は社内に前例がなく「こうすればうまくいく」というノウハウがありません。最も苦労したのが、はんだの安定性です。当初は、レーザー照射の前に基板の上に施す「予備はんだ」は従来工法が応用できると考えたのですが、出来栄えが安定せず、さまざまな条件を検証し直しながら試作を重ねました。「そもそも、予備はんだは必要なのか」といった意見が発端になり、特殊な突起を配置して最適化を図りました。

設備設計の面でポイントとなったのは?

加藤さんのプロフィール画像
加藤

面積生産性をいかに上げるか、そのためにはコンパクトな設備が求められます。その中で製品の搬送方向や加工方法を1工程ずつ見直しを行い、結果として21mあったラインを9.6mまで圧縮しました。また、設備費も厳しく条件設定をしました。ソナーデバイスの設備は完全オリジナルのため、金属部品1点の厚み、加工方法といったところからいかに安価な設備に仕上げられるかと考える、ここが設備設計の役割です。条件の中で全ての品質をクリアし、1円でもコストを下げていく――。機器のセレクトでは、ある程度のリスクも計算したうえで、これで十分に使えるといった判断も必要です。

従来のラインから半分以下に小型化。既存ライン全長21m、新規ライン全長9.6m。搬送ライン上で検査。カバーの溶着機構の影響で、従来は搬送と加工工程が分離していた。新規ラインではフローティング機構を新規開発し、検査工程までを搬送ライン上で行うことができる。

伊藤さんのプロフィール画像
伊藤

私は製造を担当しており生産技術のメンバーにさまざまな要望を出して一緒に新ラインの導入に向き合いました。これまでの設備で課題だった部分を挙げ、逆に使いやすく作業性のいい部分は、新ラインにも取り入れていこうと。オペレーターはベテランが多く従事しており、それだけ経験値も豊富です。「ここが作業しにくい。メンテナンスに時間がかかる」といった気づきがあります。また、製造は24時間稼働をする、その中で情報を展開して全員に周知徹底するのも課題です。新しい設備を導入するとなれば、当然ながら課題も多い。全員がベクトルを合わせて作業するために、現場の苦労が生産技術に届くように、アイデアをこちらから出せるようにと心掛けました。

加藤さんのプロフィール画像
加藤

設備の使いこなしも非常に大事。メンテナンスや故障したときの対応など、作業者とともに稼働後のリスクを軽減していく必要があります。また、作業の安全だけは妥協できません。このカバーがなければメンテナンスはしやすい......、仮にそういうパーツがあったとしても「必要なものは必要」と、そこは生産技術として譲れない部分です。

今回の成果と、今後への意気込みを教えてください。

八原さんのプロフィール画像
八原

もう一つ大きな成果が部品の内製化、原価の大幅削減です。調達のメンバーや、敦賀の別組織のメンバーと連携し、ソナーで大きな比重を占めている部品を内製化しました。敦賀拠点の強みでもある源泉工程で蓄えてきた知見を生かし、原材料投入から検査・包装まで自動成形ラインを立ち上げました。社内連携は今後も高めていきたいと思います。

2020年度と2021年度の原価構成率を比較した図。2021年度は限界利益率が増加、利益率が5%UPしている。

橋本さんのプロフィール画像
橋本

メンバーが衆知を集めた結果が、設備をコントロールして最大限に生かした生産力につながっていると感じています。一人一人の得意分野は違いますが、このチームは何よりもコミュニケーションを大切にして、ベクトルを合わせてきました。これからもビジョンを皆で共有し、チャレンジとアクションを積み重ねます。

加藤さんのプロフィール画像
加藤

まずは、想定どおりに従来比で2倍の面積生産性を確保してホッとしていますが、設備は設計しただけではだめで、継続して製品のサンプル検査・分析を繰り返していくことが重要です。その意味で、1年2年と維持していき、製造と一緒につくっていくのが設備です。私自身、現在は新規製造ラインの設計に携わっていますが、ソナーデバイスのラインの現在にも注意しながら、現場の作業者の意見を取り入れた設計思想を生かしたいです。

伊藤さんのプロフィール画像
伊藤

毎朝、9時から生産技術と製造はミーティングをして、前日の生産実績を共有しています。新設備の立ち上げ時は特に、早急に安定した稼働に向け日々発生するトラブルや課題を置き去りにせず、生産技術のメンバーに遠慮なく要望を出しますし「いま、生産ラインは正常か」を問い続けています。1日1日の学び、そこに改善を加えながら、昨日よりも10台でもいや100台でも生産量をアップするんだという意気込みでチャレンジしていきます。

工場で作業する社員

「設備との会話」を大切に より高度なモノづくりを目指す

八原 徳和 [生産技術]

