パナソニックの人 田端 大助

仕事場と田端 大助さん

微細ミストの可能性をクロスバリューで
広げて、世界を驚かせたい。

研究開発 田端 大助

「環境に関わることをやってみたいです」。配属先の希望を人事からたずねられた田端大助はそう答えた。大学時代、燃料電池の研究に熱中しスペックを上げることにやりがいを感じていた彼にとって、燃料電池ありきの「環境に関わること」であり、何気なく返した答えが転機になるとは、その時は思う術もなかった。1年間の研修を経て彼が配属されたのは燃料電池とは無縁、トウモロコシを原料とした植物由来樹脂を家電に応用する部署だった。

笑顔の田端 大助さん

戸惑いながらの技術者人生のスタートだったが、携帯電話の充電台へ植物由来樹脂を展開する企画が認められ彼の仕事が初めて形になった。「葛藤はありましたが、嬉しかった」と振り返る。2年後に担当したのは社内工場の省エネ化。入社後に身につけた熱と流体の知識を武器に診断から改善提案まで計測とシミュレーションを繰り返し、省エネ活動を推進。「大学で専攻した電気化学とは異なる仕事でしたが、ロジカルで原理原則に基づいた考え方は活かせることに気づきました」。
さらに5年を経て、ディーゼルエンジンの排ガス浄化触媒の開発を基礎から量産まで担当。そして2年前から取り組んでいるのが、2020年に向け暑さ対策用の微細ミストを生成するノズルの開発だ。「気づけば入社14年目」。彼の顔にもう迷いはない。

転々と担当を変わってきたが、確かにすべて「環境に関わること」である。間違いではない。ジレンマもあったが、逆に次々と新しいことに挑戦させてもらえて技術者としての視野は広がった。さまざまな分野の人と関わって思考の幅も広がった。大学の専攻をふまえて燃料電池の最先端を行くパナソニックを選んだ彼だが、「電気化学にこだわっていたら、柔軟な発想を持てなかったかもしれない」と語る。

計測機器がある風景

特にミスト用ノズルではデザイナーとクリエイティブなコラボが実現し、本来の用途とかけ離れた発想が彼の固定概念を覆した。部屋をミストで満たして光や映像を投影し、音響効果も加えて幻想的な空間を演出するもので、2018年4月、世界最大規模の家具見本市「ミラノサローネ」にインスタレーションとして出展。評判を呼び、見事「Best Technology賞」を受賞した。社内外、国内外のスタッフと試行錯誤を重ねた日々が生んだ成果は「いちばん印象に残るプロジェクト」と言い切る。しかも反響がユニークだった。「霧が多かった昔のミラノを思いだしたよ。グラッチェ」。地元の年配の方の感想だ。温暖化によって気候が変わり、霧が少なくなったミラノ。「技術が人の琴線に触れた瞬間だった」。

計測機器を操作する田端 大助さん

そもそも微細ミストを生成するノズルは屋外エアコン用。開発スペック段階で無理だ!と思ったが、「きっとおもしろいものができる」そう信じメンバー一丸やりきった。猛暑の街の実証実験では、体験した方から「すごく涼しくて気持ちいい」「早く商品化して」と言われた。ミラノでの反響といい、お客さまの生の声は技術者にとってかけがえのない励みだ。スペックの追求だけにあけくれていたら、味わえなかった喜びかもしれない。

ゼロからアイディアを具現化していく。いろんな職種の方と関わり合って、いろいろ助け合って、社外や国外の方々とも共創して...。始めに人事に伝えた答えが違っていたら、どうなっていたのだろう。パナソニックでなかったら、できたのだろうか。柔軟な環境で仕事ができてきたことに田端は感謝しつつ、それでも満足はしていない。「次はどんなクロスバリューで、世界を驚かそうか」。メガネの奥の瞳がキラッと光った。

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