八原さんの顔写真

安心・安全の装備であるソナーの需要が高まりをみせ、そこに対応する生産能力アップはやりがいのあるプロジェクトでした。私のモットーは「次工程はお客さま」。生産技術の仕事とは、どれだけ事前に起こりうる不良をつぶせるか、製造に際しての管理ポイントを落とし込めるかだと考えています。実際にモノづくりをするメンバーとの連携がよい工程をつくる、製造にとって使いやすく、作業が楽になるようにと想定を重ねてきました。

2019年まで私は製造に携わってきましたが、入社当初に先輩から教わったメンテナンスの心構えを今も忘れません。「設備としっかり会話をすること」と、そこには日々の清掃整備の大切さ、モノづくりへの姿勢が語られています。いま、工程全体を見るようになり、この意味がよく理解できます。設計したら終わりではなく、生産に関わるメンバーとともに、設備との会話を続けなければと。さまざまな製造設備を見て学び、それを自分が手掛けるラインに生かしながら、さらなる工程能力アップに努めていきます。

想定パターンの積み上げと最適案の選択は自分との戦い

加藤 紘大 [生産技術]

加藤さんの顔写真

一つの設備ができあがる過程には、考えをまとめては描き、たくさんの想定パターンを積み上げていく段階があります。最初はポンチ絵で手書きし、図面にしてみる。まず、ここにかなりの時間をさき、そこからタイムチャートをつくって生産設備として成立するかをシミュレーションし、選択すべき答えを導いていきます。PCに向かっているだけでなく、実際に製造現場に立つことも大事です。

この仕事の魅力は、自分の頭の中で始まった絵が形となって工場に据えられる瞬間、また、量産で稼働していくところ。多くの方の意見を取り入れながら、最後は思い切って決断をする場面がやってきます。一つのパターンを選択するとき、検証を繰り返す中で捨て去った数えきれないパターンがあるからこそ、最後の決断に自信が持てます。誰に何を言われてもこだわり抜けるだけの裏付け、ブレない信念をこれからも大切にしていきたいと思います。

「ともに交通事故ゼロ社会を」お客さまの声がチームの誇り

橋本 涼 [生産技術]

橋本さんの顔写真

多額の設備投資を伴うラインの刷新、一番に考えたのはお客さまの求める品質と納期、高品質・高効率なモノづくりへの進化(コスト競争力強化)です。従来製品を振り返り、ソナーの設計担当者と連携をしながら加工しやすい部分は残し、部品点数を増やさないように新しい製造工程を確立しました。これまでの知見を新しい機器に織り込み、期待を上回る設備をつくろうとチームで取り組んできました。お客さまが新しいラインの工場見学に来られることがあり「工程を見て、パートナーとして安心した」「ともに交通事故ゼロ社会を」と声を掛けていただき、いい刺激を受けています。

私たち生産技術は10代~60代と幅広い年齢層で、若手社員が多く在籍しています。若手社員には、どんどんチャレンジできる環境をつくりたいと思っています。私自身、これまでを振り返ってみると失敗から学んで新しいアイデアや次のアクションにつなげて、自分の強みをつくってきました。チームには経験豊富なベテランもいて、敦賀工場では部門を超えての交流もできています。若手の多いフレッシュな職場、このチームを育てながら新たなモノづくり設備を開発していきます。

改善はコミュニケーションから 「不良の芽」はすぐに摘み取る

伊藤 直樹 [製造]

伊藤さんの顔写真

オペレーターから意見を吸い上げ、生産技術のメンバーとともに稼働を始めた設備。これをどう安定させ、より効率よく生産するかが私たち製造の役割です。日々の生産の中で重要となるのが、小さな変化に気付くことのできるオペレーターの感性。「不良にあたらない規格内だが......、いつもと違う気がする」と部材や設備の変化を感じたら、すぐに状況を共有して原因を追究する。この鋭い感性が不良の芽を摘み取り、安定した生産とロス削減につながっていきます。

私がいつも目標にしているのは、現状に満足せず、変える気持ちを持ち続けること。崖から最初に海へ飛び込んだペンギンのエピソードが好きで、その姿をモットーにしてきました。勇気をもって違う世界に飛び込む、その先に違う世界が広がっている――。例えば、新しい手法に挑んで生産目標を達成できない日もありますが、モチベーションが衰えることはありません。これからも声を上げていきますし、同じ思いを抱いてくれる「チャレンジャー」も増やしながら、全力でこの設備の最大能力を引き出していきます。

受賞テーマ 設計・製造・調達連携によるソナーデバイス原価構築
担当 パナソニック オートモーティブシステムズ株式会社 車載システムズ事業部 安心・安全システムズビジネスユニット

*所属・内容等は取材当時(2023年2月)のものです。

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